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- 深刻化する不法移民問題。22年の中間選挙に影響する可能性
2022年02月03日
不法越境者が大幅に増加した要因は、新型コロナウイルスの感染拡大によって中南米諸国の雇用が大きな打撃を受けたことに加え、21年1月に発足したバイデン大統領がトランプ前大統領と異なり、人道的な観点から不法移民に対して寛容と捉えられたことが大きい。
中南米とカリブ海諸国では新型コロナの感染拡大に伴い、2,600万人の雇用が喪失したと推計されている。国際通貨基金(IMF)は同地域では娯楽や観光業など接触集約的職業の割合が高いため、雇用の減少幅が他の新興国や先進国よりも大きかったと指摘しており、失業者が職を求めて大挙して押し寄せた。実際に、メキシコ国境からの不法越境者数の国別の推移をみると、新型コロナ流行前に大宗を占めていたメキシコや中米北部三角地帯(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル)に加えて、20年秋口以降はエクアドル、ブラジル、ニカラグア、ベネズエラ、ハイチ、キューバなどの国からも顕著に増加したことが分かる(図表2)。これらの地域では新型コロナに伴う経済の落ち込みに加え、ハリケーンや地震などの天災、政情不安などが影響したと考えられている。
バイデン大統領は就任直後にトランプ前大統領が開始した「移民保護プロトコル」、別名「メキシコ待機プログラム」を人道的でないとの理由により、大統領令で停止することを決定した。同プログラムは亡命を希望する難民が申請手続きを行う間、メキシコ側に待機することを定めたもので、治安が悪いメキシコで待機することを恐れて移民申請の件数が減少するなど、移民削減に成果を上げていた。このため、21年1月以降の不法越境者の顕著な増加は、寛容な政策への転換が不法越境のハードルを下げて不法越境者を増加させた可能性が高い。
不法移民の増加を受けて移民問題が中間選挙の争点になる可能性が浮上している。ウォールストリートジャーナルが11月中旬に実施した世論調査では「バイデン大統領と議会に優先して欲しい最も重要な問題は何か」との質問に対する回答で「移民問題」が13%と、「経済」の11%や「インフレ」の10%などを抑えて1位となり、政権の最優先課題となっていることが示された。一方、バイデン大統領の移民政策に対する評価は低い。有権者に対する世論調査1で、移民政策を「強く支持しない」との回答割合が42%となったほか、「若干支持しない」の15%と合わせて57%の有権者が支持していない状況が明らかになった(図表3)。特に、中間選挙で重要な鍵を握る無党派層で支持しないとの回答割合が合計58%に上っており、中間選挙への影響が懸念されている。
1 21年11月13日~11月15日に有権者1,998人を対象にした調査
(https://www.politico.com/f/?id=0000017d-2b9c-d8e1-a57d-ebfd75c40000)
不法移民の増加を受けて移民問題が中間選挙の争点になる可能性が浮上している。ウォールストリートジャーナルが11月中旬に実施した世論調査では「バイデン大統領と議会に優先して欲しい最も重要な問題は何か」との質問に対する回答で「移民問題」が13%と、「経済」の11%や「インフレ」の10%などを抑えて1位となり、政権の最優先課題となっていることが示された。一方、バイデン大統領の移民政策に対する評価は低い。有権者に対する世論調査1で、移民政策を「強く支持しない」との回答割合が42%となったほか、「若干支持しない」の15%と合わせて57%の有権者が支持していない状況が明らかになった(図表3)。特に、中間選挙で重要な鍵を握る無党派層で支持しないとの回答割合が合計58%に上っており、中間選挙への影響が懸念されている。
1 21年11月13日~11月15日に有権者1,998人を対象にした調査
(https://www.politico.com/f/?id=0000017d-2b9c-d8e1-a57d-ebfd75c40000)
バイデン大統領は、12月にメキシコ待機プログラムの再開を決定した。これは、連邦裁判所の判事が21年8月に大統領令で停止したのは不適切として再開を命じていたことを受けた苦渋の決断である。バイデン政権はメキシコ国境からの不法移民問題が深刻化する中、不法移民の減少と人道的な対策の狭間で有効な解決策を提示できず、迷走状態が続いている。
米国内の新型コロナ感染者数の急増や民主党内の対立によって大型歳出法案の審議が滞るなど政治の機能不全が深刻化していることに加え、足元でインフレが高進していることもあり、バイデン大統領の支持率は43%と低迷している。不法移民問題に有権者の関心が高まる中、無党派層の移民問題に対する不支持率の高さと合わせて、このまま移民問題で有効な解決策が提示できなければ、22年の中間選挙に向けて更なる打撃となろう。
米国内の新型コロナ感染者数の急増や民主党内の対立によって大型歳出法案の審議が滞るなど政治の機能不全が深刻化していることに加え、足元でインフレが高進していることもあり、バイデン大統領の支持率は43%と低迷している。不法移民問題に有権者の関心が高まる中、無党派層の移民問題に対する不支持率の高さと合わせて、このまま移民問題で有効な解決策が提示できなければ、22年の中間選挙に向けて更なる打撃となろう。
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2022年02月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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