2022年03月07日

ブラジルGDP(2021年10-12月期)-コロナ禍前の水準を再び回復

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:コロナ禍前の水準を再び回復

3月4日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2021年10-12月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は1.6%、市場予想1(同1.1%)を上回り、前期(4.0%)から低下した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は0.5%、予想(同0.1%)を上回り、前期(▲0.1%)からプラスに転じた。

(図表1)ブラジルの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ブラジルの実質GDP成長率(産業別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:製造業の伸び悩みが続く

21年10-12月期の実質GDP伸び率は前期比0.5%(季節調整値、年率換算2.2%)となった。ブラジルは4-6月期(前期比▲0.3%)、7-9月期(同▲0.1%)と2四半期連続のマイナス成長となっていたが10-12月期はプラスに転じた。コロナ禍前(19年10-12月期)との対比では、21年1-3月期にコロナ禍前の水準まで回復(+0.4%)、その後、マイナス成長が続いたことで7-9月期はコロナ禍前の水準を下回っていた。10-12月期は再びコロナ禍前の水準を回復(+0.5%)、1-3月期の水準も超えた(図表4・5)。21年暦年の成長率は4.6%(20年は▲3.9%)だった。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が0.7%(前期:1.0%)、政府消費が0.8%(前期:1.1%)、投資0.5%(前期:▲0.6%)、輸出が▲2.4%(前期:▲9.8%)、輸入が0.5%(前期:▲5.1%)となった。輸出は前期比マイナスとなったが、他の主要項目は着実に回復している。コロナ禍前との対比では、GDPが0.5%、個人消費が▲1.3%、政府消費が▲0.7%、投資が16.9%、輸出が▲1.0%、輸入が0.1%という状況にある。
(図表3)業種別のGDP伸び率
(図表4)ブラジルの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ブラジルの実質GDPの動向(供給項目別)
産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3)、前期比は大分類では「第一次産業」が5.8%(前期:▲7.4%)、「第二次産業」が▲1.2%(前期:▲0.1%)、「第三次産業」が0.5%(前期:1.2%)となった。第一次産業は持ち直したが、第二次産業の低迷は続いており3四半期連続のマイナスとなっている。第一次産業は7-9月期までは天候不順などを理由に、コーヒーやトウモロコシなどの生産量が少なかった2ことが成長率を押し下げていたが、収穫の時期が終了し影響が剥落した。一方、第二次産業は供給制約などの影響が長期化していると見られる。第三次産業はコロナ禍による低迷から順調に回復している。
(図表6)ブラジルの名目および実質成長率 最後に、名目成長率では10-12月期は前年同期比12.2%(前期:17.3%)となった(図表6)、名目と実質成長率の差(デフレータに相当)は10.6%と引き続き高く、高インフレの影響が続いていることが分かる。
 
2 ブラジルのコーヒー収穫は生産量が多い年と少ない年を交互に繰り返す特徴がある。今年は収穫が少ない年となっている上天候不順に見舞われたため収穫量が減っていた。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年03月07日「経済・金融フラッシュ」)

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