2022年05月11日

確定拠出年金では何に投資したら良いのか?-外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でパフォーマンスを比較してみた

基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.302]

金融研究部 研究員 熊 紫云

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1―はじめに

確定拠出年金(企業型および個人型のiDeCo)は、企業あるいは自分が拠出した掛金を、預金、保険、投資信託などから、どの運用商品に投資するか、それぞれの運用商品にどの程度配分するかを自分自身で決めて運用する私的年金制度である。60歳まで資金の引き出しが原則不可であるなど、老後のための資産形成を目的とする仕組みである。

このため、確定拠出年金の資産配分は、老後のための資産形成を目的としたポートフォリオの資産配分の典型例と言える。そこで、確定拠出年金における資産配分の現状を紹介し、過去のデータに基づいて確定拠出年金での適切なポートフォリオの資産配分を考えてみたい。

2―確定拠出年金の資産配分の現状

元本確保型(預貯金・保険)と短資が確定拠出年金の全運用資産額に対して半分近くを占めている[図表1]。また、確定拠出年金統計資料(2021年3月末)によると、企業型確定拠出年金においては元本確保型だけで運用している者の割合が32.1%もいることから、リスクを一切取らずに老後のための資産形成をする人がかなり多いといえよう。
[図表1]確定拠出年金の運用商品資産額割合
確定拠出年金の運用商品の割合を年代別に見てみると、現状どの年代でも預貯金の割合が一番大きい[図表2]。リスクがない預貯金、保険、短資を合わせた運用商品の割合は30代で37.7%、40代で40.1%、50代で47.7%、60歳以上で58.4%と、年齢が上がるにつれてその割合は高くなる。
[図表2]年代別確定拠出年金の運用商品
一方で、リスクをとる投資信託の中でバランス型の割合を年代別に見てみると、19 歳以下で25.0%、20 代で21.5%、30代で19.0%、40代で19.5%、50代で18.2%とほぼ2割を占め、60歳以上が13.3%とやや低くなっている。

資産クラスの中で一番リスクが高い国内株式と外国株式を合わせた割合を見てみると、20代で25.9%、30代で32.3%、40代で29.4%、50代で24.1%、60歳以上で20.4%と30代をピークに年齢が上がるにつれて割合は低くなっていく。

年齢が上がるにつれてリスクがない商品の割合が増え、リスクが高い商品の割合が減っている。一般的に、年齢を重ねるにつれポートフォリオ全体のリスクを抑えていくべきなので合理的に思えるが、実は現状の年齢別の平均的な資産配分が適切とは限らない。

3―金融危機の直前に確定拠出年金で投資を始めたらいくらになるか?

実際に投資した場合のパフォーマンスを過去のデータを用いて試算し、代表的な運用商品の特徴を確認してみたい。

具体的に確定拠出年金専用のバランス型(資産配分固定型)の代表例として、株式インデックス25%・債券インデックス72%・短資3%を組入れる「低リスク型」、株式インデックス50%・債券インデックス47%・短資3%を組入れる「中リスク型」と株式インデックス75%・債券インデックス22%・短資3%を組入れる「高リスク型」を想定する。加えて、国内株式インデックス50%・外国株式インデックス50%を組入れる「内外株式型」と「国内債券型」、「外国債券型」、「国内株式型」、「外国株式型」、「米国株式型」それぞれ100%のケースも追加し、合計9種の資産配分で、日本での過去の4つの金融危機(日本バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナ・ショック)直前という最悪の時期から毎月2万円を積立投資したら2021年12月末でいくらになったのか見てみたい[図表3]。例えば、一番投資期間が長い日本バブル崩壊直前から積立投資を始めた場合、米国株式型の最終積立金額は6,046万円、累計積立元本768万円の7~8倍になっている。外国株式型も4,761万円と元本の約6倍になっている。内外株式型は2,733万円、高リスク型は1,998万円、外国債券型は1,774万円、中リスク型は1,694万円となっている。日本バブル崩壊直前からだと、日本株式の回復が緩いため、国内株式型は1,597万円と2倍程度の最終積立金額にとどまっている。そして低リスク型が1,376万円、国内債券型が1,080万円となり、資産の増加が比較的小さかった。

総じて株式型が上位になり、債券型は下位になる。資産配分固定型のバランス運用は、株式インデックスと債券インデックスの両方に投資するので、当然中間的な結果となり、株式インデックスの配分が高い方が、上位となっている。高リスク型は国内株式型と同程度かそれ以上のパフォーマンスとなり、低リスク型は国内債券型よりは良いが、国内株式型には見劣りする。中リスク型は高リスク型と低リスク型の間となっている。
[図表3]最終積立金額(2021年末時点)

4―若い人ほど、もっとリスクの高い資産に多く配分すべきである

日本バブル崩壊直前から、各種資産配分における月次リターンの最大・最小値と月次リターンの極端な値を取り除いて75%が収まる範囲をグラフにしてみた[図表4]。資産配分固定型のバランス運用を見ると、短期的な価格変動が小さいわりにリターンが高い利点がある。一方、株式型に投資すると、月次最大下落率が相対的に大きいが、中長期的な平均リターンも高いので投資期間が長くなり、資産残高に占める利益の割合が大きくなると、積立元本を下回る可能性はほとんどなくなる。
[図表4]リターンの最大・最小値と75%範囲内の最大・最小値(2021年末時点)
確定拠出年金の場合は60歳まで現金化できず、投資を継続することとなるが、60歳までの投資期間が短い人と異なり、若い人は短期的リターンのブレにこだわる必要性は小さい。特に、一時的に資産時価残高が急落して慌てて元本確保型などに入れ替え、損失を確定すべきでないことに注意してもらいたい。一時的に元本が大きく毀損しても、長期的には高い収益率を獲得できるからである。元本確保型などに入れ替えて損失を確定してしまうと、高い収益率を獲得する機会を失うことになる。

過去のデータからは、バランス型よりも、もっとリスクの高い資産クラスに多く配分することが得策である。なぜなら、分散投資は重要だが、分散投資には、時間分散と資産分散があり、さらに資産分散には、同一資産クラス内の銘柄を分散する銘柄分散と、投資する資産クラスを分散する資産分散がある。長期的な資産形成においても、銘柄分散は重要だが、株式インデックスであれば、十分銘柄分散されている。長期積立投資により、資金投入時期が分散される時間分散と長期保有のメリットを十分享受できる若い人にとっては、資産分散により価格変動リスクを抑えるメリットは小さく、長期的により高いリターンを得るメリットの方が大きい。一方、年齢が高くなるにつれ、残る投資期間が短くなるので、短期的リスクを抑えるため、少しずつ元本保証型やバランス型等に移行した方が良い。

繰り返しになるが、確定拠出年金制度は積立時期の分散と長期保有によって時間を味方にできる年金制度である。確定拠出年金の資産配分を決定する際には、外国株式インデックスなど中長期的に高いリターンが期待できる資産クラスにより多く配分した方が老後のための資産をより効率良く形成できる。今一度ご自身の確定拠出年金の拠出金割合や運用内容を見直してみてはどうだろうか。
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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

(2022年05月11日「基礎研マンスリー」)

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