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- 日本株の見通し~年後半は調整必至か
2021年05月10日
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昨年11月以降の株価上昇の主な背景は、新型コロナウイルスのワクチン実用化・普及や米国の追加経済対策などによる世界的な景気回復への期待と、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中央銀行による未曾有の金融緩和の継続への期待だった。
いわば「景気V字回復+スーパー金融相場」という“2大エンジン”によって、日本株は約30年半ぶりの水準を一時回復した格好だ。そこで、今後の日本株市場を展望するために両エンジンの推進力がいつまでもつかを考察してみたい。
まず最初に、景気回復が株価に波及する経路として企業業績の見通しを確認すると、2022年3月期は41%の増益が見込まれている(純利益ベース、市場予想)。2020年度下期に回復基調を取り戻した製造業が54%増益の予想で当面の牽引役だが、度重なる緊急事態宣言などで業績の底入れが遅れた非製造業も増益に転じるとみられている。
もっとも、GW前後に上場企業が公表する業績見通しは保守的な内容である可能性が高く、市場予想ほどの改善が確認できないかもしれない。昨年度と同様、業績見通しを「未定」とする企業も一定程度は残るだろう。
それでも世界的に経済活動は正常化に向かっていること、保守的な期初予想は“恒例行事”となっていることを考えると、株式市場が極端にネガティブな反応を示すとは考えにくい。
いわば「景気V字回復+スーパー金融相場」という“2大エンジン”によって、日本株は約30年半ぶりの水準を一時回復した格好だ。そこで、今後の日本株市場を展望するために両エンジンの推進力がいつまでもつかを考察してみたい。
まず最初に、景気回復が株価に波及する経路として企業業績の見通しを確認すると、2022年3月期は41%の増益が見込まれている(純利益ベース、市場予想)。2020年度下期に回復基調を取り戻した製造業が54%増益の予想で当面の牽引役だが、度重なる緊急事態宣言などで業績の底入れが遅れた非製造業も増益に転じるとみられている。
もっとも、GW前後に上場企業が公表する業績見通しは保守的な内容である可能性が高く、市場予想ほどの改善が確認できないかもしれない。昨年度と同様、業績見通しを「未定」とする企業も一定程度は残るだろう。
それでも世界的に経済活動は正常化に向かっていること、保守的な期初予想は“恒例行事”となっていることを考えると、株式市場が極端にネガティブな反応を示すとは考えにくい。
むしろ株式投資家が警戒すべきは超緩和的な金融政策に対する市場の見方だろう。FRBは緩和継続姿勢を強調する一方で、3月のFOMCでは米国経済の成長率見通しを大幅に引き上げるとともに、パウエル議長が長期金利の上昇を容認するかのような発言をしている。
大手銀行の資本規制の基準を緩める特例措置を3月末で打ち切ったことも考え合わせると、「実体経済はしっかり支えるが金融バブルは抑制したい」という意図が見え隠れしているようだ。FRBは緩和縮小の前倒しへの“準備”を株式市場に促しているのかもしれない。
雇用統計やISM景況感指数など米国の主な経済指標は力強い内容が相次いでいるうえ、ワクチン接種の加速で米国景気の回復ペースが更に速まれば、株式市場は金利上昇や緩和縮小を意識せざるを得なくなるだろう。
また、主要国の景気回復がより確実になったとしても、コロナショックからの業績V字回復が今夏~秋に一巡すると、変化の先取りを常とする株式市場がファンダメンタルズの改善ペース鈍化をネガティブ材料として受け止め、市場心理の悪化に繋がる可能性がある。
TOPIXの12ヶ月先予想PERは、昨年後半以降17倍程度で推移してきた。過去5年間の平均14倍よりも高く、2月中旬には一時18倍を超えた。企業業績の改善が確実視されるとはいえ、大規模な財政政策や金融緩和などで株価(市場心理)が嵩上げされていた様子が見られる。
大手銀行の資本規制の基準を緩める特例措置を3月末で打ち切ったことも考え合わせると、「実体経済はしっかり支えるが金融バブルは抑制したい」という意図が見え隠れしているようだ。FRBは緩和縮小の前倒しへの“準備”を株式市場に促しているのかもしれない。
雇用統計やISM景況感指数など米国の主な経済指標は力強い内容が相次いでいるうえ、ワクチン接種の加速で米国景気の回復ペースが更に速まれば、株式市場は金利上昇や緩和縮小を意識せざるを得なくなるだろう。
また、主要国の景気回復がより確実になったとしても、コロナショックからの業績V字回復が今夏~秋に一巡すると、変化の先取りを常とする株式市場がファンダメンタルズの改善ペース鈍化をネガティブ材料として受け止め、市場心理の悪化に繋がる可能性がある。
TOPIXの12ヶ月先予想PERは、昨年後半以降17倍程度で推移してきた。過去5年間の平均14倍よりも高く、2月中旬には一時18倍を超えた。企業業績の改善が確実視されるとはいえ、大規模な財政政策や金融緩和などで株価(市場心理)が嵩上げされていた様子が見られる。
加えて、米中対立の再激化も想定しておく必要があろう。タイミングとしては7月の中国共産党100周年という特大イベント終了後が想定される。市場にとっては皮肉だが、この頃までには米国でワクチンの効果が確認され、バイデン政権は対中政策に注力しやすくなるはずだ。
この場合は金融緩和縮小への警戒が後退するはずだが、それでも市場心理が冷え込み現在17倍強のPERが仮に(5年平均より高い)15倍まで下がれば株価は約12%の下落を強いられる。日経平均に単純換算すると3,000円超の下落幅だ。21年の後半は特に注意が必要だろう。
この場合は金融緩和縮小への警戒が後退するはずだが、それでも市場心理が冷え込み現在17倍強のPERが仮に(5年平均より高い)15倍まで下がれば株価は約12%の下落を強いられる。日経平均に単純換算すると3,000円超の下落幅だ。21年の後半は特に注意が必要だろう。
(2021年05月10日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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