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- 米GDP(21年7-9月期)-前期比年率+2.0%と前期(同+6.7%)から低下、市場予想(同+2.6%)も下回る
2021年10月29日
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1.結果の概要:成長率は前期から大幅に低下、市場予想も下回る
7-9月期の成長率を需要項目別にみると、在庫投資は成長率寄与度が+2.07%ポイント(前期:▲1.26%ポイント)と3期ぶりにプラスに転換したほか、政府支出も前期比年率+0.8%(前期:▲2.0%)と小幅ながらプラスに転じた(図表2)。
一方、個人消費が前期比年率+1.6%(前期:+12.0%)、民間設備投資が+1.8%(前期:+9.2%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。とくに、個人消費は前期まで2期連続で2桁の伸びとなり、景気回復を牽引していたものの、当期はデルタ株の拡大に伴う新型コロナの感染再拡大によって、経済活動制限の緩和が遅れたほか、半導体不足に伴う自動車生産の減産など、供給制約が消費の伸びを大幅に鈍化させとみられる。
また、住宅投資が▲7.7%(前期:▲11.7%)と2期連続でマイナスとなったほか、外需の成長率寄与度も▲1.14ポイント(前期:▲0.18%ポイント)と前期からマイナス幅が拡大して成長を押し下げた。
このように、当期は新型コロナの感染再拡大の影響に加え、供給制約が景気回復を大幅に鈍化させる結果となった。もっとも、供給制約の解消は遅れているものの、家計の貯蓄率が8.9%と新型コロナ流行前の7%台を大幅に上回っており、家計が消費余力を有している中で、9月以降は新型コロナの新規感染者数は減少に転じていることから、年末商戦も控えている10-12月期は再び個人消費主導で成長加速が見込まれる。
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。
一方、個人消費が前期比年率+1.6%(前期:+12.0%)、民間設備投資が+1.8%(前期:+9.2%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。とくに、個人消費は前期まで2期連続で2桁の伸びとなり、景気回復を牽引していたものの、当期はデルタ株の拡大に伴う新型コロナの感染再拡大によって、経済活動制限の緩和が遅れたほか、半導体不足に伴う自動車生産の減産など、供給制約が消費の伸びを大幅に鈍化させとみられる。
また、住宅投資が▲7.7%(前期:▲11.7%)と2期連続でマイナスとなったほか、外需の成長率寄与度も▲1.14ポイント(前期:▲0.18%ポイント)と前期からマイナス幅が拡大して成長を押し下げた。
このように、当期は新型コロナの感染再拡大の影響に加え、供給制約が景気回復を大幅に鈍化させる結果となった。もっとも、供給制約の解消は遅れているものの、家計の貯蓄率が8.9%と新型コロナ流行前の7%台を大幅に上回っており、家計が消費余力を有している中で、9月以降は新型コロナの新規感染者数は減少に転じていることから、年末商戦も控えている10-12月期は再び個人消費主導で成長加速が見込まれる。
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。
2.結果の詳細:
(個人消費・個人所得)自動車関連の消費が大幅に減少
7-9月期の個人消費は、財消費が前期比年率▲9.2%(前期:+13.0%)と3期ぶりのマイナスとなったほか、サービス消費が+7.9%(前期:+11.5%)と堅調を維持したものの、前期から伸びが鈍化した(図表3)。財消費では、耐久財が▲26.2%(前期:+11.6%)と5期ぶりにマイナスに転じたほか、非耐久財が+2.6%(前期:+13.9%)と大幅に伸びが鈍化した。
耐久財では、自動車・自動車部品が▲53.9%(前期:+15.9%)、家具・家電が▲10.3%(前期:+0.1%)と前期から2桁の大幅なマイナスに転じたほか、娯楽・スポーツカーも▲7.2%(前期:+11.9%)とマイナスに転じた。自動車関連消費の落ち込みは、減産に伴う新車在庫の不足に加えて、新車販売価格が上昇した影響とみられる。
非耐久財は、ガソリン・エネルギーが+14.0%(前期:+36.4%)と前期からは大幅に鈍化したものの、2桁の伸びを維持した一方、食料・飲料が横這い(前期:+3.2%)と伸びが鈍化したほか、衣料・靴が▲0.5%(前期:+37.9%)と5期ぶりにマイナスに転じた。
サービス消費は、金融サービスが+5.0%(前期:▲3.1%)と前期からプラスに転じたほか、住宅・公共料金が+1.1%(前期:+0.3%)と小幅ながら伸びが加速した。一方、医療サービスが+5.7%(前期:+10.3%)と伸びが鈍化したほか、娯楽サービスが+16.5%(前期:+41.3%)、飲食・宿泊サービスが+12.4%(前期:+68.0%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。これら対面型サービス消費の鈍化は、新型コロナの感染再拡大による影響とみられる。なお、輸送サービスは+41.5%(前期:+52.0%)とこちらは前期からは鈍化したものの、堅調な伸びを維持した。
7-9月期の個人消費は、財消費が前期比年率▲9.2%(前期:+13.0%)と3期ぶりのマイナスとなったほか、サービス消費が+7.9%(前期:+11.5%)と堅調を維持したものの、前期から伸びが鈍化した(図表3)。財消費では、耐久財が▲26.2%(前期:+11.6%)と5期ぶりにマイナスに転じたほか、非耐久財が+2.6%(前期:+13.9%)と大幅に伸びが鈍化した。
耐久財では、自動車・自動車部品が▲53.9%(前期:+15.9%)、家具・家電が▲10.3%(前期:+0.1%)と前期から2桁の大幅なマイナスに転じたほか、娯楽・スポーツカーも▲7.2%(前期:+11.9%)とマイナスに転じた。自動車関連消費の落ち込みは、減産に伴う新車在庫の不足に加えて、新車販売価格が上昇した影響とみられる。
非耐久財は、ガソリン・エネルギーが+14.0%(前期:+36.4%)と前期からは大幅に鈍化したものの、2桁の伸びを維持した一方、食料・飲料が横這い(前期:+3.2%)と伸びが鈍化したほか、衣料・靴が▲0.5%(前期:+37.9%)と5期ぶりにマイナスに転じた。
サービス消費は、金融サービスが+5.0%(前期:▲3.1%)と前期からプラスに転じたほか、住宅・公共料金が+1.1%(前期:+0.3%)と小幅ながら伸びが加速した。一方、医療サービスが+5.7%(前期:+10.3%)と伸びが鈍化したほか、娯楽サービスが+16.5%(前期:+41.3%)、飲食・宿泊サービスが+12.4%(前期:+68.0%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。これら対面型サービス消費の鈍化は、新型コロナの感染再拡大による影響とみられる。なお、輸送サービスは+41.5%(前期:+52.0%)とこちらは前期からは鈍化したものの、堅調な伸びを維持した。
実質可処分所得は前期比年率▲0.7%(前期:▲25.7%)と前期からマイナス幅は縮小したものの、2期連続のマイナスとなった(図表4)。これは、直接給付や失業給付など可処分所得を押し上げた経済対策の政策効果が剥落した影響とみられる。
一方、可処分所得が減少したことから貯蓄率は8.9%(前期:10.5%)と前期から▲1.6%ポイント低下した。
一方、可処分所得が減少したことから貯蓄率は8.9%(前期:10.5%)と前期から▲1.6%ポイント低下した。
(民間投資)設備機器投資、建設投資が減少
7-9月期の民間設備投資の内訳は建設投資が前期比年率▲7.3%(前期:▲3.0%)と前期からマイナス幅が拡大したほか、設備機器投資が▲3.2%(前期:+12.1%)と5期ぶりのマイナスとなった(図表5)。一方、知的財産投資は+12.2%(前期:+12.5%)と堅調な伸びを維持した。
7-9月期の民間設備投資の内訳は建設投資が前期比年率▲7.3%(前期:▲3.0%)と前期からマイナス幅が拡大したほか、設備機器投資が▲3.2%(前期:+12.1%)と5期ぶりのマイナスとなった(図表5)。一方、知的財産投資は+12.2%(前期:+12.5%)と堅調な伸びを維持した。

設備機器投資は、産業機器が+11.2%(前期:+32.9%)と前期から伸びが鈍化したほか、情報処理関連が▲5.8%(前期:▲7.8%)と前期に続きマイナスとなった。さらに、輸送機器が▲18.5%(前期:+52.1%)と大幅なマイナスに転じて全体を押し下げた。
知的財産投資では、ソフトウエアが+15.7%(前期:+14.1%)と前期から伸びが加速したほか、研究・開発が+9.5%(前期:+11.2%)、娯楽・文学等が+11.0%(前期:+12.2%)と好調を維持した。
最後に住宅投資は、集合住宅が前期比年率▲3.5%(前期:+12.6%)、戸建てが▲9.4%(前期:+1.5%)といずれも前期からマイナスに転じた。
(貿易)広範な分野で財輸出が減少
7-9月期の輸出入は輸出が前期比年率▲2.5%(前期:+7.6%)と前期からマイナスに転じたほか、輸入が+6.1%(前期:+7.1%)と前期から伸びが鈍化した。当期は外需の成長率寄与度で前期からマイナス幅が拡大したが、主に輸出が減少したことが大きい。
輸出を仔細にみると、財輸出が前期比年率▲5.1%(前期:+6.4%)と前期からマイナスに転じたほか、サービス輸出が+3.8%(前期:+10.4%)と伸びが鈍化した(図表7)。
財輸出では、消費財(食料、自動車関連除く)が+42.0%(前期:+38.2%)と好調を維持したほか、自動車関連が▲6.8%(前期:▲25.3%)と前期からマイナス幅が縮小した。一方、食料・飲料が▲34.0%(前期:▲32.0%)と前期に続いて2桁のマイナスとなったほか、工業用原料が▲8.9%(前期:+3.1%)、資本財(自動車関連除く)が▲5.3%(前期:+30.7%)と前期からマイナスに転じた。
サービス輸出では、輸送が+9.9%(前期:+21.8%)と前期から伸びが鈍化したものの、プラスを維持した一方、旅行は▲6.6%(前期:+95.5%)と前期からマイナスに転じた。
一方、輸入は、財輸入が前期比年率▲0.1%(前期:+4.3%)と前期から小幅ながらマイナスに転じたものの、サービス輸入は+44.4%(前期:+23.6%)と前期から伸びが加速した(図表8)。
財輸入では、工業用原料が+21.1%(前期:+7.2%)と前期から伸びが加速したものの、食料・飲料が+0.2%(前期:+28.9%)、資本財(自動車関連除く)が+1.0%(前期:+13.5%)と前期から伸びが鈍化した。さらに、自動車関連が▲18.9%(前期:▲15.7%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲10.5%(前期:▲3.1%)と前期からマイナス幅が拡大した。
サービス輸入は、輸送が+64.4%(前期:+66.2%)、旅行が+476.5%(前期:+420.0%)と前期に続いて大幅な伸びが持続した。
7-9月期の輸出入は輸出が前期比年率▲2.5%(前期:+7.6%)と前期からマイナスに転じたほか、輸入が+6.1%(前期:+7.1%)と前期から伸びが鈍化した。当期は外需の成長率寄与度で前期からマイナス幅が拡大したが、主に輸出が減少したことが大きい。
輸出を仔細にみると、財輸出が前期比年率▲5.1%(前期:+6.4%)と前期からマイナスに転じたほか、サービス輸出が+3.8%(前期:+10.4%)と伸びが鈍化した(図表7)。
財輸出では、消費財(食料、自動車関連除く)が+42.0%(前期:+38.2%)と好調を維持したほか、自動車関連が▲6.8%(前期:▲25.3%)と前期からマイナス幅が縮小した。一方、食料・飲料が▲34.0%(前期:▲32.0%)と前期に続いて2桁のマイナスとなったほか、工業用原料が▲8.9%(前期:+3.1%)、資本財(自動車関連除く)が▲5.3%(前期:+30.7%)と前期からマイナスに転じた。
サービス輸出では、輸送が+9.9%(前期:+21.8%)と前期から伸びが鈍化したものの、プラスを維持した一方、旅行は▲6.6%(前期:+95.5%)と前期からマイナスに転じた。
一方、輸入は、財輸入が前期比年率▲0.1%(前期:+4.3%)と前期から小幅ながらマイナスに転じたものの、サービス輸入は+44.4%(前期:+23.6%)と前期から伸びが加速した(図表8)。
財輸入では、工業用原料が+21.1%(前期:+7.2%)と前期から伸びが加速したものの、食料・飲料が+0.2%(前期:+28.9%)、資本財(自動車関連除く)が+1.0%(前期:+13.5%)と前期から伸びが鈍化した。さらに、自動車関連が▲18.9%(前期:▲15.7%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲10.5%(前期:▲3.1%)と前期からマイナス幅が拡大した。
サービス輸入は、輸送が+64.4%(前期:+66.2%)、旅行が+476.5%(前期:+420.0%)と前期に続いて大幅な伸びが持続した。
(物価・名目値)PCE価格指数は前年同期比で総合、コアともに上昇基調が持続
7-9月期のGDP価格指数は前期比年率+5.7%(前期:+6.1%)と前期から低下した一方、市場予想(同+5.3%)は上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+7.8%(前期:+13.4%)となった(図表9)。
一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+5.3%、前年同期比+4.3%(前期:+6.5%、+3.9%)と前期から前期比は低下したものの、前年同期比は上昇した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も、前期比年率+4.5%、前年同期比+3.6%(前期:+6.1%、+3.4%)と前期比は低下、前年同期比は上昇する結果となった。このため、総合指数、コア指数ともに前年同期比では上昇基調が持続しており、物価上昇圧力が持続していることを示す結果となった。
7-9月期のGDP価格指数は前期比年率+5.7%(前期:+6.1%)と前期から低下した一方、市場予想(同+5.3%)は上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+7.8%(前期:+13.4%)となった(図表9)。
一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+5.3%、前年同期比+4.3%(前期:+6.5%、+3.9%)と前期から前期比は低下したものの、前年同期比は上昇した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も、前期比年率+4.5%、前年同期比+3.6%(前期:+6.1%、+3.4%)と前期比は低下、前年同期比は上昇する結果となった。このため、総合指数、コア指数ともに前年同期比では上昇基調が持続しており、物価上昇圧力が持続していることを示す結果となった。
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(2021年10月29日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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