コラム
2021年10月15日

J-REIT市場、実り多き20年の道。創設来の収益率は+416%を実現~唯一無二の金融商品として地位を確立~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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今年9月に、J-REIT(不動産投資信託)市場は創設20周年を迎えました。J-REIT市場は当初、金融商品としての知名度が低く、取引スタートの翌日に「9.11(米国同時多発テロ)」に直面する不運もあって厳しい船出を余儀なくされましたが、現在は世界第2位の市場規模(約17兆円)へと大きく成長し、唯一無二の金融商品として地位を確立しています。
 
あらためて、J-REITの商品設計を確認すると、(1)ゴーイング・コンサーン(継続事業の前提)の投資法人を投資ビークル(器)として、(2)エクイティ資金を公募で50%、デット資金をコーポレートの信用基準で50%調達し、(3)投資適格不動産で構成されるポートフォリオを、(4)不動産運用のプロが管理・運営し、(5)利益のほぼ全額をパススルー(非課税)で投資主に還元する、上場金融商品です。しかし、このような特性を持つ金融商品が如何なる投資収益を生み出すのか。20年前は全く未知数であり、投資家の信認を得るには運用実績を積み重ねるしか方法がなかったと言えるかもしれません。
 
そして20年が経過し、J-REIT市場全体の総合収益率は+416%(年率+8.6%)となり、国内株式や国内債券を上回るパフォーマンスを実現し、J-REITがインカム収入の獲得だけではなく、長期の資産形成にも適した金融商品であることを示しています(図表1)。
図表1: J-REIT、国内株式、国内債券の総合収益率(2021年8月末時点)
こうしたJ-REITの高い収益率はファンダメンタルズに裏づけされたもので、決してバブルではありません。J-REIT市場全体の1口当たり分配金と1口当たりNAV(Net Asset Value、解散価値)の成長率を確認すると、全ての期間(過去5年・10年・15年・20年)において経済成長率を上回る伸びを確保しています(図表2)。これは、派手さはなくても安定成長(Stable Growth)が期待できる資産は、途中に山もあれば谷もあるけれども、長期保有によって素晴らしいリターンを投資家にもたらしてくれることを示唆しています。
図表2: 1口当たり分配金、1口当たりNAV、名目GDPの成長率(年率)
20年前と現在を比較した場合、J-REITの設計図は変わりませんが、その内容はより洗練され進化しています。20年後、今に受け継がれる良き部分を守りつつ、さらなる成長を遂げたJ-REIT市場の姿に期待したいと思います。
 
 

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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2021年10月15日「研究員の眼」)

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