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2021年06月12日
1――2022年3月期は大幅増益見通し
1年前の決算発表時はコロナ禍による先行き不透明感が極めて強かったため、「影響を合理的に見通せない」として約6割の企業が21年3月期の業績見通しを「未定」とする異例の事態となった。
22年3月期は9割超の企業が純利益の見通しを公表した。国内で緊急事態宣言が繰り返し延長され、世界的にも変異株の懸念が払拭されずにいる中で、今期も期初予想を「未定」とする企業が相応に残ると予想していたが、蓋を開けてみればほぼ例年どおりの開示状況となった。この点からも経済が“正常化”しつつあることを感じる。
22年3月期は9割超の企業が純利益の見通しを公表した。国内で緊急事態宣言が繰り返し延長され、世界的にも変異株の懸念が払拭されずにいる中で、今期も期初予想を「未定」とする企業が相応に残ると予想していたが、蓋を開けてみればほぼ例年どおりの開示状況となった。この点からも経済が“正常化”しつつあることを感じる。
2――日経平均PERが機能再開
こうした動きを先取りするように日経平均株価は2月に一時3万円を回復したが、5月は概ね2万8,000円台で推移した。再び3万円超えは期待できるのだろうか。
株価の割高割安を分析する際にPER(株価収益率=株価÷純利益)を参考にすることが多い。日経平均のPERは15倍程度が標準とされ、14年1月~18年2月は日次の平均がちょうど15.0倍だった。図表2のとおり、PER14倍が株価の下値メド、16倍が上値メドとしてよく機能していた。
ところが18年3月に米トランプ政権が貿易摩擦を表面化させるとPERは機能しなくなった。トランプ前大統領は米中関係以外にもパウエルFRB議長の解任を示唆したり、中東情勢を変えようとするなど刺激的な行動が多かった。しかも、突如ツイッターに書き込む予測不能さもあって、投資家は気が休まらない日が続いた。多くの投資家が慎重姿勢に傾き、PERは14倍を割り込む状態が続いた。
株価の割高割安を分析する際にPER(株価収益率=株価÷純利益)を参考にすることが多い。日経平均のPERは15倍程度が標準とされ、14年1月~18年2月は日次の平均がちょうど15.0倍だった。図表2のとおり、PER14倍が株価の下値メド、16倍が上値メドとしてよく機能していた。
ところが18年3月に米トランプ政権が貿易摩擦を表面化させるとPERは機能しなくなった。トランプ前大統領は米中関係以外にもパウエルFRB議長の解任を示唆したり、中東情勢を変えようとするなど刺激的な行動が多かった。しかも、突如ツイッターに書き込む予測不能さもあって、投資家は気が休まらない日が続いた。多くの投資家が慎重姿勢に傾き、PERは14倍を割り込む状態が続いた。
20年3月、世界はコロナショックに見舞われた。ところが主要国の迅速かつ大規模な財政出動と金融緩和によって株価はV字回復。実体経済に先行して株価が上昇し、PERは16倍どころか一時25倍を超え、市場の一部でコロナバブルとの見方もあった。
21年2月に日経平均が一時3万円を回復した頃をピークにPERは低下傾向に転じた。当初は株価が2万8,000円台まで下落したことが主な背景だったが、上場企業の決算発表が本格化すると22年3月期の大幅増益予想が相次ぎ、PERは14倍近辺まで下がった。18年以降ずっと機能不全に陥っていたPERが“フェアウェイ”に戻った格好だ。
21年2月に日経平均が一時3万円を回復した頃をピークにPERは低下傾向に転じた。当初は株価が2万8,000円台まで下落したことが主な背景だったが、上場企業の決算発表が本格化すると22年3月期の大幅増益予想が相次ぎ、PERは14倍近辺まで下がった。18年以降ずっと機能不全に陥っていたPERが“フェアウェイ”に戻った格好だ。
3――ソフトバンクグループがカギを握る“実力3万円”
日経平均の寄与度が6%を超えるソフトバンクグループ(以下、SBG)は22年3月期の純利益予想を開示していない。このため日経平均のPER算出には暫定値として4兆5,000億円が適用されている。21年3月期実績の約5兆円から1割ほど少ないものの、アナリスト予想の平均値(約2兆円)の2倍以上というのは過大評価している(PERを低く見せている)可能性がある。
日経新聞が公表した5月31日時点のPERは13.9倍だが、SBGの純利益を2兆円と仮定すると15.2倍となる(図表4-①②)。つまり「実質的には15倍を超えており決して割安ではない」と考えれば、積極的な押し目買いが入らないのも頷ける。
もっとも現在の日経平均PERは多くの企業について期初予想をベースに算出されている。企業が発表する期初予想は保守的なことが多く、四半期決算のタイミングなどで上方修正されるのが“恒例行事”だ。
今年度はコロナ禍の影響が残っていることもあり、期初予想が例年以上に保守的だろう。つまり、今後かなりの確度で業績見通しが上方修正されると考えられる。そこで、仮にSBG以外の224社が業績予想を5%上方修正した場合を試算すると(図表4-③)、PERが標準的な水準の15倍でも3万円に少し届かない。
一方、現行PERに適用されている4.5兆円が仮に現実味を帯びると(図表4-①)、PER15倍で3万1,000円を超える。日経平均の割安度が増して実力で3万円を超えるかは、さしずめSBGの業績動向がカギを握りそうだ。
日経新聞が公表した5月31日時点のPERは13.9倍だが、SBGの純利益を2兆円と仮定すると15.2倍となる(図表4-①②)。つまり「実質的には15倍を超えており決して割安ではない」と考えれば、積極的な押し目買いが入らないのも頷ける。
もっとも現在の日経平均PERは多くの企業について期初予想をベースに算出されている。企業が発表する期初予想は保守的なことが多く、四半期決算のタイミングなどで上方修正されるのが“恒例行事”だ。
今年度はコロナ禍の影響が残っていることもあり、期初予想が例年以上に保守的だろう。つまり、今後かなりの確度で業績見通しが上方修正されると考えられる。そこで、仮にSBG以外の224社が業績予想を5%上方修正した場合を試算すると(図表4-③)、PERが標準的な水準の15倍でも3万円に少し届かない。
一方、現行PERに適用されている4.5兆円が仮に現実味を帯びると(図表4-①)、PER15倍で3万1,000円を超える。日経平均の割安度が増して実力で3万円を超えるかは、さしずめSBGの業績動向がカギを握りそうだ。
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本ファイナンス学会理事
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
(2021年06月12日「基礎研レポート」)
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