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IMF世界経済見通し-米中の見通し引き下げで回復ペース鈍化
                                                経済研究部 主任研究員 高山 武士
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1.内容の概要:22年は下方修正、23年はやや上方修正
2.内容の詳細:米国と中国の見通し引き下げが、下方修正の主因
世界経済成長率は、22年の成長率が下方修正(4.9→4.4%)され、23年が上方修正(3.6→3.8%)された。ただし、23年の上方修正はほぼ反動増であり、22年の下方修正幅と比較すると反発力は物足りない。また、下方修正は米国と中国の成長率見通しの引き下げが主因となっている。
なお、IMFは見通しにおけるコロナ禍の前提として、22年末までに大部分の国でワクチン接種が進み、治療が受けられるようになり、かつこれらの取り組みがオミクロン株やその他の変異株にも有効で、健康障害(重症化、入院、死亡)も22年末までにほとんどの国で低水準となる、ことを挙げている(21年10月の前提とほぼ同じ)。なお、米国の金融政策として、22年3月に資産購入の停止、22年と23年にそれぞれ3回ずつの利上げを織り込んでいる。
先進国では、米国において「ビルド・バック・ベター」の財政支出を前提から除いたこと、金融政策正常化の前倒し、供給不足の長期化、を受けて大幅に下方修正されている(22年5.2→4.0%)。またユーロ圏(22年4.3→3.9%)では、オミクロン株のまん延や供給制約のために、特に供給制約の大きいドイツ(22年4.6→3.8%)を中心に下方修正された。
新興国・途上国は中国(22年5.6→4.8%)で、21年下半期からコロナ対応や停電による工業生産の中断、不動産投資の減速、早期の公共投資引き上げによる減速が見られ、22年もゼロコロナ戦略による移動制限や建設部門の雇用悪化を受けた消費伸び悩みや不動産関連投資の低迷が見込まれることから大きく下方修正されている。その他、ブラジル(22年1.5→0.3%)やメキシコ(22年4.0→2.8%)でも高インフレやそれに対応するための金融引き締めから大幅に下方修正された。
なお国別に見ると、改訂見通しで公表している30か国中、22年(度)は18か国が下方修正されており、上方修正は5か国のみ、残りの7か国は横ばいとなった2。
                                                        インフレ率の見通しは(図表4)、22年は先進国で2.3→3.9%、新興国・途上国で4.9→5.9%といずれも大幅に上方修正されたが、23年は先進国で1.9→2.1%、新興国・途上国で4.3→4.7%と小幅な上昇修正となった。22年から23年にかけては、前述のコロナ禍の影響が軽減されるという前提のもと、供給網の混乱緩和、金融政策の引き締め効果、需要の財からサービスへの回帰が見込まれている。IMFは見通しに対するリスクバランスを下方に傾いているとしており、以下をリスク要因として挙げている。
具体的には、「コロナ禍の今後」(オミクロン株のまん延による労働力不足、医療のひっ迫、移動制限の厳格化やワクチンの効かない新たな変異株の出現)、「米国の金融緩和正常化とその波及」(インフレ長期化と予想以上の金融引き締め、それによる金融市場の緊張、新興国市場の通貨・企業・財政への波及)、「供給網の混乱の緩和時期」(モノ需要の持続による需給ひっ迫の長期化)、「賃金上昇による高インフレの長期化」(特に米国)、「中国不動産業減速の深刻化」の5つを主要なリスクとし、その他のリスクとして「気候変動に関連した自然災害」「地政学的緊張」「社会不安」の項目を挙げている。
1 同日に「世界経済回復の混乱(A Disrupted Global Recovery)」との題名のブログも公表している。
2 上方修正はアルゼンチン(+0.5%ポイント)、エジプト(+0.4%ポイント)、インド(+0.5%ポイント)、日本(+0.1%ポイント)、オランダ(+0.1%ポイント)の5か国だった。また修正幅が四捨五入して0.0%ポイントの国を横ばいとした。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年01月26日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員 
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