2021年08月02日

米個人所得・消費支出(21年6月)-対面型サービス消費主導で個人消費支出は前月から大幅に増加

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、消費支出ともに前月から増加に転じたほか、市場予想も上回る

7月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は6月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.1%(前月改定値:▲2.2%)と▲2.0%から下方修正された前月からプラスに転じたほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の▲0.3%も上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+1.0%(前月改定値:▲0.1%)と横這いから下方修正された前月からプラスに転じたほか、市場予想(+0.7%)も上回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.5%(前月改定値:▲0.6%)と▲0.4%から下方修正された前月からプラスに転じたほか、市場予想(+0.3%)も上回った(図表5)。貯蓄率1は9.4%(前月:10.3%)と、前月から▲0.9%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.5%(前月改定値:+0.5%)と+0.4%から上方修正された前月に一致、市場予想(+0.6%)は下回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.4%(前月:+0.5%)と前月、市場予想(+0.6%)を下回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+4.0%(前月改定値:+4.0%)と+3.9%から上方修正された前月、市場予想(+4.0%)に一致した。コア指数は+3.5%(前月:+3.4%)と前月を上回った一方、市場予想(+3.7%)は下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:サービス消費主導で個人消費が前月比で大幅に増加

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人所得は直接給付の大宗が3月までに支給された反動で、4月から5月にかけて前月比で減少したものの、これらの影響が剥落してきた結果、6月は小幅ながら3ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表1)。

一方、6月の個人消費は経済活動の再開に伴いサービス消費主導で前月から大幅に回復した。この結果、貯蓄率は前月から低下した。もっとも、貯蓄率は新型コロナ流行前の7%台からは依然高止まりしており、消費余力を十分に有している。個人消費は消費の主力がこれまでの財からサービス消費にシフトする形で今後も堅調が見込まれる。ワクチン未接種者を中心にデルタ株の感染拡大がみられており、感染対策として今後経済活動が再制限される場合にはサービス消費の回復に影響がでるため、感染動向が注目される。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数がFRBの物価目標(2%)を4ヵ月連続で上回ったほか、08年8月(+4.0%)以来の水準となった。また、物価の基調を示すコア指数も4ヵ月連続で物価目標を上回り、91年12月(+3.5%)以来の水準に上昇した。もっとも、コア指数は前月比で伸びが鈍化してきており、今後前年同月比でも低下に転じるとみられる。

3.所得動向:移転所得のマイナス幅は大幅に縮小

6月の個人所得(前月比)は、移転所得が▲2.0%(前月:▲11.9%)と3ヵ月連続のマイナスとなったものの、前月からマイナス幅は大幅に縮小した(図表2)。6月の移転所得は前月比年率▲836億ドル(前月:▲5,606億ドル)と前月からマイナス幅は大幅に縮小したが、米国救済計画に盛り込まれた家計向けの直接給付で6月の支給額が前月比で▲748億ドル(前月:▲5,594億ドル)となったことが大きい。移転所得以外では、自営業者所得が+1.1%(前月:+1.4%)と前月からは鈍化したものの、堅調な伸びを維持したほか、利息配当収入が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並み、賃金・給与が+0.8%(前月:+0.6%)と、こちらは前月から伸びが加速して所得を押し上げた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、6月の名目が横這い(前月:▲2.7%)となったほか、価格変動の影響を除いた実質ベースが▲0.5%(前月:▲3.2%)となり、前月から大幅にマイナス幅は縮小した。(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:対面型サービス消費の回復が顕著

6月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.5%(前月:▲2.1%)と前月からプラスに転じたほか、サービス消費は+1.2%(前月:+1.0%)と伸びが加速して全体を押し上げた(図表4)。

財消費では、耐久財が▲1.5%(前月:▲4.2%)とマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続でマイナスとなった一方、非耐久財が+1.8%(前月:▲0.8%)とプラスに転じて全体を押し上げた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲4.6%(前月:▲7.0%)、家具・家電が▲0.4%(前月:▲3.1%)と前月からマイナス幅が縮小したほか、娯楽財・スポーツカーが+0.4%(前月:▲3.1%)と前月からプラスに転じた。

非耐久財では、食料・飲料が+0.8%(前月:▲0.6%)、衣料・靴も+2.6%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じたほか、ガソリン・エネルギーが+5.0%(前月:+1.4%)、と伸びが加速した。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.6%(前月+0.7%)、医療サービスが+0.2%(前月:+0.3%)、金融サービスが+0.8%(前月:+1.0%)と前月から伸びが鈍化した一方、対面型サービス消費の外食・宿泊が+3.0%(前月:+3.3%)と前月から鈍化も堅調な伸びを維持したほか、娯楽が+2.2%(前月:+2.1%)、輸送が+4.8%(前月:+3.3%)と前月から伸びが加速して全体を押し上げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前年同月比でエネルギーが物価を大幅に押上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.5%(前月:横這い)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.3%)とこちらは5ヵ月連続でプラスとなった。前年同月比では、エネルギー価格指数が+24.2%(前月:+27.3%)と5ヵ月連続でプラスとなり、物価を大幅に押し上げた(図表7)。食料品価格指数は+0.9%(前月:+0.7%)と48ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年08月02日「経済・金融フラッシュ」)

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