2021年01月06日

DC拠出限度額の見直しで大筋合意

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任   中嶋 邦夫

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2020年11月に開かれた社会保障審議会の企業年金・個人年金部会で、確定拠出年金(DC)の拠出限度額を見直す案が大筋で合意された。同年5月にDCの企業型と個人型(iDeCo)の併用の要件を緩和するなどの法改正が成立し、直後の6月に開かれた同部会では、法改正後の課題のうち法改正の施行(2022年10月)と併せて対応すべき点を、税制改正のプロセスも考慮して優先的に議論する方針が確認されていた。7月には厚生労働省が見直し案を示し、8月には関係団体へのヒアリングが2度実施され、9月以降は具体化に向けて議論が進められた。

DCの拠出限度額は、現在、確定給付型の企業年金(確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、私学共済など。以下、DB等)に加入しているか否かと、企業型DCの規約で個人型への加入を認めているか否かによって細かく分かれている(図表1)。今年5月末に成立した法改正では、2022年10月から個人型への加入に際して企業型DCの規約での規定が不要になり、個人型の拠出限度額は企業型の拠出額を勘案して決まる形になった。
図表1:確定拠出年金の拠出限度額(月額)
7月の見直し案では、さらに政令を改正し、企業型DCの拠出限度額(月額)を「5.5万円-DB等の仮想掛金額」に統一する方針が示された。DB等に加入していない場合は仮想掛金額がゼロのため現行や法改正後の制度と同じだが、仮想掛金額が2.75万円未満の場合は企業型DCの拠出限度額が法改正後の2.75万円よりも増える(図表2左)。しかし、仮想掛金額が2.75万円超の企業では企業型DCの掛金を現在より引き下げざるを得ないケースが出てくるため、8月のヒアリングでは何らかの措置を求める意見が相次いだ。

そこで厚生労働省は、見直しの施行日以前に確定給付型企業年金と企業型確定拠出年金を併設する企業が、既存の企業型DC規約の掛金又はDB規約の給付設計の見直しを行わない限りは、従前どおりの掛金拠出が可能とする方針を示した。経過措置の適用終了に該当する設計見直しの具体的な内容は、企業型DCでは事業主掛金の額の算定方法(DC法第3条第3項第7号)の見直し、DBでは給付設計(DB法第4条第5号の事項)の変更であってDB法第58条の規定に基づく財政再計算を伴う見直し、とする方向で詳細を検討する方針を示した。

企業型DCの見直しに加え、DB等と併用する場合の個人型DC(iDeCo)の拠出限度額が、月1.2万円から2.0万円へ引き上げられる。これにより、何らかの企業年金(DB等か企業型DC)がある場合の個人型DCの拠出限度額が2.0万円に一本化される。この見直しにより、DB等の仮想掛金額が4.3万円超の場合には、個人型DCの掛金を現在より引き下げざるを得ないケースが出てくる(図表2右)。個人型は自助努力であり、労働条件の一つである企業型とは性格が異なることを考慮して、個人型には経過措置が設けられないこととなった。
図表2:見直し案での確定拠出年金の拠出限度額イメージ
DCの拠出可能額を左右するDB等の仮想掛金額は、各DBの基礎率から標準的な給付水準を算出し、そこから各DBの予定利率で計算される利子分を控除し、これを加入月数で割って計算することとなった。日本年金数理人会は、各DBの給付水準を重視して予定利率の影響を受けにくい計算方法を10月の同部会で提案していたが、最終的には「事業主がその時点で拠出したとみなされる」ことを重視して、厚生労働省が9月に提示した案の1つが採用された。

仮想掛金額は、同じ基礎率を用いて運営されている単位ごとに同一額が設定される。持分付与額が個人ごとに設定されているキャッシュ・バランス・プランでも、運営単位ごとに同一の仮想掛金額が適用される。仮想掛金額は基礎率が更新される財政再計算のたびに算定されるが、見直しの施行から最初の財政再計算までの期間は実際に拠出された標準掛金総額を加入者数で割った額での代用も認められる。加入者数500名未満の簡易基準のDBの場合は、標準掛金総額を加入者数で割った額が仮想掛金額となる。

見直しの施行時期は、2022年10月の法改正施行と同時となる可能性があるが、関係団体からはシステム開発が間に合わない懸念が表明されている。今後の動向を注視したい。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

(2021年01月06日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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