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図表1は企業の退職給付制度の実施状況を示す『就業状況総合調査』の結果である。従業員100~299人の中小企業では、2008年に比べ2013年では、退職一時金制度のみある企業は約18%増加しているのに対して、年金制度のみある企業は約5%減少、退職金と年金制度の両制度がある企業は約16%減少している。また退職給付制度自体がない企業は約3%増加している。
そこで、中小企業を対象に退職給付制度、特に企業年金を設ける要因を明らかにするため、独自のサーベイ調査を実施した。調査は従業員数100~299人の中小企業を対象に、2018年と2019年に実施した。調査結果が日本を代表する数値となるよう対象企業を選定し、全国の8,883社を対象に調査を行い、このうち、2,528社より回答を得た(回収率約28%)。
図表2は調査結果の一部であり、企業の設立年別に退職一時金、DB、DC制度の有無をまとめたものである。会社設立年は、1. 「バブル期以前」(1986年以前)、2. バブル期とそれに続くバブル崩壊期でDC・DB法導入前までの「バブル期以降」(1987~2000年)、3,「DC・DB法導入以降」(2003年以降)の3つに区分した。2と3の間に抜けている時期があるが、これは、法律導入の途中の時期で影響があいまいであるため、分析対象外とした。
次に、(3)DCがある企業の割合は、バブル期以前設立では約22%、DC法導入以降では約21%と大きな差異はない。一方で、バブル期以降では約12%とDCのある割合は低い。バブル期以前に設立された会社は、これまであった退職給付制度からDCへ移行したケースがあるものと思われる。これに対して、バブル期以降に設立された会社は、もともと退職給付制度がない企業が多いか、厚生年金基金等が廃止された際にDCへ移行が少なかったものと考えられる。
もちろん、退職給付制度の設計には、企業業績が関連しているはずである。図表の(4)と(5)は最近の売上高や利益の動向について、「1(成長していない)~6(成長している)」の6段階のスケールで聞いた回答の平均値である。バブル期以前とバブル期以降設立の企業で、最近の売上高や利益の動向に差異はなく、バブル期以降で企業年金が少ないのは、最近の業績では説明するのは難しい。一方、DC・DB法導入以降に設立された会社は、売上高や利益の動向が他の時期に設立された会社より良く、成長産業に属する企業が多いことが考えられる。
今回の分析では、バブル期とそれに続くバブル崩壊期以降の90年代に設立された会社で、退職給付制度、特にDCの導入が進んでいない可能性がある。またDB法導入以降に設立された企業でもDB設立は限定的であり、企業は既存のDB制度にメリットを感じていない可能性がある。ただし、今回の分析は単純な方法によるものであり、結論をだすためには精査が必要であろう。
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客員研究員 東北学院大学 経営学部
北村 智紀
研究・専門分野
(2021年06月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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