2022年02月03日

ユーロ圏消費者物価(22年1月)-一時的な要因の剥落後も伸び率が加速

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:伸び率はさらに加速し、統計データ公表以来の最高値を更新

2月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)は1月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は5.1%、市場予想1(4.4%)を上回り、前月(5.0%)から加速(図表1)
前月比は0.4%、予想(▲0.3%)を上回り、前月(0.4%)からは上昇幅が縮小した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は2.3%、予想(1.9%)を上回り、前月(2.6%)からは減速した(図表2)
前月比は▲0.8%、前月(0.4%)から減少した

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:独VATという一時的な要因は剥落したものの、全体の伸び率は加速

21年1月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で5.1%となり、前月の5.0%を上回り、最も高い伸び率の記録を更新した。1月はドイツでのVAT引き下げ終了によるベース効果など、一時的な物価押し上げ要因が剥落し、市場予想でもインフレ率の鈍化が見込まれていたが、予想に反してインフレ率は加速した(図表3)。なお、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は2.3%と前月(2.6%)から鈍化した。以下で見るようにコア以外のエネルギー価格と飲食料(アルコール含む)の伸び率の双方が加速し、全体の伸び率を押し上げた。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」は11月2.4%→12月2.9%→1月2.3%となり減速した。ただし、税率変更の効果が▲0.8%ポイント程度あり(図表3も参考)、税の影響を除くと加速傾向にあると見られる。

一方、「サービス」(エネルギーを除く)は11月2.7%→12月2.4%→1月2.4%と横ばいだった。サービスの税率変更の影響は▲0.4%ポイント程度(図表3も参考)で、こちらも税の影響を除くと加速したと見られる。1月はエネルギーを除く財もサービスも2%を超える伸び率となった。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で11月27.5%→12月25.9%→1月28.6%となり、12月に一時的に減速したものの、1月は再び伸び幅を拡大している。1月は前月比で6.0%(12月は同0.6%)となり、単月での上昇率がかなり高い。コロナ禍の影響を除いた2年前比でも11月16.7%→12月17.2%→1月23.2%となり、加速が鮮明になっている。また、前年同期比寄与度は2.67%ポイント程度(12月は2.46%ポイント)で、再びエネルギー価格の上昇が全体の伸び率の過半を占めたと思われる(前掲図表1・2)。
(図表3)ユーロ圏のコアHICP上昇率/(図表4)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で3.6%(12月3.2%)となった。飲食料のうち加工食品の伸び率は3.1%(12月2.8%)、未加工食品は5.2%(12月4.7%)となり、12月・1月と特に未加工食品の伸びが目立っている(図表4)。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率では、1月は前年同月比で公表されている18か国中11か国が12月から加速した(図表5)。前月比では18か国中13か国がプラスの伸び率となった(図表6)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年02月03日「経済・金融フラッシュ」)

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