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党派性が反映される米国のコロナ感染状況~ワクチン接種に消極的な共和党の地盤州で感染が拡大、引き続き米景気回復のリスクに
経済研究部 主任研究員 窪谷 浩
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米国の1日のコロナ新規感染者数(7日移動平均)は足元で2.8万人と年初の25万人からは大幅に減少しているものの、6月中旬に1万人台前半となっていた水準に比べて感染者数のリバウンドが明確になっている(図表1)。また、過去1ヵ月の新規感染者のうち、デルタ株の割合が57%となっており、足元のリバウンドは感染力の高いデルタ株の拡大による影響が大きいとみられる。米国で人口に対するワクチン接種が完了した人数の割合(ワクチン接種完了率)は48%超に上るものの、足元で頭打ち傾向となっている。実際に1日のワクチン接種回数は春先に340万回超まで加速したものの、足元では40万回程度に留まっており減速が鮮明だ。米疾病対策センター(CDC)は、コロナの入院患者の97%はワクチン未接種としており、ワクチン未接種者を中心に感染が拡大していることに警鐘を鳴らしている。
一方、ワクチン接種完了率には支持する政党による党派性がみられる。前述の上位下位州を20年に行われた大統領選挙結果で分けると、上位10州では9州でトランプ氏が勝利した共和党の地盤州となっている一方、下位10州では8州ではバイデン氏が勝利した民主党の地盤州となっており、民主党の地盤州でワクチン接種が進捗する一方、共和党の地盤州ではワクチン接種の進捗が捗々しくない状況が示されている。
一方、同財団が21年6月に実施したワクチン未接種の理由に関する調査では、共和党支持者の55%が「ワクチン接種をしたくない」と回答しており、民主党支持者の36%を大幅に上回った(図表4)。また、「政府を信用していない」と「ワクチンを必要としない」が47%、「ワクチンが安全でない」が46%と民主党支持者に比べて20%ポイント程度高くなっており、党派性を明確に示す結果となった。バイデン大統領はワクチン接種を積極的に推進しており、一部地域では接種者に高額の宝くじを配布するなどの施策を行ったものの、成果は限定的となっている。ワクチン接種に対する意識に党派性が強く反映されている状況を考えると、共和党支持者にワクチン接種を納得させることは至難の業だ。このため、デルタ株の感染拡大が懸念される中でも、ワクチン接種完了率が顕著に改善する可能性は低いだろう。
米国経済は全米規模で経済活動制限が緩和され経済正常化の過程にあるが、ワクチン接種が進捗せず、新規感染者数の増加が続けば、再び経済活動制限の厳格化に追い込まれかねず、景気回復に水が差される可能性も否定できない。引き続きコロナの感染動向は米景気回復のリスクとして燻ろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年07月19日「研究員の眼」)
03-3512-1824
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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