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- 英国金融政策(2月MPC)-追加利上げと保有資産の縮小を決定
2022年02月07日
4.議事要旨の概要
記者会見の冒頭説明原稿および議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り2。
(経済見通し)
(見通しを取り巻くリスク)
(通貨金融情勢)
(需要と生産)
(供給、費用、価格)
(当面の政策決定)
(運用上の考慮事項)
2 適宜、報告書の内容も記載。
3 Ofgemは標準的な世帯が年間に支払う電力・ガスの合計料金の上限を693ポンド引き上げ、年間1971ポンドとする(54%増)と発表した。政府は多くの家計を対象にした電力料金割引の前払いや地方税の払い戻しなどで350ポンドを還元する対策(総額約90億ポンド規模)を公表した。
(経済見通し)
- GDP成長率見通しは、2021年7.25%、22年3.75%、23年1.25%、24年1%
(11月時点では21年7%、22年5%、23年1.5%、24年1%)- 失業率は21年4%、22年4%、23年4.5%、24年5%(10-12月期)
(11月時点では、21年4.25%、22年4%、23年4.25%、24年4.25%) - CPI上昇率は21年5%、22年5.75%、23年2.5%、24年1.75%(10-12月期の前年比)
(11月時点では21年4.25%、22年3.5%、23年2.25%、24年2%)
- 失業率は21年4%、22年4%、23年4.5%、24年5%(10-12月期)
- 慣例に従い、委員会の見通しは公表された政府の政策を前提にしている
- また、委員会の見通しは、今朝、ガス電力市場監督局(Ofgem)がエネルギー価格の上限引き上げの水準を発表し、政府が対策を打ち出す前に作成されている3
- そのため、これらの影響はMPRの見通しには反映されていない
- しかしながら、予測2年目以降のCPIインフレ率に与える影響は大きくないだろう
(見通しを取り巻くリスク)
- 見通しを取り巻くリスクは引き続き非常に大きい
(通貨金融情勢)
- 中期のブレークイーブンインフレ率(inflation compensation)は前回のMPC会合以降、やや上昇して過去10年の平均水準より高い位置に留まっており、米国やユーロ圏で過去10年の平均水準近くにあるのと対照的である
- 委員会は以前、英国の中期ブレークイーブンインフレ率の解釈は容易ではないことを議論した
- それにも関わらず、中期のCPIインフレについての市場期待を抽出するモデルや市場から集めたデータは、期待インフレ率の高さとインフレリスク認識の高まりが、他の要因と比較して中期のブレークイーブンインフレ率が平均より高い理由の大部分であることを示している
- これは市場参加者調査(Market Participants Survey)の結果とも一致しており、回答者は期待インフレ率の上昇とともに、年金負債のヘッジに使われるとした技術的な要因、インフレ見通しを取り巻くリスクが上方に傾いていることなどが示されている
(需要と生産)
- 中銀スタッフは主にオミクロン株の影響が月末にかけて広がったため、12月のGDPを0.5%程度低下すると予想しているが、21年10-12月期としては丁度1%程度の成長を見込んでいる
- 公式データでは、12月の実質小売売上高は急落しており、休暇シーズンの消費前倒しによる前月が強く反動減が起きていることや、オミクロン株の影響を反映していると見られる
- 中銀取引先関係者の報告では、供給制約による財不足のための支出全体の抑制は予想していたほど起きていない
- しかしながら、病欠や自己隔離で助長されている従業員不足が多くの部門で活動制約になっていると報告されている
- 1月のCBI産業動向調査では、熟練労働力の不足が生産制約になっていると報告する企業が引き続き高水準にあるものの、原材料不足が生産制約になっていると報告する企業は1970年代以降の最高水準からはやや低下し、1月の製造業PMIは前月ほど生産制約が悪くないことが示唆されている
- 中銀取引先関係者は22年にかけて供給網の混乱はごく緩やかに改善し、いくらかは23年まで続くと見ている
- 財、設備機械、労働力不足を要因として、投資を鈍化させたとの報告も増えている
- しかしながら、コロナ禍で中断していた計画の再開や需要拡大に対応するため、投資意欲の強さが拡大していることも強調されている
- 12月の弱含みの後、1月の意思決定者調査(Decision Maker Panel)では今年前半にかけコロナ禍による設備投資の若干の鈍化が報告されている
(供給、費用、価格)
- 労働力調査の失業率は11月までの3か月で4.1%に低下し、11月のMPRで予想されているよりも0.4%ポイント低い
- しかしながら失業率は非労働力人口が予想外にやや上昇したことと概ね整合的である
- 非労働力人口のうち、職を探している人は減少を続けている
- 給与所得者データ(HMRC employee payrolls)は12月単月で18.4万人も増加したが、速報値はやや下方修正させる傾向にある
- 中銀スタッフは、税制改革を受けて自営業者が給与所得者に移行するなどの例外的な動きを考慮すると、労働力調査の雇用者や給与所得者は19年10-12月期の水準程度であると判断した
- 自営業者の数は、この移行を考慮しても依然として弱く、労働力調査では19年10-12月期よりも1.4%低い水準にある
- しかしながら、労働市場のひっ迫を示す指標は、高止まりしている
- 欠員失業者比率(ratio of vacancies to unemployment)は01年以降のデータで最高値を更新した
- 中銀スタッフは、オミクロン株が22年1-3月期の初期には活動の重しになるものの、労働力調査の失業率は3.8%まで低下すると予想している
- 1月のPMIの雇用指数は平均より高い水準で概ね横ばいとなった
- 中銀取引先は、採用難の持続を一部反映し、雇用の伸びは緩やかになると報告している
- オンライン求人の高頻度データは12月に下落したものの1月には回復しており、コロナ禍前の季節性に沿った動きを見せている
- コロナに関連した労働市場では病欠、自己隔離、看護による従業員の欠勤が増えている
- ONSの事業環境調査(Business Insights and Conditions Survey)によれば、年末年始にかけて約3%の労働力がコロナに関連した理由で欠勤している
- しかしながら、欠勤者は減少しはじめており、オミクロンは一時的な要因とみられている
- 2月の報告書の見通しでは、民間部門の基調的な賃金伸び率は今後数四半期でさらに上昇すると予想している
- 中銀による企業への特別調査では、交渉による妥結賃金は22年で平均5%近くに達し、様々な規模、部門の企業で広く上昇していることを示している
- 調査先は従業員の維持や新しい労働者の採用能力、インフレ率の上昇が賃金上昇期待を高めているとしている
- REC(求人雇用連盟)の常勤雇用者給与指数は、新規の常勤雇用者への月あたり給与の伸びを示したものだが、12月も最高値に近い水準が維持されている
- ヘッドラインの平均週当たり賃金伸び率は、構成効果が解消されるにつれて、賃金基調の伸び率よりいくらか低くなると見られるが、解消にかかる規模と速度には不確実性がある
- ガスと電気の卸売価格はさらに上昇しており、公共料金の上昇圧力となっている
- 「最後の供給者(the Supplier of Last Resort)」の仕組みによって、廃業したエネルギー業者の顧客を引き継いだ業者が損失を引き受けており、家計へのエネルギー請求に転嫁されはじめると予想される
- 中銀スタッフの試算では、ONSの年次のCPIウエイトの改定でエネルギー価格のウエイトが増加することも、CPIインフレ率の上昇要因となっている
- 通信サービスなどCPIに連動する契約価格も今後数か月の上昇要因となる
- 家計と企業の期待インフレ率は前回のMPC以降、さらに上昇している
- Citi/YouGovの家計の1年先のインフレ期待は12月の4.0%から1月には4.8%まで上昇したものの5-10年先のインフレ期待は変化がなかった
- 意思決定者調査の回答者による自社の価格引き上げ予想は、11月までの3か月の4.2%から、1月までの3か月には4.5%に上昇した
- 予測専門家は、引き続き3年先のCPIインフレ率を2%目標付近とみている
(当面の政策決定)
- 世界的なエネルギー価格および貿易財の上昇、そして22年4月に予定されている国民保険料の引き上げが実質所得に大きな負の影響を及ぼすため、家計が支出を抑え、消費の伸びは鈍化すると見られる
- しかし、予測期間の当初2年間については、消費の伸びは鈍化しても依然として所得の伸びを上回る
- これは家計が、コロナ禍期間に貯蓄をかなり積み上げていることを反映したものである
- その結果、家計貯蓄率は21年10-12月期の8.3%から22年末には4%を下回る水準に低下する見込みである
- この見通しには上下双方向の不確実性がある
- コロナ禍期間中に多くの貯蓄が積みあがったことは、家計がより多くの実質消費水準まで支出することを支援するかもしれない
- これに反して、貯蓄の積み上がりが高所得者に集中しているため、貯蓄の取り崩しはより緩やかになるかもしれない
- エネルギー価格の動向は、特に、貯蓄が少ない家計に影響を及ぼす可能性がある
(運用上の考慮事項)
- 今回の英国債保有の縮小を開始するという決定に沿って、APF(資産購入ファシリティ)から生じる22年3月の279億ポンドのキャッシュフローは再投資されない
- 22年、23年にかけて700億ポンドを若干上回る英国債がAPFから償還され、24年、25年では1300億ポンドが償還される予定である
- APFが保有する英国債の償還に関する詳細はイングランド銀行のウェブサイトで公表され、市民と金融市場に対してAPFの規模がどのように変化するかの明確な上昇を更新していく
- 保有資産の縮小を開始した後、イングランド銀行は金融市場の機能を注視し、金融政策の円滑な伝達に必要があれば準備預金をいずれの方向にも調整する準備がある
- この会合での投資適格級の非金融機関社債の保有を縮小するという決定に沿って、委員会は中銀スタッフに社債購入計画の設計を指示し、3か月以内に公表するよう伝えた
- この計画は投資適格級社債の市場機能を阻害しないよう設計される
- スケジュールを含めたさらなる詳細は売却開始前に「市場への通知」にて公表される
- 中銀総裁は財務相へいくつかの検討事項に関する書簡を送付した
- 加えて、書簡では、保有資産の縮小に関連して、APFは政府保証があるために、APFの削減は漸進的に行うことが適切である点を強調した
2 適宜、報告書の内容も記載。
3 Ofgemは標準的な世帯が年間に支払う電力・ガスの合計料金の上限を693ポンド引き上げ、年間1971ポンドとする(54%増)と発表した。政府は多くの家計を対象にした電力料金割引の前払いや地方税の払い戻しなどで350ポンドを還元する対策(総額約90億ポンド規模)を公表した。
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(2022年02月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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