2022年05月16日

ロシアの物価状況(22年4月)-前年比で15年のピークを上回る

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比で17.8%、前月比で1.6%

5月13日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(22年4月)】
前年同月比は17.83%、市場予想1(17.99%)を下回り、前月(16.69%)から上昇(図表1)
前月比は1.56%、予想(1.70%)を下回り、前月(7.61%)から減速

【コア指数1(22年4月)】
前年同月比は20.37%、予想(20.50%)を下回り、前月(18.69%)から上昇(図表2)
前月比は2.01%、予想(2.10%)を下回り、前月(9.05%)から減速

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:非食料品の物価圧力は低下したが食料品やサービスのインフレ圧力は強い

4月のロシアのインフレ率は前年比で17.83%となり、3月の16.69%からさらに上昇した。前年比伸び率は15年のピーク(15年3月の16.92%)を超えた。

2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けた、国内の物価上昇圧力が継続している。大分類別に見ると、食料品が前年比で3月17.99%→4月20.48%、財(非食料品)が3月20.34%→4月20.19%、サービスが3月9.94%→4月10.87%となった。財(非食料品)への価格上昇圧力が低下する一方で、食料品の伸び率が大幅に上昇した。また、サービス価格も前年比で2桁の伸び率に達した。

コア指数は前年比で3月18.69%→4月20.37%となり、幅広い財・サービスに対して物価上昇圧力が見られる。

3月のインフレ率を前月比で見ると1.56%だった。2月(7.61%)に記録した大幅な上昇率からは大きく減速したが、ウクライナ侵攻前の伸び率(多くの月でゼロ%台)と比較するとまだ高い伸び率と言える(図表3)。

一方、別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)で見ると、週次ペースでの上昇は3月4日の前週比2.2%をピークに減速傾向にあり、5月6日には前週比0.12%となった(図表4)。これは、ウクライナ侵攻前の伸び率と同程度である。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
次に、品目別の上昇率を見ると3(図表5)、前年比ではグラニュー糖(67.35%)、海外旅行サービス(58.35%)、穀物・豆(35.47%)、成果物(33.00%)の上昇率が高い。テレビ(19.95%)、電化製品(28.48%)は前年比の伸び率が依然として高いが、前月比でみた上昇率は大幅に下落(テレビ▲14.67%、電化製品▲7.01%)している。一方、前月比の上昇が目立ったのは洗剤(8.21%)や穀物・豆(6.15%)である。
(図表5)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表6・7)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は青果物(1.5%ポイント)、肉(0.7%ポイント)、乳製品(0.7%ポイント)、海外旅行サービス(0.6%ポイント)だった。同様に前月比上昇率への寄与が大きい品目は乳製品(0.1%ポイント)、肉(0.1%ポイント)、アルコール飲料(0.1%ポイント)、旅客サービス(0.1%ポイント)となった。

なお、3月時点では、乗用車の前年比上昇率寄与(2.6%ポイント)も大きかった(図表8)。現時点で統計局ウェブサイトでは乗用車の上昇率が公表されていないが、今後の価格動向が注目される。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。ウェブサイトで中分類が公表されていないものは、より細かい品目(小分類)のデータを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年05月16日「経済・金融フラッシュ」)

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