- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融市場・外国為替(通貨・相場) >
- 貸出・マネタリー統計(21年7月)~資金需要の鈍化が鮮明に、都銀の貸出は2カ月連続で前年割れ
2021年08月11日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.貸出動向:都銀の貸出は2カ月連続で前年割れ
このため、業態別に見た場合には、大企業向け貸出の多い都銀の伸び率が前年比-1.42%(前月は-1.61%)と前月に続いて前年割れとなっている。他方、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比2.29%(前月は2.86%)と、比較対象となる前年に伸び率が大きく高まった反動で低下こそしているものの、依然プラス圏を維持している(図表2)。
なお、コロナ流行前である2019年同月との比較では、銀行貸出残高が7.0%増、既述の通り前年割れとなっている都銀の貸出も6.4%増と高止まりしている。借り手企業からすればその分だけ借入金残高とその返済負担が膨らんでいることになり、コロナ禍が企業財務に及ぼしてきた影響の大きさがうかがわれる。
なお、コロナ流行前である2019年同月との比較では、銀行貸出残高が7.0%増、既述の通り前年割れとなっている都銀の貸出も6.4%増と高止まりしている。借り手企業からすればその分だけ借入金残高とその返済負担が膨らんでいることになり、コロナ禍が企業財務に及ぼしてきた影響の大きさがうかがわれる。
(主要銀行貸出動向アンケート調査)
日銀が7月19日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2021年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は▲11と前回(21年1-3月期)の9から大きく低下し、2四半期ぶりにマイナス圏(「(やや)減少」とする先が優勢)へと落ち込んだ(図表5)。
企業規模別では、大企業向けが▲11(前回は▲2)、中小企業向けが▲12(前回は10)とともに低下し、マイナスとなったが、特に中小企業向けの低下が著しい(図表6)。また、需要が「(やや)減少した」と答えた先にその要因を尋ねた問いにおいて、大企業向けでは「資金繰りの好転」とポジティブな理由を挙げた先が最多となった一方、中小企業向けでは「設備投資の減少」というネガティブな理由を挙げた先が最多であった。
なお、中小企業向けの資金需要判断D.I.を業種別に見た場合1、飲食・宿泊などの対面サービス業が含まれる「その他非製造業」でD.I.の低下が顕著になっている。4-6月期は首都圏などで緊急事態宣言が再発令されたことで、対面サービス業を営む中小企業では厳しい資金繰りが続いたとみられる。こうした時期には、手元資金を確保する動きが強まって資金需要が高まることが多いが、今回は実質無利子・無担保融資(民間金融機関分)終了前の1-3月期に発生した駆け込み需要の反動が出た可能性がある。
一方、個人向け資金需要判断D.I.は4と前回(7)から小幅な低下に留まり、依然としてプラス圏(「(やや)増加」が優勢)を維持した(図表5)。内訳では、住宅ローンのD.I.が6(前回は8)とやや低下したが、消費者ローンのD.I.が4(前回は▲1)へと上昇し、下支えとなった。緊急事態宣言再発令は重荷になったとみられるが、「個人消費の拡大」を消費者ローンの需要増加理由に挙げる先が多かった。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が▲1、個人向けD.I.が1と、ともに4-6月期の状況から小動きに留まるとの見立てになっている(図表5)。ただし、コロナの感染動向や緊急事態宣言の行方など景気の先行き不透明感は強く、資金需要の先行きもその影響を受ける。
日銀が7月19日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2021年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は▲11と前回(21年1-3月期)の9から大きく低下し、2四半期ぶりにマイナス圏(「(やや)減少」とする先が優勢)へと落ち込んだ(図表5)。
企業規模別では、大企業向けが▲11(前回は▲2)、中小企業向けが▲12(前回は10)とともに低下し、マイナスとなったが、特に中小企業向けの低下が著しい(図表6)。また、需要が「(やや)減少した」と答えた先にその要因を尋ねた問いにおいて、大企業向けでは「資金繰りの好転」とポジティブな理由を挙げた先が最多となった一方、中小企業向けでは「設備投資の減少」というネガティブな理由を挙げた先が最多であった。
なお、中小企業向けの資金需要判断D.I.を業種別に見た場合1、飲食・宿泊などの対面サービス業が含まれる「その他非製造業」でD.I.の低下が顕著になっている。4-6月期は首都圏などで緊急事態宣言が再発令されたことで、対面サービス業を営む中小企業では厳しい資金繰りが続いたとみられる。こうした時期には、手元資金を確保する動きが強まって資金需要が高まることが多いが、今回は実質無利子・無担保融資(民間金融機関分)終了前の1-3月期に発生した駆け込み需要の反動が出た可能性がある。
一方、個人向け資金需要判断D.I.は4と前回(7)から小幅な低下に留まり、依然としてプラス圏(「(やや)増加」が優勢)を維持した(図表5)。内訳では、住宅ローンのD.I.が6(前回は8)とやや低下したが、消費者ローンのD.I.が4(前回は▲1)へと上昇し、下支えとなった。緊急事態宣言再発令は重荷になったとみられるが、「個人消費の拡大」を消費者ローンの需要増加理由に挙げる先が多かった。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が▲1、個人向けD.I.が1と、ともに4-6月期の状況から小動きに留まるとの見立てになっている(図表5)。ただし、コロナの感染動向や緊急事態宣言の行方など景気の先行き不透明感は強く、資金需要の先行きもその影響を受ける。
1 区分は、「製造業」、「建設・不動産業」、「金融・保険業」、「その他非製造業」の4つ
2.マネタリーベース:日銀による資金供給鈍化が鮮明化
8月3日に発表された7月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの伸び率(平残)は前年比15.4%と、前月(同19.1%)を下回り、3カ月連続で伸びが鈍化した(図表7)。
鈍化の主因はマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金である。日銀当座預金の減少要因となる政府による国債(国庫短期証券を含む)発行額が前年同月よりも縮小すると同時に、日銀による各種資金供給も国庫短期証券買入れを中心に軒並み縮小されたことから、増加額が縮小している(図表7・8)。さらに、前年比での比較対象となる昨年7月の伸びが大きかったことも、日銀当座預金の前年比での伸び率押し下げに働いた。
鈍化の主因はマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金である。日銀当座預金の減少要因となる政府による国債(国庫短期証券を含む)発行額が前年同月よりも縮小すると同時に、日銀による各種資金供給も国庫短期証券買入れを中心に軒並み縮小されたことから、増加額が縮小している(図表7・8)。さらに、前年比での比較対象となる昨年7月の伸びが大きかったことも、日銀当座預金の前年比での伸び率押し下げに働いた。
その他の内訳では、日銀券発行高の伸び率が昨年7月の伸び率上昇の反動もあって前年比2.8%(前月は同3.5%)と低下する一方、貨幣流通高は前年比1.8%(前月は同2.0%)と安定した推移を維持している(図表7)。
なお、7月末時点のマネタリーベース残高は661兆円と前月末比1.3兆円増加した。ただし、季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)でみると、前月比3.5兆円減と2カ月連続で明確な減少となっており、日銀による資金供給鈍化が鮮明化してきている(図表10)。
日銀はETFや国債の買入れを減額するなど市場への関与を減らしつつあるうえ、今後もしばらく比較対象となる昨年同月のマネタリーベース伸び率の上昇が続くことから、マネタリーベースの伸び率には低下圧力がかかり続けるだろう。
なお、7月末時点のマネタリーベース残高は661兆円と前月末比1.3兆円増加した。ただし、季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)でみると、前月比3.5兆円減と2カ月連続で明確な減少となっており、日銀による資金供給鈍化が鮮明化してきている(図表10)。
日銀はETFや国債の買入れを減額するなど市場への関与を減らしつつあるうえ、今後もしばらく比較対象となる昨年同月のマネタリーベース伸び率の上昇が続くことから、マネタリーベースの伸び率には低下圧力がかかり続けるだろう。
3.マネーストック:実態としても鈍化傾向
8月11日に発表された7月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比5.22%(前月は5.84%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同4.61%(前月は5.15%)と、ともに5カ月連続で低下した(図表11)。
M3の内訳では、主軸である普通預金等の預金通貨(前月9.2%→当月8.7%)のほか、現金通貨(前月3.8%→当月3.3%)、CD(譲渡性預金・前月37.4%→当月29.3%)の伸び率が軒並み低下した(図表12)。比較対象となる昨年7月にそれぞれ伸び率が大きく上昇した反動が出ている。なお、定期預金などの準通貨(前月▲2.4%→当月▲2.6%)の伸びは引き続きマイナス2%台での推移が続いている。
M3の内訳では、主軸である普通預金等の預金通貨(前月9.2%→当月8.7%)のほか、現金通貨(前月3.8%→当月3.3%)、CD(譲渡性預金・前月37.4%→当月29.3%)の伸び率が軒並み低下した(図表12)。比較対象となる昨年7月にそれぞれ伸び率が大きく上昇した反動が出ている。なお、定期預金などの準通貨(前月▲2.4%→当月▲2.6%)の伸びは引き続きマイナス2%台での推移が続いている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年08月11日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/19 | 日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/07 | 長期金利の上昇は続くのか?~16年ぶり1.5%到達後の金利見通し | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/02/18 | 関税と日銀利上げの思惑で揺れる円相場、次の展開は?~マーケット・カルテ3月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
2025/02/12 | 貸出・マネタリー統計(25年1月)~定期預金の伸び率が14年半ぶりの高水準に、地銀の貸出が勢いを増す | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年03月19日
日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 -
2025年03月19日
孤独・孤立対策の推進で必要な手立ては?-自治体は既存の資源や仕組みの活用を、多様な場づくりに向けて民間の役割も重要に -
2025年03月19日
マンションと大規模修繕(6)-中古マンション購入時には修繕・管理情報の確認・理解が大切に -
2025年03月19日
貿易統計25年2月-関税引き上げ前の駆け込みもあり、貿易収支(季節調整値)が黒字に -
2025年03月19日
米住宅着工・許可件数(25年2月)-着工件数(前月比)は悪天候から回復し、前月から大幅増加、市場予想も上回る
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【貸出・マネタリー統計(21年7月)~資金需要の鈍化が鮮明に、都銀の貸出は2カ月連続で前年割れ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
貸出・マネタリー統計(21年7月)~資金需要の鈍化が鮮明に、都銀の貸出は2カ月連続で前年割れのレポート Topへ