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9月末での3回目のワクチン接種意向~高年齢者と、重症化・治療への不安、ワクチンへの高評価、小6以下の子どもがいる人の意向が高い

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――3回目以降の接種を希望するのは全体の半数程度
年齢群別にみると、「そう思う」または「ややそう思う」と回答した割合は、20~44歳で38.3%だったのに対し、60~74歳では60.9%と、年齢が高いほど高かった。1~2回目の接種状況・意向別にみると、2回目まで接種を終えている人で「そう思う」または「ややそう思う」が60.7%と、接種が進んでいる人ほど高かった。一方、まだ予約しておらず、絶対に接種したくない人では半数以上が「そう思わない」と回答していた。
2回目までの接種については、医療従事者に続いて高齢者が優先的に接種している。65歳未満では、自治体ごとに予約の順番は異なっていたものの調査を実施した9月末の時点では予約したい人はほぼ予約できていると考えられ3、感染不安や重症化不安が高くワクチン接種に積極的だった人ほど早い時期に接種している傾向があると考えられる。諸外国において、2回ワクチンを接種した場合であっても、接種後の時間の経過とともに、ワクチンの有効性や免疫原性が低下することが報告されていることから4、早い時期に接種をした感染不安や重症化不安が高くワクチン接種に積極的だった人ほど3回目以降の接種意向が高くなるものと考えられる。
ただし、接種または予約を行っている人だけでみても、3回目以降については「どちらともいえない」が34.5%、「あまりそう思わない」または「そう思わない」が1割程度となっている。これは、現在、まだ3回目の接種後の副反応の状況や、効果、効果の持続性などの情報が少なく、自分が接種した方がいいのか判断しかねていることや、調査を実施した9月末は、新規感染者や重症者が減少し続けている時期であり、国内の感染動向を考慮しようとしていることが考えられる。
3 本調査において、1~2回目のワクチン接種に関して、「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は全体の2.8%にとどまった。
4 厚生労働省 第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(2021年9月17日)の資料1等。
2―― 重症化、治療への不安、ワクチンへの高評価、小6以下の子どもがいる人で意向は高く、中長期的な副反応が生じる不安、高齢家族との同居で意向は低い
各独立変数の具体的な内容としては、持病などの有無としては、「持病がある6」「肥満である(BMI30以上など)」「妊娠中である・授乳中である」にあてはまるかどうかとした。身の回りの感染状況としては、「身の回りの人に感染者や濃厚接触者はいない」にあてはまるかどうかを尋ねた。ワクチンに対する考え方としては、「ワクチンで多くの人が救われている」「ワクチン接種後に発熱や倦怠感などの短期的な副反応が生じることは課題である」「中長期的に(現在、特に明らかになっているわけではないが)ワクチン接種による副反応が生じる可能性がある」に対して「そう思う」~「そう思わない」の6段階で回答してもらった結果を使った。感染にともなう不安としては、「感染による健康状態の悪化」「感染しても適切な治療が受けられない」「持病や新型コロナ以外の疾患などによる健康状態の悪化」「コミュニケーション機会の減少により、うつなどの心の病気になる」「自分や家族の収入減少」に対して「非常に不安」~「全く不安ではない・該当しない」の5段階で回答してもらった結果を使った。同居家族としては、「高齢家族と同居7」「第一子が小学校6年生以下である」「同居人がいない」にあてはまるかどうかとした。
5 2回目まで接種を完了している/1回目の接種は終えている/1回目の接種予約は完了し、接種日を待っている。
6 「持病がある」は、「心疾患・脳血管疾患・糖尿病・高血圧・呼吸器疾患などの持病がある」「免疫系の持病がある、または、免疫の 機能を低下させる治療を受けている」「これら以外の持病がある」のいずれかにあてはまることとした。
7 祖父母、または45歳以上の人が親と同居している人とした。
3―― 9月末時点での3回目のワクチン接種意向のまとめ
3回目の接種意向が高い人の年齢と1~2回目の接種状況以外の特徴をみると、当初より感染による重症化リスクが高いとされる持病を持っている人や肥満である人、適切な治療が受けられないことに不安を感じている人、「ワクチンで多くの人が救われている」と感じている人、小学校6年生以下の子どもと同居している人で意向は高く、中長期的な副反応が生じる不安、高齢家族との同居で意向は低かった。一方、ワクチン接種後に発熱や倦怠感などの短期的な副反応が生じることを課題としているかどうか、身の回りの人に感染者や濃厚接触者がいるか、感染による健康状態の悪化、持病や新型コロナ以外の疾患などによる健康状態の悪化、コミュニケーション機会の減少により、うつなどの心の病気になること、自分や家族の収入減少に不安を感じるか、同居人がいないことでは有意差はなかった。
この結果から、3回目の接種意向が高いのは、感染によって治療が受けられない不安を感じている人とワクチンに対する評価が高い人だった。また、1~2回目の接種については、高齢家族と同居している人で接種意向が高く8、ワクチン接種意向には同居家族のリスク低減を目的としている可能性が考えられたが、3回目については高齢者と同居している人はむしろ意向が低かった。一方、第一子が小学校6年生以下である人で意向が高かった。同居者が高齢者の場合は、高齢者自身が3回目のワクチンを打つことでリスクが低減できるのに対し、小学校6年生以下の子どもは現在のところワクチン接種対象になっておらず、同居する家族が自分の感染リスクを低下することが有効だと考えている可能性が考えられた。なお、1~2回目のワクチンを接種、または接種の予定の人であっても中長期的な副反応が生じる可能性があると考えている人で接種をためらうことが伺えた。
(2021年11月16日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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