2021年10月20日

米住宅着工・許可件数(21年9月)-着工、許可件数ともに前月から減少、市場予想も下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:着工、許可件数ともに前月、市場予想を下回る

10月19日、米国センサス局は9月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は155.5万件(前月改定値:158.0万件)と161.5万件から下方修正された前月、市場予想の161.5万件(Bloomberg集計の中央値)を下回った(図表1、図表3)。

住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は158.9万件(前月改定値:172.1万件)と、172.8万件から小幅下方修正された前月、市場予想の168.0万件を下回った(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:集合住宅が大幅に減少、7-9月期の住宅投資は2期連続でマイナス成長へ

住宅着工件数の伸びは前月比▲1.6%(前月:+1.2%)と前月からマイナスに転じた(図表3)。内訳をみると、戸建てが前月比横這い(前月:▲2.9%)と3ヵ月ぶりにマイナスを解消した一方、集合住宅が▲5.0%(前月:+11.1%)とマイナスに転じて全体を押し下げた(図表4)。

前年同月比では+7.4%(前月:+14.8%)と7ヵ月連続でプラスとなった。戸建てが▲2.3%(前月:+5.6%)とマイナスに転じたものの、集合住宅が+38.5%(前月:+41.6%)と2ヵ月連続で2桁の伸びとなり、全体を押し上げた。

地域別寄与度(前月比)は、中西部が+0.9%ポイント(前月:+1.3%ポイント)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、西部が+3.9%ポイント(前月:▲5.7%ポイント)と前月からプラスに転じた。もっとも、北東部が▲2.8%ポイント(前月:+6.1%ポイント)と前月からマイナスに転じたほか、南部が▲3.5%ポイント(前月:▲0.6%ポイント)と2ヵ月連続でマイナスとなり、全体を押し下げた。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比▲7.7%(前月:+5.6%)と3ヵ月ぶりにマイナスに転じた(図表5)。戸建てが▲0.9%(前月:+0.2%)とマイナスに転じたほか、集合住宅が▲18.3%(前月:+15.3%)と3ヵ月ぶりに大幅なマイナスに転じて全体を押し下げた(図表6)。

前年同月比は横這い(前月:+13.1%)と16ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びは大幅に鈍化した。戸建てが▲7.1%(前月:▲0.5%)と2ヵ月連続でマイナスとなったものの、集合住宅が+17.1%(前月:+43.7%)と2桁の伸びを維持した。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅着工件数と実質住宅投資の伸び率 一方、住宅着工件数と許可件数の3ヵ月移動平均、3ヵ月前比は年率で9月がそれぞれ▲5.6%(6月:▲2.6%)、▲5.5%(6月:▲23.9%)となり、いずれも6月に続きマイナスとなった(図表7)。

このため、GDPにおける住宅投資は21年4-6月期の前期比年率▲11.7%から、10月28日に発表される7-9月期も2期連続でマイナス成長になる可能性高い。住宅市場は住宅ローン金利が低位に留まっており追い風となっているものの、労働力不足に加え、木材価格の上昇や販売住宅在庫不足に伴う住宅価格の上昇が住宅取得能力の低下を通じて住宅市場の回復を遅らせている構図が続いている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2021年10月20日「経済・金融フラッシュ」)

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