コラム
2021年05月12日

新型コロナ 祝日変更策の有効性-海外では、感染抑制のために連休を活用

保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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新型コロナは、イスラエル、イギリス、アメリカなどでワクチン接種が進み、感染がやや落ち着いてきた。ヨーロッパでは、ロックダウン(都市封鎖)を緩和する動きもみられる。一方、インドでは、感染力が強いとされる変異ウイルスが猛威を振るっており、感染者数や死亡者数の増加が止まらない。
 
世界では、死亡者数で、アメリカが57万人、ブラジルが42万人、インドが24万人、メキシコが21万人に達している。感染者数では、アメリカが3239万人、インドが2299万人、ブラジルが1518万人を超えている。

これまでに、世界全体で感染者数は1億5865万1638人、死亡者数は329万9764人。日本の感染者数は64万5817人、死亡者数は1万941人(横浜港に停留したクルーズ船を含まない)に達している。(5月11日19:09現在(CEST)/世界保健機関(WHO)の“WHO COVID-19 Dashboard”より)

日本では、4月25日に、東京、京都、大阪、兵庫の4都府県に発令された、3回目の緊急事態宣言が、5月12日に延長されて、適用地域が愛知と福岡にも拡大された。大型商業施設等への休業・営業時間短縮、飲食店への酒類の提供停止など、強力な対策を要請することで、人流を抑えて、感染を収束させようという狙いだ。ただ、イギリス型などの変異ウイルスの蔓延が進んでおり、重症患者数が増え続けて、病床逼迫が起こるなど、なお予断を許さない状況が続いている。

そうした中、海外ではコロナの感染拡大をコントロールするために、祝日を変更する動きがみられる。祝日を減らす国もあるが、むしろ増やして連休をつくることで、外出自粛を促そうとする国が多いという。いったいどういうことなのか、見ていくこととしたい。

◇ 休日を増やして外出自粛を促す狙い

当たり前のことだが、平日と休日では人々の行動は大きく異なる。コロナ禍で、テレワークの取り組みが進んだとはいえ、平日朝の通勤・通学ラッシュ時は、相変わらず電車の車内は混雑している。小売業や建設業など、出勤しないと仕事にならない業種も多いことが要因の1つと考えられる。

一方、休日は、人々の外出抑制の余地が大きい。昨年の緊急事態宣言期間中のように、不要不急の外出自粛が進めば、感染を抑止することが可能だ。ただし、今年の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間には、外出自粛があまり進んでおらず、感染抑止の効果が薄れているものとみられる。

また、休日にイベントや行楽を行うと、人々が集まって「密」が生じてしまう恐れもある。したがって、感染拡大防止のためにはイベント開催や行楽を制限することが条件となる。

では、感染封じ込めのために、平日を祝日(休日)に変えて、人々の外出自粛を強く促したらどうか? 実際に日本では、昨年の1回目の緊急事態宣言の期間中、平日の5月7日と8日を休暇とすることで、5連休(5月2日~6日)を9連休(5月2日~10日)に拡大して、出勤の機会を減らすよう、政府から経済界に提案されていた。(今年は、そうした話は聞かれなかった。)

ただ、このときは、東京五輪・パラリンピック特措法で規定する「国民の祝日に関する法律の特例」のような、法律に基づく祝日の変更までは行われなかった。一方、海外では、本当に祝日を変更してしまう動きがみられる。

◇ ブラジルでは5日分の祝日を“前借り”

ブラジルでは、同国で発生したとされる変異ウイルスが猛威を振るっており、新規感染者数、死亡者数とも高い水準が続いている。

サンパウロ市では3月18日、感染抑制のために市制休日を5日分前倒しする市政令が公布され、即日施行された。

これにより、3月26日(金)、29日(月)、30日(火)、31日(水)、4月1日(木)が祝日に変更された。もともと4月2日(金)は、祝日(キリストの受難日)のため、3月26日~4月4日(日)が10連休となった。

変更された5日分の祝日は、2021年6月3日(聖体祭)、2021年11月20日(黒人崇拝の日)、2022年1月25日(サンパウロ市政記念日)、2022年6月3日(聖体祭)、2022年11月20日(黒人崇拝の日)を前倒ししたものとされている。

来年の祝日まで“前借り”することにより、なんとか連休をつくり出して感染を封じ込めよう、という大胆な動きといえるだろう。ただ、ブラジルでは3月以降、新規感染者数が毎週40万人を超える状況が続いており、感染抑制の効果はなかなか見えてこない。

◇ ドイツは4月に5連休をつくろうとしたが…

ドイツはイギリスに比べてワクチン接種が遅れていることもあり、感染拡大が深刻化していた。

もともと4月は、2日(復活祭聖金曜日)、4日(復活祭)、5日(復活祭月曜日)が祝日だったが、1日(木)と3日(土)も祝日とすることで、4月1日~5日の期間を5連休にしようとする協議が、連邦政府と州政府の間で進められた。

この間、全土で公共空間での集会を原則禁止し、屋外飲食店も閉鎖すると発表していた。しかし、祝日の追加設定により、「経済活動の喪失は最大70億ユーロ(約9000億円)に上る」(ケルン経済研究所)、「緊急の生産ラインが停止し、大きな問題や相当なコストを引き起こす」(ドイツ機械工業連盟)、「連休前後に来店者が増えるため逆効果」(ドイツ小売業連盟)などの反対の声が上がった。

これを受けて、3月24日、メルケル首相は州政府首相との緊急協議を行い、祝日追加の法制化が時間的な面で困難であることも踏まえて、同措置を撤回し、国民に陳謝することとなった。

感染拡大防止のためとはいえ、新たな祝日を設定するという大技は、社会の影響範囲が広いため、幅広い合意を得るのに時間がかかることがうかがえる。ドイツでは、4月に襲来した第3波がやや落ち着いており、5月9日からワクチン接種者らを対象に夜間外出禁止などの行動制限が一部緩和されている。

◇ フランスは学校休暇期間をシフト

フランスでは、変異ウイルスの感染が相次ぎ、病床が逼迫するなど、医療への影響がみられた。4月には、一部地域で行っていたロックダウンを他の地域にも拡大する措置がとられた。

併せて、学校休暇期間の2週間シフト(後ろ倒し)を含めて、学校施設を3週間閉鎖することとした。

まず、4月5日からの1週間は、幼稚園から高校まで、すべてリモートラーニング中心とし、施設は閉鎖。12日~25日の2週間は、シフト後の復活祭休暇期間とした。続く26日から、幼稚園と小学校は対面授業に復帰して、5月3日から中学校と高校も対面授業に復帰している。

この間に、医療体制の整備とワクチンの接種を進めて、感染の封じ込めが図られた。フランスは、今年に入って地域間の旅行の禁止や、夜7時から朝6時までの外出禁止など他国に比べて緩めの措置にとどめてきた。4か月間も厳格なロックダウンを行ったドイツや、4回もロックダウンを繰り返したイタリアに比べると、市民に課された制約は緩かった。マクロン大統領は、「(フランスは)自由を確保しつつ、感染症をコントロールできた」と自賛している。

緩めの措置と学校休暇期間のシフトを併用することで、感染拡大防止のための時間を確保する戦略だったとみられる。フランスも第3波がピークを越えており、移動制限等の解除が進められている。

◇ インドネシアはラマダーン明けの休暇を短縮

インドネシアは、1月下旬に感染のピークを迎えたが、その後、新規感染者数や死亡者数が減少した。新たな感染の波の襲来に、備えるべき状況が続いている。

インドネシアは、ムスリム(イスラム教徒)の数が世界一多い。イスラム教では今年の4月13日~5月12日の1か月間はラマダーン(断食月)にあたる。この間、教徒は日の出前から日没まで飲食を断つこととされている。5月12日はイド・アル=フィトルと呼ばれるラマダーン終了を祝う祝日で、インドネシアではこの日から8日間が休暇期間とされていた。

ただ、このラマダーン明けの休暇には、人々が飲食を共にして感染拡大につながる恐れがあった。そこで、インドネシア政府は、この休暇期間を5日間に縮小することとした。

実は、同国では、これと同様の休暇縮小措置を年末年始にも行っている。昨年12月24~27日はクリスマスの祝日、28~31日は(前年の)イド・アル=フィトルの代替祝日、今年1月1~3日は新年祝日とされていて、年末年始に11連休が設定されていた。

しかし、休暇中の感染拡大を恐れて、12月28~30日の祝日を取り消し、連休を合計8日間の休暇に縮小した。連休を縮小することで感染拡大を抑止しようとする、イスラム教の国ならではの対応といえるだろう。

インドネシアは感染が収まりつつあったが、3月以降、新規感染者数は下げ止まっている。ラマダーン明けに感染が再拡大する懸念が高まっている。

◇ アメリカはフローティングホリデーの取得で対応

アメリカは、累計感染者や累計死亡者の数が世界最多となっている。ただ、ワクチン接種が進んだことにより、感染拡大はやや落ち着いている。

アメリカでは、連邦や州が祝日を設定している。公的な施設や金融機関は祝日に従って休業するが、一般の企業は休業するかどうか、企業次第とされている。新年の日やクリスマスの日は多くの企業が休業するが、コロンブスの日(10月の第2月曜日)などは休業しない企業が多い。

ただ、アメリカには「フローティングホリデー」という制度がある。従業員が祝日の振替としてとることのできる有給休暇だ。年始に企業から数日与えられ、従業員は自分の意思で自由に祝日をとることができる。

コロナ禍の中で、このフローティングホリデーを活用する動きが進められた。企業にもよるが、昨年夏以降、数日~10日程度のフローティングホリデーが追加付与される動きが広がった模様だ。

連休中、行楽地などで人混みが発生することを避けるという点では、個人ごとに祝日を設定してバラバラに休暇をとるという考え方は、有効なコロナ対策といえるかもしれない。
アメリカは、ワクチン接種の効果もあり、感染拡大に歯止めがかかってきた。現在は、変異ウイルスの蔓延に備えて、一部のワクチンの接種対象を12~15歳に引き下げるなど、感染封じ込めの動きが進められている。


以上、いくつかの国のコロナ対策としての祝日変更策をみてきた。日本では、今年のゴールデンウィークも昨年と同様、さまざまなイベントの開催が中止となった。遠方への旅行は控えて、自宅近辺で過ごした人が多かったものとみられる。

振り返ってみれば、昨年来、大型連休の時期に、行動の自粛が求められることが続いている。今回のゴールデンウィークに限らず、お盆や年末年始の時期にも、その都度、旅行や帰省等で一斉に移動したり、イベントに集まったりすることを自粛することが求められてきた。

こうしてみると、リモートワークで進む「働き方改革」とともに、祝日の設定をフレキシブルにして、個人ごとに自分の裁量で休暇をとる「休み方改革」にも、そろそろ本気で取り組むべき時期にきているように思われるが、いかがだろうか。
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保険研究部   主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

(2021年05月12日「研究員の眼」)

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