コラム
2021年10月13日

株式市場での「解散は買い」のアノマリーは有効か-2000年以降の衆院解散・総選挙と海外投資家売買動向

金融研究部 研究員   森下 千鶴

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2021年9月29日の自民党総裁選挙にて岸田文雄前自民党政務調査会長が選出され、10月4日召集の臨時国会にて岸田新内閣が発足した。同日夜に岸田総理は10月14日に衆院を解散し、衆院総選挙を「10月19日公示・31日投開票」の日程で行う方針を表明した。
 
日本の株式市場で選挙が話題になるとよく聞く言葉に、「解散は買い」というアノマリー(経験則)がある。これは、解散日から総選挙の投開票日までの選挙期間中は株価が上昇するという意味だ。2000年以降に実施された7回の解散・総選挙を確認すると、日経平均が7勝0敗、TOPIXが6勝1敗と、確かに株価は上昇していた。
図表1 選挙期間中は株価が上昇
「解散は買い」のアノマリーは今回の衆院解散・総選挙にも当てはまるのだろうか。
 
日本株が大きく上昇または下落する局面では、日本の株式市場での売買代金シェア6割以上を占める海外投資家が大きく売買していることが多い。図表2は海外投資家の売買動向(現物と先物の合計)とTOPIXの騰落率の関係を表したものである。2009年以降のデータでは、海外投資家が日本株を買い越すほどに株価が上昇、逆に売り越すほどに株価が下落する傾向が確認できる。
図表2 日本株の上昇には海外投資家の買いが必要
図表2の赤色の点は過去4回の衆院解散日から投開票日までの海外投資家売買動向の累積金額と同期間のTOPIXの騰落率である。4回の選挙のうち3回は選挙期間中、海外投資家は日本株を買い越しており、株価も上昇していた。
 
図表3は2021年海外投資家売買動向の年初来推移である。
図表3 2021年海外投資家売買動向の推移
海外投資家は2021年5月以降、先物を中心に売りが膨らみ、現物+先物でも累積のグラフが低下し全般的に売却基調であった。それが9月上旬に菅前首相の不出馬宣言以降、自民党総裁選挙への注目の高まりから、先物、現物ともに買いが入り、9月第2週に一旦、年初から売り越された分まで買い戻された。しかし、その後は売りが優勢となり、10月第1週時点で再び年初来の累積で1.8兆円の売り越しとなっている。9月下旬は中国の不動産開発大手を巡るデフォルト懸念や米長期金利の上昇などもあり世界的に株価は下落基調ではあった。そのため、リスク回避的になった海外投資家の売却もあったと思われる。ただ、9月上旬に選挙という日本国内の要因で買いに入っていた海外投資家は、岸田文雄前自民党政務調査会長の選出を受け、売却に動いた様子である。
 
最後に、過去の選挙期間中の海外投資家売買動向と比較すると今回はどのような特徴が見られるか確認した。図表4は過去4回および2021年10月14日を衆院解散日とした今回の衆院解散・総選挙前後の海外投資家の売買動向推移をまとめたものである。
図表4 2021年は総選挙前に海外投資家の買いが入った
赤色の線が今回の海外投資家売買動向である。過去4回は解散日直前に海外投資家が日本株を買う傾向が見られるのに対し、今回はすでに解散日の5週前から買いが入っており、菅前首相の支持率が低迷していたところの不出馬宣言を受け、海外投資家が変化を期待して買いを入れたことが推察される。しかし、自民党総裁選後は売りが優勢となっている。今回の衆議院選挙では、自民党総裁選時にすでにある程度の政策が示され、総選挙直前に新内閣が発足している。従って、今回は選挙を理由とした海外投資家の買いは積極的には入らず、「解散は買い」のアノマリーの有効性は低いのではないかと見ている。
 
とはいえ、金融所得課税の強化の話を撤回したことで11日の日本の株式市場が大幅に上昇するなど、当たり前だが、政権与党幹部の発言には注目が集まっている。海外投資家の日本に対する期待がどの程度なのかを測る面でも、「解散は買い」のアノマリーが今回はどうなるのか注目したい。
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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

(2021年10月13日「研究員の眼」)

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