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コロナ禍での医療費減少-新型コロナの感染拡大は、受療行動にどのように影響したか?
保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 篠原 拓也
1――はじめに
そんななか8月末に、厚生労働省は、2020年度の概算医療費を公表した1。そこには、コロナ禍が医療に与えた影響が、医療費データとして、いくつかの点で表れている。
本稿では、その医療費データをもとに、コロナ禍の影響をみていくこととしたい2。
1 「令和2年度 医療費の動向」(厚生労働省, 令和3年8月31日)
2 本稿では、注記1の資料に掲載のデータを図示して、医療費の傾向を把握していくこととしたい。
2――年度ごとの医療費推移
最初に、概算医療費について、ポイントをおさえておく。概算医療費は、医療機関などを受診して病気やけがの治療にかかった医療費である国民医療費と、全く同じというわけではない。国民医療費のうち、労災保険や、患者が全額自己負担したケースを除いた金額を表すからだ。ただし、概算医療費は、国民医療費の約98%に相当するとされており、国民医療費の動向を概ね表しているといえる。
概算医療費は、医療費の動向を迅速に把握するために、毎月、医療機関からの診療報酬の請求(いわゆるレセプト)に基づいて、医療保険・公費負担医療分の医療費を、厚生労働省が集計・公表している。
2020年度に医療費が減少した理由として、コロナ禍が背景にあることがうかがえる。医療費への影響の仕方としては、大きく2つの経路が考えられる。1つは、医療機関でのコロナ感染を恐れて、軽症の患者が受診を控えたこと。これには、本来受診の必要がない人の過剰受診が適正化されたという側面もあっただろうが、本当は治療が必要な患者が受診を遅らせることで病状を悪化させるリスクもあったものとみられる。もう1つは、人々がコロナの感染対策として、石鹸での手洗いや、マスク着用などを徹底した結果、インフルエンザ等の他の感染症の拡大が防止できて、病気そのものが減少したこと、である。この減少は、日常の公衆衛生の対策の重要性を示すものといえる。
ただし、残念ながら、今回、厚生労働省から公表されたデータでは、そうした要因ごとに減少の内訳をみることはできない。今後、コロナ禍での医療減少要因の分析が進むことが望まれる。
3――2020年度医療費減少の特徴
3 東京での緊急事態宣言の期間は、1回目は2020年4月7日~5月25日、2回目は2021年1月7日~3月21日であった。
これは、コロナ禍で、症状が軽いケースほど受診をしなかったために受診日数が減り、症状が重いケースに受診が偏ったために、一日あたり医療費が増えたもの、と解することができる。
4――おわりに (私見)
また、コロナ禍はさておき、人口の高齢化は着実に進んでおり、医療費が増加トレンドにあることは疑う余地がない。今後、こうした諸要因が医療費にどのように結びつくのか、引き続き、ウォッチしていくことが必要と考えられる。

03-3512-1823
(2021年10月05日「基礎研レター」)
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