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- 利上げサイクル再考-政策金利ピークとターミナルレート
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- 世界的なインフレ圧力の上昇を受け、金融引き締めの動きが広がっている。金融引き締めを開始した国では、今後、利上げサイクルの到達点や名目の中立金利(いわゆる「ターミナルレート」)の水準に関心が集まっていくものと思われる。
- 本稿では欧米主要国であるFRB、ECB、イングランド銀行の政策金利のターミナルレートについて、過去の経済・市場動向や自然利子率の観点から考察した。
- 得られた主な結果は以下の通りである。
・過去の推移を見ると、欧米では、金融危機後の政策金利のピークは危機前のピークを大幅に下回っている。
・米国のコロナ禍前の政策金利のピークは2.25-2.50%(18年12月)だった。市場参加者の中立金利の見通しは3月時点で概ね2%台半ばであり、今回の利上げサイクルではこの中立金利をやや上回る利上げが想定されている。
・ユーロ圏のコロナ禍前の政策金利のピークは1.5%(11年7月)だった。市場参加者の中立金利の見通しは4月時点で概ね1%台半ばであり、この水準に向かって数年をかけて段階的に引き上げる長い利上げサイクルが想定されている。
・英国のコロナ禍前の政策金利のピークは0.75%(18年8月)だった。市場参加者の中立金利の見通しは5月時点で概ね1%台半ばであり、今回の利上げサイクルではこの中立金利をやや上回る利上げが想定さている。
・自然利子率とは、経済・物価に対して中立的な(緩和的でも引き締め的でもない)実質金利の水準のことである。
・ニューヨーク連銀が公表するHLWの方法で推計された自然利子率によれば、名目の中立金利の目安は米国とユーロ圏で2.5%程度、英国で3.5%程度である。ユーロ圏や英国では市場参加者の中立金利の見通しよりも高い。
・自然利子率は、近年、低下傾向を示しており、その要因として高齢化の進展による貯蓄の押し上げや格差の拡大、生産性上昇率の鈍化などが指摘できる。市場参加者は中立金利をHLWの推計値より低く想定しており、こうした自然利子率の低下要因を重視している可能性がある。
・足もとのインフレはコストプッシュとディマンドプルが併存していると見られる。ユーロ圏はコストプッシュ型主導だが、米国・英国は賃金上昇率が高く、ディマンドプルの要素も大きい。
・しかしながら、どの程度、政策金利を引き締めればディマンドプルのインフレに効果的なのか、という問いに対するヒントは世界金融危機以降の経験からは得られていない。
・米英の中央銀行は、今回の利上げサイクルでは、長らく続いた低金利政策から脱却し、政策金利を中立金利に引き上げる「正常化」の役割だけでなく、インフレファイターとしての役割も問われている。「どれだけ積極利上げをするのか」という点は久しぶりの注目点と言える。
■目次
1――欧米主要国で金融引き締めに着手
2――コロナ禍前の利上げ到達点、市場参加者の見通し
1|米国(18年12月)
2|ユーロ圏(11年7月)
3|英国(18年8月)
4|日本(参考)
3――自然利子率
1|自然利子率とは
2|自然利子率の変動要因
3|利上げサイクルの到達点(ピーク)とターミナルレート
(2022年05月09日「基礎研レポート」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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