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- ユーロ圏消費者物価(8月)-約10年ぶりに3%まで上昇
2021年09月01日
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1.結果の概要:総合もコアも大幅加速
8月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)は8月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
【総合指数】
・前年同月比は+3.0%、市場予想1(+2.7%)を上回り、前月(+2.2%)から加速(図表1)
・前月比は+0.4%、予想(+0.2%)を上回り、前月(▲0.1%)から増加
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2】
・前年同月比は+1.6%、予想(+1.5%)を上回り、前月(+0.7%)から加速(図表2)
・前月比は+0.3%、前月(▲0.4%)から増加
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
2.結果の詳細:大幅加速には一時的要因も寄与
8月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で+3.0%となり、前月(+2.2%)から大幅に加速、2011年11月(3.0%)以来の高い伸び率を記録した。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」も+1.6%と前月(+0.7%)から加速、2012年7月(1.7%)以来の伸び率だった3。
以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。
まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」は6月1.2%→7月0.7%→8月2.7%となり大幅に加速した。「サービス」は6月0.7%→7月0.9%→8月1.1%と加速したが、加速幅は財の上昇率と比較して小幅だった(前掲図表2)。ただし、外食・宿泊の伸び率が6月0.6%→7月1.7%(8月は速報時点では未公表)となるなど、コロナ禍の影響を受けた業種において低インフレを脱する兆しも見られる。
コア以外の部分では「エネルギー」が8月は前年同月比15.4%と、5か月連続の2桁増となり、コロナ禍後のピークを更新した。ベース効果によるインフレ率の押し上げは軽減されているが、足もとのエネルギー価格の上昇が伸び率を押し上げた。前年同期比寄与度は、約1.42%ポイントと見られ、エネルギー価格が全体の伸び率をけん引している(前掲図表1・2)。
「飲食料(アルコール含む)」は、8月は前年同月比で+2.0%(7月+1.5%)となった(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は+1.7%(7月+1.5%)、未加工食品は+2.9%(6月+1.9%)だった。
以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。
まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」は6月1.2%→7月0.7%→8月2.7%となり大幅に加速した。「サービス」は6月0.7%→7月0.9%→8月1.1%と加速したが、加速幅は財の上昇率と比較して小幅だった(前掲図表2)。ただし、外食・宿泊の伸び率が6月0.6%→7月1.7%(8月は速報時点では未公表)となるなど、コロナ禍の影響を受けた業種において低インフレを脱する兆しも見られる。
コア以外の部分では「エネルギー」が8月は前年同月比15.4%と、5か月連続の2桁増となり、コロナ禍後のピークを更新した。ベース効果によるインフレ率の押し上げは軽減されているが、足もとのエネルギー価格の上昇が伸び率を押し上げた。前年同期比寄与度は、約1.42%ポイントと見られ、エネルギー価格が全体の伸び率をけん引している(前掲図表1・2)。
「飲食料(アルコール含む)」は、8月は前年同月比で+2.0%(7月+1.5%)となった(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は+1.7%(7月+1.5%)、未加工食品は+2.9%(6月+1.9%)だった。
国別のHICP上昇率を見ると、8月は前年同月比伸び率で見て19か国中17か国が7月から加速、特に、昨夏の値引きシーズン後倒しが見られた国では加速幅が大きくなっている(図表5・6)。
3 総合・コアのいずれも当時はラトビアとリトアニアがユーロ未導入。ただし19か国ベースでも17か国ベースと同じ伸び率だった。
3 総合・コアのいずれも当時はラトビアとリトアニアがユーロ未導入。ただし19か国ベースでも17か国ベースと同じ伸び率だった。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年09月01日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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