2022年01月31日

グリーンフレーションとECBの金融政策-2010年代と異なるリスクとの闘い

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
 
  1. ユーロ圏の高インフレは再エネ・シフトや脱石炭加速による「グリーンフレーション」の側面もある。ECBは、高インフレは「持続的」ではない、米国とは違うとの判断に基づき、緩和縮小は緩やか、かつ、段階的に進める方針だ。
     
  2. ECBはユーロ危機の渦中の11年に利上げに動き、その後、デフレ・リスクとの長い闘いを迫られた主因は不況下の財政緊縮、銀行システム問題への対応の遅れにあった。
     
  3. コロナ禍では、銀行システムは政策の波及経路としての役割を、財政政策は、危機の「傷痕」阻止に中心的役割を果たし、金融政策はそれを支えた。
     
  4. 財政政策は、今後も復興を支える役割を果たすことが期待される。2020年代半ばまでは復興基金も利用可能だ。23年以降の財政スタンスに影響を及ぼすEUの財政ルールの見直し協議は持続可能な成長を支えるルールへと意見集約が進むだろう。
     
  5. シュナベール専務理事は、脱炭素化のプロセスでの「グリーンフレーション」のリスクを認め、金融政策の対応が必要となる場面もあるとしている。ポスト・コロナのECBの課題は、2010年代と同じデフレではなく、移行期のインフレ、あるいはスタグフレーションのリスクとの闘いになる可能性が高まっている。
ユーロ圏のインフレ率と原油価格の推移
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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