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「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2021年)

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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1. はじめに
2. 札幌オフィス市場の現況
三幸エステートによると、札幌市の空室率(2021年6月時点)は3.3%(前年同月比+0.3%)となり、全国主要都市の中で最も低い水準となった(図表-1)。2020 年4月の緊急事態宣言の発令以降、多くの主要都市で、景気悪化やテレワーク普及などを受けて空室率がかなり上昇するなか、札幌市では、コールセンターやIT関連企業の新規開設・拡張ニーズに支えられ、空室率の上昇は小幅に留まった。
空室率をビルの規模1別にみると、「大規模2.0%(前年比+1.0%)」と「中型5.1%(同+0.7%)」が上昇した一方、「大型3.2%(同▲0.5%)」と「小型4.4%(同▲1.1%)」は低下した(図表-2)。
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→④空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
三鬼商事によれば、2020年末時点で最も賃貸可能面積の大きいエリアは「駅前東西地区(29.5%)」であり、次いで「駅前通・大通公園地区(28.0%)」、「創成川東・西11丁目近辺地区(15.3%)」、「南1条以南地区(14.5%)」、「北口地区(12.7%)」の順となっている(図表-8)。
賃貸可能面積は、築古物件の滅失等により「創成川東・西11丁目近辺地区」(前年比▲1.7千坪)で減少したが、新規供給のあった「駅前通・大通公園地区」(同+4.6千坪)等で増加し、札幌ビジネス地区全体で+4.1千坪の増加となった(図表-9)。
一方、テナントによる賃貸面積は、「駅前通・大通公園地区」(同+3.2千坪)で増加した一方、創成川東・西11丁目近辺地区」(前年比▲2.8千坪)等で減少し、全体で+0.1千坪となった。この結果、空室面積は、札幌ビジネス地区全体で+4.0千坪の増加となった。
3. 札幌オフィス市場の見通し
内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「企業の景況判断BSI3」(北海道財務支局)は、2020年第2四半期に「▲41.8」と一気に悪化した。翌第3四半期はプラスに回復したものの、その後は再び悪化し、2021年第2四半期は「▲2.6」となった(図表-13)。景況感の悪化幅は、全国平均と比べて、やや小さい傾向がみられる。
「従業員数判断BSI4」(北海道財務支局)は、人手不足を表わす「+36.1」(2020 年第1四半期)から「+12.3」(第2四半期)へ低下した。2021 年第2四半期は「+20」となり、全国平均(+9.0)を上回り、人手不足の状況が継続している(図表-14)。
札幌市「札幌市企業経営動向調査」によれば、テレワークを導入していると回答した割合は2018年度上期の6%から2020年度上期の24%へ大幅に増加した。業種別にみると、オフィスワーカー比率の高い「情報通信業」では77%に達している(図表-16)。
札幌におけるテレワーク実施率は東京や全国平均と比べて低いものの、コロナ禍を経て、情報通信業を中心に「在宅勤務」を導入する企業は増加しているようだ。今後とも「在宅勤務」と「オフィス勤務」を組み合わせた働き方が続くと予想され、オフィス需要への影響を注視する必要がある。
3 企業の景況感が前期と比較して「上昇」と回答した割合から「下降」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど景況感
が悪いことを示す。
4 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。
(2021年07月28日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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