2021年11月18日

パワーカップル世帯の動向-コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労

生活研究部 上席研究員   久我 尚子

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1――はじめに~新型コロナ禍で収入減少も見られる中、パワーカップルは?

夫婦共働き世帯が増える中で2017年に同名のレポート1を発信した。その後も「女性の活躍推進」政策等の効果によって、共働き世帯数は全体で見ても子育て世帯で見ても増加している(図表1・2)。

一方で新型コロナ禍で厳しい状況に対峙する労働者もいるが、妻が夫並みに稼ぐ「パワーカップル世帯」は現在、どのような状況にあるのだろうか。本稿では、総務省「労働力調査」などを用いて現状を確認する。なお、過去に述べた通り、パワーカップルには明確な定義はなく、共働き夫婦の合計年収(2千万円以上など)や年収に加えて金融資産の量も考慮したもの、あるいは政治家や事業家など影響力のある夫婦を指すこともあるようだが、本稿では、これまでと同様に所得税の税率区分や、一定程度の裁量権を持つ年収水準であることなどを考慮し、夫婦共に年収700万円以上の世帯と定義する。
図表1 共働き世帯数と専業主婦世帯数/図表2 18歳未満の子のいる世帯の父母の就業状況
 
1 久我尚子「パワーカップル世帯の動向(1)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2017/8/28)など。

2――世帯の所得分布の全体像

2――世帯の所得分布の全体像~2千万円以上の高所得世帯は1.3%、50・60歳代や大都市で多い

パワーカップル世帯の状況を捉える前に、まず、世帯の所得について全体像を確認したい。

厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」によると、総世帯(5,179万世帯)の年間平均所得は552万円、中央値は437万円である。

高所得世帯に注目すると、1,200~1,500万円未満は全体の3.8%(198万世帯)、1,500~2,000万円未満は2.1%(109万世帯)、2,000万円以上は1.3%(65万世帯)を占める(図表3)。なお、この10年ほど、いずれも横ばいで推移している。

これらの高所得世帯を属性別に見ると、世帯主の年齢別には、1,200~1,500万円未満は50歳代や40歳代が、1,500万円以上は50歳代や60歳代が多く、いずれも上位2つの年代で全体の約6割を占める(図表4)。

また、地域別には2,000万円以上の世帯は南関東(33.6%)や東海(20.8%)で、都市規模別には大都市(政令指定都市と東京23区、36.8%)や人口15万人以上の市(26.4%)で多い(図表略)。
図表3 所得金額階級別に見た世帯数の割合(2019年)/図表4 世帯主の年齢別に見た所得階級分布(2019年)

3――パワーカップル世帯の動向

3――パワーカップル世帯の動向~コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労

1共働き夫婦の年収分布~高収入の妻ほど高収入の夫、ただし扶養控除枠を意識する妻も
次に、パワーカップル世帯を含む共働き世帯の状況を確認する。

総務省「令和2年労働力調査」によると、夫婦共に就業者の世帯(以下、共働き世帯)は1,621万世帯であり、総世帯の約3割を占める。

この共働き世帯について、妻の年収階級別に夫の年収階級の分布を見ると、妻の年収が高いほど夫も高年収の割合が高まる傾向がある(図表5)。年収1,000万円以上の妻の80.0%が夫も年収1,000万円以上であり、以前より上昇している(2016年で75.0%、+5.0%pt)。一方で、妻の年収が200万円未満を除くと、妻の年収が低いほど夫も比較的低年収の割合が高い傾向がある。つまり、高年収同士、あるいは低年収同士が夫婦であることで、夫婦(世帯)間の経済格差2の存在が窺える。

妻の年収200万円未満(収入無しを除く)では、逆に夫の年収は低年収の割合が低下し、年収500万円以上の割合が高まる。夫の年収500万円以上の割合は、妻の年収200~300万円未満では35.4%だが、妻の年収50万円未満では40.0%、50~100万円未満では46.4%、100~150万円未満では41.6%と4割を超える(図表略、図表5はこれらを合算した値)。この背景には夫が一定程度の年収を得ているため、自身の収入を増やすよりも夫の扶養控除枠を意識して働く妻が増えることなどがあげられる。
図表5 妻の年収階級別に見た夫の年収階級分布(2020年)
 
2 夫婦世帯間の経済格差については、橘木俊詔・迫田さやか著「夫婦格差社会-二極化する結婚のかたち」(中公新書、 2013年)で指摘されている。
2パワーカップル世帯数の推移~コロナ禍でも引き続き増加、2020年で34万世帯、共働き世帯の2.1%
夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯に注目すると、2020年では34万世帯で総世帯の0.62%3、共働き世帯の2.1%を占める(図表6)。

なお、冒頭で述べた通り、パワーカップルの定義は様々である。参考までに、例えば夫婦の合計年収が2千万円前後・以上の世帯4について見ると14~29万世帯で総世帯の0.25~0.52%、共働き世帯の0.86~1.8%を占める。先に見た通り、年間所得2千万円以上の世帯は全体の1.3%であるため、このうち共働き世帯は3割前後を占めると見られる。また、夫婦の合計年収1500万円前後・以上まで広げると、46~156万世帯で総世帯の0.83~2.8%、共働き世帯の2.8~9.6%を占める。
図表6 夫妻の年収階級別に見た共働き世帯数(2020年)
視点を夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯に戻すと、パワーカップル世帯数は近年、増加傾向にある(図表7)。なお、2019年から2020年にかけての大幅な伸びは2021年以降の変化を考慮して判断すべきと考える。なぜならば、同調査の就業者夫婦の年収階級別世帯数の公表値は1万世帯単位であり、現在のところ、単位に対してパワーカップル世帯数が少ないためだ。いずれにせよ、新型コロナ禍の2020年においても増加傾向が続いていることは注目に値するだろう。

また、パワーカップル世帯の内訳を見ると、引き続き「夫婦と子」から成る核家族世帯が最も多く、2020年で約6割を占める。次いで「夫婦のみ」世帯で約3割を占める。
図表7 世帯類型別に見たパワーカップル(夫婦共に年収700万円以上)の世帯数
 
3 ここでの総世帯は先の厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」による5,179万世帯ではなく、総務省「2020年労働力調査」における二人以上世帯(3,544万世帯)と単身世帯(1,980万世帯)を合わせた5,524万世帯を用いている。
4 図表5・6にて、妻の年収1,500万円以上で夫の年収500万円以上など合計が2,000万円以上に加えて、妻の年収1,000~1,500万円未満で夫の年収500~1,000万円及びその逆のパターンを加えたもの。
3夫の収入別に見た妻の就労状況~夫の年収が1500万円以上でも妻の約6割は就労
ところで、2017年の分析では、依然として、夫の収入が高いほど妻の就業率が下がるという「ダグラス・有沢の法則」が成立していた。
図表8 夫の年収階級別に見た妻の労働力率 2020年のデータで改めて見ると、やはり夫の年収が400万円以上では夫の年収が高いほど妻の労働力率は低下し、依然として「ダグラス・有沢の法則」は成立している(図表8)。

一方で夫の年収によらず妻の労働力率は全体的に上昇傾向にあり、夫が高収入の世帯でも多くの妻が働くようになっている。例えば、夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、妻の労働力率は48.8%から61.5%(+12.7%pt)へ、世帯数は20万世帯から32万世帯(+12万世帯)へと増えている。

また、夫が高年収の世帯ではフルタイムで働く妻(週35時間以上就業の雇用者)もやや増えている。夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、妻の労働力率は14.6%から17.3%(+2.7%pt)へ、世帯数は6万世帯から9万世帯(+3万世帯)へと増えている。なお、夫の年収が700万円以上の世帯に広げて見ると、妻の労働力率は17.4%から21.2%(+3.8%pt)へ、世帯数は78万世帯から114万世帯(+36万世帯)へと増えており、このうち約3割がパワーカップルである。

4――おわりに

4――おわりに~遠回りに見えるが就労環境の整備こそ有効な消費喚起策

パワーカップルは現在のところ、共働き世帯の約2%に過ぎないがコロナ禍でも増加傾向にある。背景には、近年、仕事と家庭の両立環境の整備が進んだことで、出産後も正社員として働き続け、収入を大幅に減らさずにキャリアを積む女性が増え、若い世代でパワーカップルが増えていることがあげられる。

また、世の中が変わることで、若い世代では男女とも価値観が変容している影響もあるだろう。既出レポート5で述べた通り、共働きがスタンダードになる中で、若い世代ほど仕事と家庭のどちらかを選ぶのではなく、仕事も結婚も子どもを持つことも望む女性が増えている。また、30代以下の世代は、男子も家庭科が必修科目となった世代であり6、女性の大学進学率が短大進学率を上回った7後に進学先を選び、「男女雇用機会均等法」にて男女差別が全面撤廃8された後に社会人となった世代だ。日本社会では依然として男女の役割分担意識が存在するとはいえ、これまでの世代と比べて女性が男性のサポートに回るのでなく、男女が肩を並べて社会で活躍することをごく普通のこととして捉える意識が格段に強まっているだろう。そして、それは女性だけでなく男性にも言えることだ。

コロナ前は共働き世帯による活発な消費が様々な文脈で話題となっており、時短家電やカット野菜などの時短食材、家事代行サービスなどの利用のほか、パワーカップルが都心の高級マンション市場を牽引しているといった報道もあった。テレワークの浸透で働き方は変容したが、特に子どもがいる共働き世帯では、仕事と家庭の両立に十分な時間があるとは言えず、引き続き時短を叶える(時間を買う)需要は強いと見られる。また、都市部ではコロナ禍でも中学受験が活発であり、受験年齢の低年齢化9などによって教育への支出が増えているようだが、やはり、これらの市場にもパワーカップルの姿があるのだろう。パワーカップルは全体からすればごく僅かだが、消費意欲は旺盛と見られ、消費市場へのインパクトは無視できない。今後も一部の消費市場を活性化させ、その規模はじわりと拡大していくと見られる。

ところで、年収階級別に男女の消費性向を比べると、女性の方が男性より高い傾向がある(図表9)。これまでも様々なマーケティングの文脈で言われてきた通り、女性の方が男性より消費意欲が旺盛だ。つまり、女性が働き続けられる環境が整備され、その収入が増えれば個人消費の底上げにつながる。また、夫婦世帯単位で見ても、現役世代の世帯収入が増えれば消費に結びつきやすい。

仕事と家庭を両立するための就労環境の整備と言うと、消費施策としては遠回りのようだが、その効果への期待は大きい。
図表9 年収階級別に見た単身勤労者世帯の男女の消費性向
 
5 久我尚子「続・働く女性の管理職希望」(2019/5/10)、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター
6 文部科学省「国際教育協力懇談会 資料集(2002年7月)」等によると、1994年より高等学校にて男子も家庭科が必修科目となった。
7 文部科学省「学校基本調査」によると、1996年入学から女性の大学進学率は短大進学率を逆転。
8 1997年の改正(1999年施行)で努力義務であった募集・採用、配置・昇進等における男女差別が禁止規定になった。
9 「(変わる進学)小学校受験、増える傾向続く」(朝日新聞、2021/11/13、朝刊24面)や「(変わる進学 大学入試新時代へ)中学受験塾、年々進む低年齢化」(朝日新聞、2020/11/28、朝刊30面)など。
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

(2021年11月18日「基礎研レポート」)

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