2021年04月30日

米GDP(21年1-3月期)-前期比年率+6.4%と前期(同+4.3%)から上昇、市場予想は下回る

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は個人消費主導で前期から上昇、市場予想は下回る

4月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は21年1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+6.4%(前期:+4.3%)と3期連続でプラスとなったほか、前期から上昇した(図表1・2)。もっとも、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+6.7%は下回った。この結果、1-3月期の実質GDPの水準は新型コロナ流行前(19年10-12月期)を僅か▲0.9%下回るまで回復した。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
1-3月期の成長率を需要項目別にみると、大型の追加経済対策の効果によって個人消費が前期比年率+10.7%(前期:+2.3%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、政府支出が+6.3%(前期:▲0.8%)と大幅なプラスに転じた(図表2)。また、民間設備投資が+9.9%(前期:+13.1%)、住宅投資が+10.8%(前期:+36.6%)と前期から低下したものの堅調な伸びを維持した。

一方、在庫投資の成長率寄与度が▲2.64%ポイント(前期:+1.37%ポイント)と前期からマイナスに転じたほか、外需の成長率寄与度も▲0.87ポイント(前期:▲1.53%ポイント)と、こちらも前期からマイナス幅は縮小したものの、2期連続でマイナスとなり、成長を押し下げた。

このように当期は民間設備投資や住宅投資が堅調な伸びを維持する中で、昨年末に決まった9,000億ドル規模に加え、今年3月に決まった1.9兆ドル規模の経済対策の実行に伴って家計向けの直接給付が個人消費を大幅に押し上げたほか、ワクチン接種プログラムの推進などに伴う政府支出の増加が成長を押し上げた。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)可処分所得の大幅な増加を背景に財消費が回復
1-3月期の個人消費は、サービス消費が前期比年率+4.6%(前期:+4.3%)と前期から小幅に伸びが加速した一方、財消費が+23.6%(前期:▲1.4%)と大幅なプラスに転じて個人消費全体を押し上げた(図表3)。財消費では、耐久財が+41.4%(前期:▲1.1%)、非耐久財が+14.4%(前期:▲1.6%)と前期のマイナスから大幅なプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+51.5%(前期:▲0.6%)、家具・家電が+45.3%(前期:▲5.4%)、娯楽・スポーツカーが+28.2%(前期:▲1.5%)と、軒並み前期のマイナスから大幅なプラスに転じた。

非耐久財は、衣料・靴が+33.8%(前期:+1.6%)と前期から伸びが加速したほか、食料・飲料が+15.2%(前期:▲2.5%)、ガソリン・エネルギーが+10.5%(前期:▲8.4%)と前期のマイナスからプラスに転じた。

サービス消費は、医療サービスが+2.7%(前期:+14.3%)、金融サービスが+3.2%(前期:+5.6%)と前期から伸びが鈍化した。一方、住宅・公共料金が+1.2%(前期:+0.6%)、娯楽サービスが+25.9%(前期:+9.9%)と前期から伸びが加速したほか、輸送サービスが+18.4%(前期:▲3.3%)、飲食・宿泊サービスが+25.8%(前期:▲7.1%)と前期のマイナスから大幅なプラスに転じるなど、マチマチの動きとなった。

実質可処分所得は前期比年率+67.0%(前期:▲8.8%)と前期のマイナスから1950年以降で最大の伸びとなった(図表4)。これは経済対策に伴う家計向けの直接給付で1人当たり最大2,000ドル支給された影響が大きい。

一方、可処分所得が大幅に増加したこともあって、貯蓄率は21.0%(前期:13.0%)と前期から+8.0%ポイント上昇した。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)設備機器投資が堅調も前期から伸びは鈍化
1-3月期の民間設備投資の内訳は知的財産投資が前期比年率+10.1%(前期:+10.5%)と前期並みの伸びを維持した一方、設備機器投資が+16.7%(前期:+25.4%)と高い伸びを維持したものの、前期から伸びが鈍化したほか、建設投資が▲4.8%(前期:▲6.2%)と19年10-12月期以来6期連続のマイナス成長となった(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、資源関連が+60.3%(前期:+87.0%)と高い伸びを維持した一方、商業・医療が▲13.1%(前期:▲8.8%)、製造業が▲0.7%(前期:▲25.3%)、電力・通信が▲10.3%(前期:▲13.4%)と前期に続きマイナスとなった。

設備機器投資は、情報処理関連が+34.4%(前期:+13.0%)と前期から伸び加速した一方、産業機器が+5.7%(前期:+24.5%)、輸送機器が+16.0%(前期:+74.0%)と前期から伸びが鈍化した。

知的財産投資では、娯楽・文学等が+1.6%(前期:+9.0%)、研究・開発が+5.1%(前期:+11.2%)と前期から伸びが鈍化した一方、ソフトウエアが+18.1%(前期:+9.9%)と前期から伸びが加速するなど、マチマチの結果となった。

最後に住宅投資は、戸建てが前期比年率+30.6%(前期:+89.1%)、集合住宅が+4.1%(前期:+17.7%)といずれも前期から伸びが鈍化した。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)連邦政府の非国防支出が大幅に増加
1-3月期の政府支出の内訳は、連邦政府が前期比年率+13.9%(前期:▲0.9%)、州・地方政府が+1.7%(前期:▲0.8%)といずれも前期のマイナスからプラスに転じた(図表6)。とくに、連邦政府支出は20年4-6月期(同+16.5%)以来の伸びとなった。

連邦政府支出では、国防関連支出が▲3.4%(前期:+4.8%)と4期ぶりにマイナスに転じた一方、非国防支出が+44.8%(前期:▲8.9%)と大幅な増加に転じて全体を押し上げた。
(貿易)輸出が減少に転じた一方、輸入は増加が持続
1-3月期の輸出入は輸出が前期比年率▲1.1%(前期:+22.3%)と前期からマイナスに転じる一方、輸入が+5.7%(前期:+29.8%)と前期から伸びは鈍化したもののプラスを維持した。当期は外需の成長率寄与度がマイナスとなったが、輸出の減少と輸入の増加ともに貿易赤字の拡大に寄与した。

輸出を仔細にみると、財輸出が前期比年率▲0.9%(前期:+31.1%)、サービス輸出が▲1.5%(前期:+5.2%)といずれも前期からマイナスに転じた(図表7)。

財輸出では、資本財(自動車関連除く)が+15.2%(前期:+28.9%)、工業用原料が+5.1%(前期:+36.1%)と前期から伸びが鈍化したほか、食料・飲料が▲32.0%(前期:+30.8%)、自動車関連が▲11.1%(前期:+18.7%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲2.9%(前期:+39.2%)と、いずれも前期からマイナスに転じて全体を押し下げた。

サービス輸出では、輸送が+3.2%(前期:+75.3%)、旅行が+27.8%(前期:+88.9%)となった。

一方、輸入は、財輸入が+5.5%(前期:+31.0%)、サービス輸入が+6.5%(前期:+23.8%)と前期から伸びが鈍化したもののプラスを維持した(図表8)。

財輸入では、自動車関連が▲26.1%(前期:+61.5%)と前期からマイナスに転じたほか、食料・飲料が+1.8%(前期:+8.0%)、工業用原料が+3.5%(前期:+30.7%)、資本財(自動車関連除く)が+18.7%(前期:+25.2%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+22.5%(前期:+29.8%)といずれも前期から伸びが鈍化した。

サービス輸入は、輸送が+5.8%(前期:+84.6%)、旅行が+47.3%(前期:+610.9%)とプラスを維持したものの、前期に大幅な伸びとなった反動もあって、伸びは鈍化した。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期比、前年同期比ともに上昇
1-3月期のGDP価格指数は前期比年率+4.1%(前期:+2.0%)と前期から上昇したほか、市場予想(同+2.6%)も上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+10.7%(前期:+6.3%)となった(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+3.5%、前年同期比+1.7%(前期:+1.5%、+1.2%)と前期比、前年同期比ともに前期から上昇した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+2.3%、前年同期比+1.5%(前期:+1.3%、+1.4%)と、こちらも前期比、前年同期比ともに前期から上昇する結果となった。

もっとも、PCE価格指数、コア指数ともに前年同期比はFRBが物価目標としている2%を下回る状況が続いている。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2021年04月30日「経済・金融フラッシュ」)

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