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成約事例で見る東京都心部のオフィス市場動向(2021年下期)-「オフィス拡張移転DI」の動向

佐久間 誠
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本稿では、共同研究の一環として算出した「オフィス拡張移転DI」を中心に、2021年下期の東京オフィス市場の動向を概観する。オフィス拡張移転DIは、0%から100%の間で変動し、基準となる50%を上回ると企業の拡張意欲が強いことを表し、50%を下回ると縮小意欲が強いことを示す1。
オフィス市況が調整局面を迎えるなか、オフィス拡張移転DIは低下基調で推移し、2021年第3四半期は51%となった。しかし、第4四半期は57%へと上昇に転じ、底打ちの兆しを見せている。以下では、2021年下期のオフィス成約面積の動向を振り返ったのち、オフィス拡張移転DIを業種別・ビルクラス別・エリア別に分析し、企業のオフィス移転動向を確認する。
1 算出方法については、末尾の【参考資料1】「オフィス拡張移転DIについて」を参照。
1――オフィス成約面積はコロナ禍前を回復
成約面積を未竣工ビルと竣工済ビルに分けてみると、2021年下期は新築オフィスビルの供給が少なかったため、未竣工ビルは1万坪と、2017年以降で最低となった。これに対して、竣工済ビルは34万坪と、顕在化したオフィス移転需要の受け皿となり、2017年以降で最高を記録した。
2 三幸エステート「オフィスマーケット調査月報」を参照。
3 過去平均は、2017年から2019年の平均。
2――テレワーク普及によるオフィス床削減は継続するものの、一部で拡張移転ニーズも増加
4 東京都心部は、東京都心5区主要オフィス街および周辺区オフィス集積地域(「五反田・大崎」「北品川・東品川」「湯島・本郷・後楽」「目黒区」)。詳細は、三幸エステート「オフィスレントデータ2022」 23ページを参照。
東京都心部のオフィス拡張移転DIは、オフィス市況が活況であった2019年は70%台で推移していた(図表3)。2018年以降、新築オフィスビルの大量供給が続いたにもかかわらず、企業の旺盛なオフィス拡張意欲がオフィス床の大量供給を吸収し、空室率は2019年1月に初めて1%を下回り、その後もタイトな需給バランスが継続した。
2020年にコロナ危機が訪れると、オフィス拡張移転DIは69%(2020年第1四半期)から51%(第4四半期)へと急低下した。その後、空室率はやや遅れて上昇に転じ、2020年末には2.36%へ上昇した。
2021年に入り、オフィス拡張移転DIは51%~53%(第1四半期~第3四半期)と、企業の拡張・縮小意欲が拮抗する水準で横ばいに転じた。オフィス拡張移転DIの低下には歯止めがかかったものの、実際はオフィス床解約の影響が大きく、空室率は2021年10月に4.58%(ボトム対比+3.79%)に上昇した。そして、2021年第4四半期にオフィス拡張移転DIは57%に上昇した。拡張移転する企業が増えたことで、2022年1月の空室率は4.53%と、頭打ち感もみられる。
東京圏5におけるオフィス拡張移転DIを業種別に比較すると、業績悪化を理由とした縮小移転の動きは2020年で一巡し、2021年からはコロナ禍を起点としたワークプレイス再構築の動きが、顕在化している。その影響は、「製造業」や「学術研究・専門/技術サービス業」、「情報通信業」において顕著だが、2021年後半からは、デジタル化加速の恩恵を受ける「情報通信業」でオフィス床を拡張する企業が増えている。
図表4は、横軸に売上高の変動(前年比)を、縦軸にオフィス拡張移転DIを示している。2020年は、両者の相関が高く、業績不振の業種を中心に縮小移転が増加し、オフィス拡張移転DIが低下した。具体的には、売上高の減少率が大きい「宿泊業・飲食サービス業」や「教育・学習支援業」のオフィス拡張移転DIが低いのに対して、相対的に売上高への影響が小さかった「不動産業・物品賃貸業」や「その他サービス業」、「情報通信業」のオフィス拡張移転DIは総じて高い傾向が見られた。
上記3業種について、オフィス拡張移転DIの推移(半年毎)を見ると、「製造業」と「学術研究・専門/技術サービス業」は低迷が続く一方で、「情報通信業」は、35%(2021年上期)から52%(2021年下期)に回復した(図表5)。
5 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県。業種別の分析を行うために十分なデータ数を確保するため、本分析は東京都心部ではなく、東京圏とした。
6 製造業では富士通や東芝、学術研究・専門/技術サービス業ではデロイトトーマツグループ、情報通信業ではZホールディングスやDeNAなどが、ワークプレイス再構築に伴うオフィス縮小を発表している。
(2022年02月24日「不動産投資レポート」)
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