2021年09月17日

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1. はじめに

東京都心部Aクラスビル1の空室率は、テレワークの普及など先行き不透明感が広がるなか上昇が続いている。一方、成約賃料は、昨年の大幅下落を経て、概ね横這いで推移している。本稿では、東京都心部Aクラスビル市場の動向を概観、2025年までの賃料と空室率の予測を行う。
 
1 本稿ではAクラスビルとして三幸エステートの定義を用いる。三幸エステートでは、エリア(都心5区主要オフィス地区とその他オフィス集積地域)から延床面積(1万坪以上)、基準階床面積(300坪以上)、築年数(15年以内)および設備などのガイドラインを満たすビルからAクラスビルを選定している。また、基準階床面積が200坪以上でAクラスビル以外のビルなどからガイドラインに従いBクラスビルを、同100坪以上200坪未満のビルからCクラスビルを設定している。詳細は三幸エステート「オフィスレントデータ2021」を参照のこと。なお、オフィスレント・インデックスは月坪当りの共益費を除く成約賃料。

2. 東京都心Aクラスオフィス市場の現況

2. 東京都心Aクラスオフィス市場の現況

2-1. 空室率および賃料の動向
2020年4月の緊急事態宣言の発令以降、景気悪化やテレワークの普及など先行き不透明感が広がるなか、東京都心部Aクラスビルの空室率は上昇基調にあり、2021年第2四半期末は1.9%(前期比+0.1%)となった。ただし、高い競争力を有するAクラスビルは、賃料等を柔軟に調整することでテナント誘致が進む事例も見られ、空室率の上昇ペースは鈍化している。

Aクラスビルの成約賃料(オフィスレント・インデックス2)は、昨年の大幅下落を経て、2021年に入って概ね横ばいで推移しており、2021年第2四半期は35,332円/月・坪(前期比+0.1%、前年同期比▲9.1%)となった(図表-1)。
図表-1 都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
Bクラスビル及びCクラスビルでは、空室率の上昇と賃料の下落が進んでいる。2021年第2四半期の空室率は、Bクラスビルで4.0%(前年同期比+3.3%)、Cクラスビルで3.6%(前年同期比+2.5%)に上昇した(図表-2)。また、成約賃料についてはBクラスビルが20,250円(前年同期比▲7.5%)、Cクラスビルが16,838円(前年同期比▲12.8%)となった(図表-3、図表-4)。

賃料と空室率の関係を表した「賃料サイクル3」をみると、東京オフィス市場では2012年から2020年にかけて長期にわたり「空室率低下・賃料上昇」の局面が継続していたが、「空室率上昇・賃料下落」の局面に移行している(図表-5)。
図表-2 東京都心部の空室率/図表-3 東京都心部の成約賃料
図表-4 東京都心部の成約賃料(前年同期比)/図表-5 東京都心部Aクラスビルの循環図
 
2 三幸エステートとニッセイ基礎研究所が共同で開発した成約賃料に基づくオフィスマーケット指標。
3 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2. オフィス市場の需給動向
三幸エステートによると、2021年上期の東京都心Aクラスビルの「賃貸可能面積」は、225.9万坪となり前期比+1.9万坪増加した。テナントによる「賃貸面積」も、221.6 万坪(前期比+1.2万坪)に拡大したが、「賃貸可能面積」の増加には及ばず、「空室面積」」は4.3 万坪(前期比+0.7万坪)となった。(図表-6、図表-7)。
図表-6 東京都心Aクラスビルの賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
図表-7 東京都心Aクラスビルの賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積の増減
2-3. 「オフィスワーカー数」・「在宅勤務」・「サードプレイスオフィス」の動向から、今後のオフィス需要を考える
新型コロナウィルス感染拡大を受けて、東京オフィス市場は、2008年の「リーマン・ショック」時以来となる調整局面に突入した。以下では、今後のオフィス需要を見通すうえで重要となる「オフィスワーカー数の動向」、コロナ禍で急速に普及した「在宅勤務の状況」、近年の東京都心部のオフィス需要を牽引していた「サードプレイスオフィスの動向」を概観し、オフィス需要への影響を考察する。
(1) オフィスワーカー数の動向
内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「関東地方」の「従業員数判断BSI」(全産業)4は、2020年第1四半期の+20.3から2020年第2四半期の+4.6へ大きく低下した後、緩やかに回復しており、2021年第2四半期は+9.0となった(図表-8)。新型コロナウィルス感染拡大によって雇用環境は厳しい状況にあるが、「従業員数判断BSI」は人手不足を表わすプラス圏を維持している。業種別にみると、「製造業」は、2020年第2四半期に▲5.6(前期+9.3)へ低下して以来、マイナス圏で推移していたが、足もとではプラスに浮上した(2021年第2四半期+2.3)。「非製造業」は、2020年第2四半期に+9.4(前期+25.8)へ低下した後は概ね横ばいで推移しており、2021年第2四半期は+12.3となった。オフィスワーカーの割合の高い「非製造業」は、総じて人手不足感が強いと言える。
図表-8 従業員数判断BSI(関東地方)
次に、東京都の就業者数(対前年同期比)の動向を確認する。総務省「労働力調査」によれば、2020年第1四半期(▲0.2万人)から3期連続でマイナスとなり、2020年第4四半期(+23.5万人)にプラスに転じたものの、2021年第2四半期(▲10.0万人)は、緊急事態宣言や新卒採用抑制の影響等を受けて、再びマイナスとなった(図表-9)。産業別の就業者数(2021年第2四半期)をみると、「情報通信業(+9.4万人)」が大きく増加した一方で、「学術研究、専門・技術サービス業(▲4.9万人)」、「製造業(▲4.9万人)」、「金融業、保険業(▲3.7万人)」など幅広い産業で減少した。

コロナ禍においても「人手不足」の状況が継続しており、東京都心部のオフィスワーカー数が大幅に減少する懸念は小さい。しかし、実際の東京都の就業者数(総数)は増えておらず、「学術研究、専門・技術サービス業」や「金融業、保険業」等、オフィスワーカーの比率の高い産業で就業者が減少しており、引き続き雇用情勢を注視する必要があろう。
図表-9 東京都の就業者数(対前年同期比)
 
4 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。
 (2) 在宅勤務の普及
新型コロナウィルス感染拡大への対応で、東京では「在宅勤務」が急速に普及している。東京都によれば、都内企業のテレワーク実施率は年初と比べて高まっており、8月調査では65%となった(図表-10)。

「在宅勤務」の定着によりオフィス出社率が低下するなか、企業にとって「オフィス戦略の見直し」は重要な経営課題となっている。ザイマックス不動産総合研究所「働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査(2021年7月)」によれば、ワークプレイス戦略の見直しを着手済みの企業は約3割で、今後予定をしている企業を含めると、6 割以上の企業がワークプレイスを見直すとしている。

「情報通信業」や製造業の一部の企業では、オフィス戦略を見直し、移転や解約などによりオフィス床面積を削減する方針を発表している5。ヤフーは、在宅勤務を広く認め11月までに東京都内のオフィスを約4割縮小する方針である。また、富士通は、在宅勤務を原則した働き方にシフトし、オフィススペースを2023年までに現状の半分まで縮小する方針を発表している。
図表-10 都内企業のテレワーク実施率
「在宅勤務」を併用し、オフィス面積の見直しを行う際には、オフィス出社率(オフィスと在宅での勤務割合)の設定がカギとなる。

ザイマックス不動産総合研究所の調査によれば、コロナ禍収束後に想定する出社率について、「50%未満」との回答は25%で、業種別では「情報通信業(38%)」や「学術研究、専門・技術サービス業(37%)」の数値が高い(出社率が低い)結果となった(図表-11)。また、「100%(完全出社)」との回答は16%で、業種別では「建設業(31%)」や「金融業、保険業(24%)」の数値が高い(出社率が高い)。
図表-11 コロナ危機収束後の出社率の将来意向
ところで、管理職や営業職等、対面でのコミュニケーションを必要とする職種では、在宅勤務は非効率で生産性が低下するとの指摘がある。パーソルファシリティマネジメントの「在宅ワーク経験者対象 今後のワークスタイルに関する意識調査」によれば、「これからのオフィスに求めるもの」として、「気軽に質問・相談できる場」との回答が5割、「新しい知恵・知見を得る場」との回答が4割を占めた(図表-12)。「在宅勤務」を実際に経験することで、「従業員がコミュニケーションを図り共創する場」としてのオフィスの重要性が再認識されている。

今後、「在宅勤務」と「オフィス勤務」を最適に組み合わせた「オフィス戦略の再構築」が本格化することが予想され、オフィス需要への影響を注視したい。
図表-12 これからのオフィスにもとめるもの
 
5 佐久間 誠『成約事例で見る東京都心部のオフィス市場動向(2021年上期)-「オフィス拡張移転DI」の動向』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年9月10 日
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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