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医師の需給バランス 2022-医師偏在是正のためにどのような手立てが講じられているか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
5――医師偏在の是正対策
分科会では、第4次中間取りまとめで、医師偏在指標の算出を通じて、医師少数地域・医師多数地域を設定した。そのうえで、臨時定員に係る地域枠を、一般枠とは別枠で選抜することとした。地域枠の要件は、原則、医師として勤務開始直後より当該都道府県で9年以上従事することと、キャリア形成プログラム8に参加することとした。
8 地域における医師不足や地域偏在の解消と、専門医の取得といった医師能力の開発・向上の両立を図るため、地域勤務の義務年限中におけるキャリア形成について診療科や就業先となる医療機関等をタイプ別に、都道府県が様々なコースを示したもの。
臨床研修医の対策として、都道府県別の募集定員上限が設定されている。面積や人口当たりの医師数などを踏まえつつ、医師が少ない都道府県の定員を確保し、研修希望者よりも多く確保している全国の募集定員を絞ることで、地域偏在対策を講じた。具体的には、臨床研修を必修化した2004年度以降で、募集定員倍率(臨床研修希望者数に対する、臨床研修募集定員数の倍率)が1.3倍を超える時期もあった。2010年代に、募集定員数を減らしていくことで、この倍率は徐々に下がり、2022年度に1.09倍に低下している。2025年度には、約1.05倍にまで下げる方針が示されている。
2018年に日本専門医機構を通じた、新たな専門医制度がスタートした。それまで各学会で独自に運用されていた専門医認定プログラムが、第三者機関の日本専門医機構で運用されることとなり、専門医資格の認定ルールの統一が図られている。
この新専門医制度では、専門医の地域・診療科の偏在について配慮することとされている。具体的には、都道府県別に必要医師数に達している診療科に対して、専攻医の採用数上限(シーリング)を設定する対策がとられている9。
9 シーリングは、都市部ほど設定されやすい傾向がある。たとえば、2022年シーリングで、東京都は、内科、小児科、皮膚科、精神科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、形成外科、リハビリテーション科で設定されている。これは、示されているなかでは、泌尿器科以外の診療科すべてに相当する。一方、東北地方の諸県には全く設定されていない。なお、外科、産婦人科、病理科、臨床検査科、総合診療科はシーリングの対象から、除外されている。
都道府県では、医療法・医師法に基づいて、医師確保計画を策定することとされている。厚生労働省が示している策定ガイドラインによると、都道府県は、まず医師偏在指標により医師の偏在の状況を把握する。そのうえで、目標医師数や確保方針を盛り込んだ医師確保計画を策定する。計画実施にあたっては、医師少数都道府県での地域医療介護総合確保基金の活用や、医師少数区域等の環境適応を促すキャリア形成プログラムを設けることなどが示されている。
また、取りまとめによると、医師少数区域等での一定期間の勤務経験を厚生労働大臣が認定・評価する制度を創設し、認定を受けた医師について、地域医療支援病院の管理者要件や医師少数区域等で診療を実施する際の支援等のインセンティブが設定されている。
今後は、各都道府県が2024年度に向けて進めている医療計画改定のなかで医師の偏在是正に取り組むことになるものと見通される。
6――おわりに (私見)
今後も、引き続き、その動向と、医師偏在是正に向けた取り組みに注目していくこととしたい。
(2022年05月17日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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