2022年02月01日

ユーロ圏GDP(2021年10-12月期)-コロナ禍前水準は超えたが、伸びは鈍化

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:3四半期連続でプラス成長

1月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国GDP(2021年10-12月期、季節調整値)】
前期比は0.3%、市場予想1(0.4%)より下振れ、前期(2.3%)から減速した(図表1)
前年同期比は4.6%、市場予想(4.6%)と一致、前期(3.9%)から増加した(図表2)

(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:ドイツなど一部の国ではマイナス成長に

2021年10-12月期の成長率は前期比0.3%(年率換算1.2%)となり、3四半期連続でのプラス成長となり、コロナ禍前(19年10-12月期)の水準との比較では+0.03%と、コロナ禍前の水準を超えた。ただし、21年後半の新型コロナの感染再拡大で回復ペースは鈍化した。21年暦年の成長率は前年比5.2%(20年は▲6.4%)だった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると(図表3)、前期比ではドイツ▲0.7%(前期1.7%)、フランス0.7%(前期3.1%)、イタリア0.6%(前期2.6%)、スペイン2.0%(前期2.6%)となり、速報時点で公表されている国は前期から成長率が鈍化、もしくはマイナス成長となった。

コロナ禍前と比較すると(図表4)、大国4か国のうち、フランスはプラス圏に浮上した。他方、スペインの回復は依然として遅れている。
(図表3)ユーロ圏主要国の10-12月期GDP伸び率/(図表4)ユーロ圏主要国のGDP水準(コロナ禍前との比較)
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で見ていきたい。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.4%(前期5.6%)、政府消費0.3%(前期2.7%)、投資0.5%(前期0.1%)、輸出3.2%(前期1.7%)、輸入3.6%(前期0.8%)となった。個人消費の鈍化とあわせて全体の成長率も鈍化した形となっている(図表5、ここでは2019年の平均を100として記載)。産業別の付加価値を見ると、製造業が0.3%(前期▲0.5%)、建設業が▲0.6%(前期▲0.3%)、市場型サービス産業1.6%(前期5.0%)、非市場型サービス0.3%(前期1.4%)だった。
(図表5)フランスの実質GDP水準/(図表5)スペインの実質GDP水準
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費▲1.2%(前期1.0%)、政府消費▲0.4%(前期0.5%)、投資4.9%(前期1.2%)、輸出6.5%(前期7.1%)、輸入3.5%(前期2.2%)となった。スペインでは、個人消費の回復が特に遅いことが分かる(図表6)。産業別には、製造業が前期比1.6%(前期2.0%)、建設業が前期比1.6%(前期2.0%)、サービス業が前期比1.8%(前期4.1%)となっている。コロナ禍前との比較ではサービス業が▲3.6%、製造業が▲5.0%、建設業▲14.1%となっており、コロナ禍で大きく落ち込んだサービス業より製造業や建設業の水準が低い。ただし、サービス業でも回復をけん引しているのは、金融業となっている。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年02月01日「経済・金融フラッシュ」)

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