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「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2021年)
金融研究部 主任研究員 吉田 資
1. はじめに
2. 仙台オフィス市場の現況
全国主要都市のオフィスの空室率は、2020 年4月の緊急事態宣言の発令以降、いずれの都市も上昇傾向で推移している。
三幸エステートによると、仙台市の空室率(2021年6月時点)は5.9%となり、前年同月比+1.3%上昇した(図表-1)。
空室率をビルの規模1別にみると、「大規模4.4%(前年比+0.6%)」、「大型6.2%(同+2.3%)」、「中型7.9%(同+1.5%)」、「小型9.2%(同+1.1%)」となり全ての規模で上昇に転じた(図表-2)。景気悪化やテレワーク普及などを受けて、オフィス床の解約や、事業拠点の縮小および一部閉鎖を行う企業が増えており、規模を問わず空室が増加している。
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2020年末時点で「賃貸可能面積」が最も大きいエリアは、「駅前地区(35.9%)」で、次いで「一番町周辺地区(31.2%)」、「駅東地区(14.2%)」、「県庁・市役所周辺地区(13.2%)」の順となっている(図表-8)。
2020年は、新規供給のあった「駅前地区」(前年比+2.0千坪)と「一番町周辺地区」(同+0.5千坪)で賃貸可能面積が増加した(図表-9)。これに対して、テナントによる「賃貸面積」は、「駅東地区」(前年比+1.1千坪)で増加する一方、「駅前地区」(同▲2.8千坪)や「一番町周辺地区」(同▲1.2千坪)、「県庁・市役所周辺地区」(同▲0.7千坪)で減少した。この結果、空室面積は、仙台ビジネス地区全体で+6.3千坪の増加となった。
募集賃料は、仙台駅に近い「駅前地区」(前年比+0.7%)や「駅東地区」(同+2.8%)が上昇基調にあるのに対して、「一番町周辺地区」(同▲1.2%)や「県庁・市役所周辺地区」(同▲0.4%)、「周辺オフィス地区」(同▲1.7%)は弱含みで推移しており、エリア間で格差がみてとれる(図表-10右図)。
3. 仙台オフィス市場の見通し
内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「企業の景況判断BSI3」(東北財務支局)は、2020年第2四半期に「▲39」と一気に悪化した。翌第3四半期はプラスに回復したものの、その後は再び悪化し、2021年第2四半期は「▲9.4」となった(図表-13)。景況感の悪化幅は、全国平均と比べて、やや大きい傾向がみられる。
「従業員数判断BSI4」(東北財務支局)は、人手不足を表わす「+22.0」(2020 年第1四半期)から「+5.3」(第2四半期)へ大幅に低下した。2021 年第2四半期は「+7.2」とやや上昇したものの、全国平均(+9.0)を下回っており、本格的な回復には至っていない(図表-14)。
また、仙台市経済局・仙台商工会議所「仙台市地域経済動向調査報告」によれば「新型コロナウィルス感染症の影響」に関して、「影響がある」(「現在出ている」または「今後影響が出る懸念がある」)と回答した事業所が約8割に達したほか、「実施した対応策」として、「従業員の雇用調整」との回答が22%を占めた。
また、宮城県経済商工観光部雇用対策課「令和2年度 労働実態調査結果報告書」によれば、「テレワークの導入状況」について、「導入済み」との回答は24%で、オフィスワーカー比率の高い「情報通信業」では57%に達している(図表-16)。
仙台におけるテレワーク実施率は東京や全国平均と比べて低いものの、コロナ禍を経て、「在宅勤務」を導入する企業は増加しているようだ。今後とも「在宅勤務」と「オフィス勤務」を組み合わせた働き方が続くと予想され、オフィス需要への影響を注視する必要がある。
仙台市では、就業者数が昨年、僅かながら減少に転じた。また、生産年齢人口は今後も減少基調で推移する見通しである。さらに、コロナ禍が「雇用環境」に与えたダメージは全国平均と比べてやや大きく、「在宅勤務」の導入企業も増加している。以上のことを鑑みると、仙台市のオフィスワーカー数が大幅に増加する可能性は低いと考えられ、仙台のオフィス需要は強くないと言えそうだ。
3 企業の景況感が前期と比較して「上昇」と回答した割合から「下降」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど景況感
が悪いことを示す。
4 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。
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- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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