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加速する欧州グリーン・ディール-気候中立目標達成への包括的取り組み
経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり
- 「欧州グリーン・ディール」の取り組みが加速している。6月には2050年までの気候中立化、2030年の中間目標を法的拘束力のある目標とする「欧州気候法」が採択、欧州委員会は、7月6日にサステナブル・ファイナンスの新戦略、EUグリーン債(EUGS)規則案などに続き、14日に2030年の中間目標実現に向けた政策パッケージを公表した。
- 政策パッケージは、ETS拡張やエネルギー課税見直し、国境炭素調整税(CBAM)という「価格付け」、再生可能エネルギーやエネルギー消費量などの「目標設定」、自動車のCO2排出量や、航空機、船舶の燃料に関わる「制規強化」、炭素価格上昇による影響を緩和するための社会的気候基金創設という「支援措置」に区分される。欧州委は、政策相互の相乗効果とバランスに配慮したものであり、パッケージとしての重要性を強調している。
- 欧州委の提案が法案として成立するためには加盟国との調整や欧州議会による審議を経る必要がある。急激な調整を迫られる業界の抵抗、課税権を巡る加盟国の反発、支援措置の不足も対立点となる可能性がある。域外に影響を及ぼすCBAMの導入には国際的な理解も欠かせない。今後の展開を見極めることが重要だ。
- EUの政策は、気候危機への速やかな対応を求める民意に後押しされ、日本に先行する。日本に適した政策パッケージを構築し、展開するにあたり、示唆と教訓を与えてくれるだろう。
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