- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 経済予測・経済見通し >
- 2021・2022年度経済見通し(21年5月)
2021・2022年度経済見通し(21年5月)
経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
このレポートの関連カテゴリ
2. 実質成長率は2021年度3.3%、2022年度1.9%を予想
2020年の日本経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた自粛要請や緊急事態宣言の発令によって前半に急速に落ちこんだ後、緊急事態宣言の解除を受けた経済活動の再開によって後半は想定を上回るペースで急回復した。しかし、緊急事態宣言が再発令されたことを受けて、2021年1-3月期は再びマイナス成長となった。
2021年4-6月期は3度目の緊急事態宣言を受けて前期比0.2%(前期比年率0.9%)と大幅マイナス成長の後としては低成長にとどまることが予想される。民間消費は2021年1-3月期の前期比▲1.4%に続き、4-6月期も同▲0.2%と2四半期連続で減少するだろう。一方、2020年春とは異なり、民間消費以外の需要項目は緊急事態宣言の影響を受けにくくなっており、設備投資、輸出は増加することが見込まれる。また、ワクチン接種の進捗による押し上げなどから政府消費が高めの伸びとなることも成長率の押し上げ要因となる可能性が高い。
2021年7-9月期は緊急事態宣言の解除を前提として前期比年率5.2%の高成長になると予想する。行動制限が緩和されることにより、民間消費が前期比1.8%の高い伸びとなることが高成長の主因となる。ただし、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が断続的に発令され、消費が下振れるリスクは否定できない。

現時点では、実質GDPの水準がコロナ前(2019年10-12月期)を上回るのは2022年4-6月期、消費税率引き上げ前の直近のピーク(2019年7-9月期)に戻るのは2023年度と予想している。しかし、先行きの新型コロナウイルスの感染動向やそれに対応する公衆衛生上の措置を想定することは極めて困難である。これまでと同様の政策対応が続けば、経済の正常化はさらに遅れる可能性が高まるだろう。
雇用所得環境は依然として厳しい状況が続いているが、最悪期は脱しつつある。労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、2019年1月の1.64倍から2020年10月に1.04倍まで低下した後、2021年3月には1.10倍まで上昇した。また、失業率は2019年12月の2.2%から2020年10月には3.1%まで上昇したが、2021年3月には2.6%まで改善した。
雇用者数は前年比で減少が続いているが、対面型サービス業以外では持ち直しの動きが明確となっており、2021年度入り後は雇用者数全体も増加に転じる可能性が高い。一人当たり賃金は、2021年春闘の結果を受けて所定内給与が伸び悩むことに加え、企業収益の悪化が遅れて反映される特別給与は2021年度も減少することが見込まれる。一方、2020年度に大幅に減少した所定外給与は経済活動の持ち直しに伴う所定外労働時間の回復を反映し、増加に転じることが予想される。

家計の可処分所得は、一人当たり10万円の特別定額給付金の支給によって押し上げられていたが、その影響はすでに一巡している。内閣府の「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報(参考系列)」によれば、家計の可処分所得は2020年4-6月期が前年比11.6%、7-9月が同2.9%と雇用者報酬が減少する中でも大幅に増加した。しかし、特別定額給付金の支給は9月には支給がほぼ終了したことから、10-12月期の可処分所得は雇用者報酬の減少を主因として前年比▲1.9%と減少に転じた。
2021年1-3月期の設備投資は前期比▲1.4%の減少となったが、2020年10-12月期に同4.3%の高い伸びとなった反動もあり、基調としては持ち直しの動きが継続している。
日銀短観2021年3月調査では、2020年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)が2020年12月調査から▲2.6%下方修正され、前年度比▲5.7%となった。一方、2021年度の当初計画は前年度比2.4%となり、2020年度の当初計画(同1.3%)を上回った。
設備投資のうち、機械投資の一致指標である資本財総供給は、2020年10-12月期に前期比6.7%と5四半期ぶりの増加となった後、2021年1-3月期は緊急事態宣言下でも同4.2%と高い伸びが続いた。一方、建設投資の一致指標である建設工事出来高(民間非居住)は、オリンピック関連投資の一巡や、飲食の店舗減少や宿泊施設の減少などから減少傾向が続いている。
先行きについては、対面型サービス業の建設投資が引き続き下押し要因となるものの、機械投資やデジタル関連投資が増加することから、設備投資全体としては回復傾向が続くことが予想される。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2020年12月には10年3ヵ月ぶりに前年比で▲1%台のマイナスとなったが、「Go To トラベル事業」の停止、エネルギー価格の下落幅縮小を主因として、2021年3月には同▲0.1%まで下落率が縮小した。コアコアCPIは3ヵ月連続で上昇しており、経済活動の急激な落ち込みの割に物価の基調は弱くなっていない。
巣ごもり需要の高まりから、食料品、日用品、家電製品など財の消費は堅調なものが多いこと、自粛要請などにより需要が急激に落ち込んでいる外食などのサービスについては、通常の景気悪化時と異なり、値下げによる需要喚起が期待できないことがその背景にあると考えられる。

コアCPI上昇率は、2020年度の前年比▲0.4%の後、2021年度が同0.4%、2022年度が同0.5%と予想する。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
(2021年05月19日「Weekly エコノミスト・レター」)
ソーシャルメディア
新着記事
-
2022年05月27日
2022年4~5月の自社株買い動向~発行済株式総数に対する割合と株価の関係~ -
2022年05月27日
2022年度診療報酬改定を読み解く(下)-医療機能分化、急性期の重点化など提供体制改革を中心に -
2022年05月27日
中国経済の見通し-岐路に立つコロナ政策、22年は4.2%と予想も、下方リスクが燻ぶり、ポジティブ・サプライズもあり得て、目が離せない -
2022年05月26日
欧州大手保険Gの2021年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- -
2022年05月26日
Japan’s Economic Outlook for Fiscal 2022 and 2023 (May 2022)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2022年05月17日
News Release
-
2022年04月21日
News Release
-
2022年04月04日
News Release
【2021・2022年度経済見通し(21年5月)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2021・2022年度経済見通し(21年5月)のレポート Topへ