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- ECB政策理事会-政策の変更なし、景気の見方も変わらず
2021年04月23日
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(財政政策・構造政策)
(質疑応答(趣旨))
- 財政政策に関しては、野心的かつ協調した財政政策が重要であり、拙速な財政支援の縮小は回復の遅延と傷痕効果(scarring effects)を助長するリスクがある
- 各国政府の財政政策は、引き続き、コロナ禍や関連する封じ込め政策による影響を最も受けている企業や家計に、重点的かつ迅速に実施すべきである
- 同時に、コロナ禍対応としての財政政策は、脆弱性に効果的に対応し、ユーロ圏経済の迅速な回復を支援する観点から、可能な限り一時的かつ対象を絞る必要がある
- 欧州理事会の労働者・企業・国家のための3つの安全網は重要な資金調達支援となる
- 理事会は、「次世代EU」基金の主要な役割を認識しており、遅延なく実行することの重要性を強調する
- 加盟国には、独自財源決定(Own Resources Decision)の円滑な批准、回復・強靭化計画の迅速な策定、基金を生産性向上の構造政策が伴う生産的な公共支出に使用することを要求する
- これにより「次世代EU」は、より迅速な、より強く、より均一な回復に貢献し、加盟国経済の強靭さと潜在成長率を高め、域内の金融政策の実効性を支えるだろう
- こうした構造政策は特に、長期の構造的・制度的な脆弱性に対処し、グリーンやデジタルへの移行を加速させるために重要である
(質疑応答(趣旨))
- クノット氏(オランダ中銀総裁)とホルツマン氏(オーストリア中銀総裁)が7-9月期以降のPEPPの購入ペース減速を検討するよう提案していると聞いたが、見通しは十分に回復していると考えているのか、またこれについて理事会で議論されたか
- 一方では、ワクチン接種による改善が見られるが、もう一方では感染は続いているため、特定業種への影響も残っている。変異株という潜在的なリスクもあり、短期的な見通しを取り巻く状況は総じて不確実と言える。
- リスクに対する評価は3月と同様で、短期的には下方にあるが、中期的にはより中立である
- 最新データやインフレ率について3月時点の予測と整合的と言える
- ここ数週間ユーロが1.20ドルを上回る程度に上昇しているが、資金調達環境の引き締めを防ぐという観点から理事会で取り上げられたか
- 為替レートは目標ではないが、インフレ率の下振れ圧力となる要因になるため、注視している
- 為替レートは目標ではないが、インフレ率の下振れ圧力となる要因になるため、注視している
- この四半期のPEPPの購入ペースを加速させているが、実際の評価はどうか。資金調達環境は理事会の求めるような良好さになっているか
- 経済状況の評価は概ね同じであることから、購入ペースの大幅な加速は今後も続くものと見られる
- 見通し作成時点で行う包括的な評価ではないが、中間的な評価としては、年初の2か月より大幅な購入ペースの加速を続ける必要があると信じさせるものとなっている
- 「次世代EU」を遅延なく実施することの重要性を強調しているが、仮に大幅に遅延したり、各国政府の財政支援縮小が早く行われたりすれば、ECBは金融緩和を長期化させるということになるのか
- 金融政策と財政政策は互いに補完しあっているが、代替できるものではない
- 仮に遅延や克服できない障害があったとしても、代替するという問題にはならない。それぞれの責務に照らしてそれぞれの領域で補完しあうものである
- 先ほどのPEPPの7-9月期の購入ペースの減速に関連して、ECBとしては何があれば購入ペースを戻すのか。3月時点の見通しと整合的な状況が分かれば良いのか、見通しの上方修正や制限措置の緩和が必要か。
- まず、今回の理事会では、PEPPの段階的減速は時期尚早であり、議論していない
- PEPPの購入ペースに関わる決定は、日付に基づくものではなく、データに基づいて行われる
- 購入ペースは資金調達環境とインフレ見通しという2つの複雑に絡み合った要素によって決定する
- 銀行貸出調査では、これまでの3四半期の厳格化に加え、今後の厳格化見込みが示されている。これは悪い証拠とあるか、ECBはこれに対して何をするか。
- 銀行貸出調査の将来の見方として、厳格化はされているが、過去2四半期と比較すれば緩やかになっており、将来的に企業からの需要が減少するとの見方もあると解釈している
- また、TLTROは貸出業務支援として非常に重要な役割を果たしていると銀行が実際に回答している点も取り上げたい
- 良好な資金調達環境を維持する目的で実施しているPEPPに関連して、現在の名目・実質の利回りに満足しているか
- 川上から川下までの資金調達環境は、総じて安定しているように見られる。我々の測定値にも反映されている
- 債券利回りの名目か実質かだけでなく、上下変動の要因を理解しようとしているが、総じて債券利回りや企業・家計に対する金利は安定していると見ている
- PEPPに関連してよく、償還が週次のデータに影響すると注意しているが、どのような影響があるのか詳細に教えて欲しい。特定の地域や年限を見つけるのに苦労しているということか
- まず、週次の数値は妥当なデータとは言えないということを再度喚起しておきたい。月次のデータの方が傾向やペースをより理解することができる。
- 我々はネットの購入額という、より妥当な数値を公表し、その数値も見ている。適切に比較する必要があるが、この数値でも購入額の大幅な増加が示されていることを信じて欲しい。そして、今後も続けるつもりだ
- カナダ銀行(中央銀行)は、景気回復が進展しているとして次の月曜から国債購入を減額することというサプライズな声明を出したが、こうした事例は理事会の議論では近い将来に追従する例として議論されたか
- 国債購入の減額については議論していない
- 世界中の中央銀行が何をしているかは定期的に見ている
- カナダ、日本、FRB,イングランド銀行を含むすべての銀行は結束しており、何がなされ、なぜなされたかを評価している
- フェミニストで、女性役員、環境保護論者としてのあなたに質問したい。40代前半のトランポリンの元チャンピオンで、統治経験はないものの、緑の党の女性がメルケル首相の後継争いに指名されました。このベアボック氏が欧州最大の経済大国のリーダーになり得る可能性があるというニュースをどう考えるか。
- スポーツ競技は、それが何であっても、競争精神、打たれ強さ、卓越したいという欲求が身に着けられるが、政界も同様であり、ベアボック氏にもあてはまったものと見られる。
- 政界で才能を認められるためには、白髪である必要はないという教訓にもなっている。
- 私の関心事項である気候問題や環境保護に関心を持つアスリート、若い女性をとても歓迎している。
- さらに、メルケル首相が若い女性の政界進出を思いとどまらせていないことも示している。これはドイツを16年間率いてきた女性の大きな贈り物であり、ロールモデルとしての価値がある。
- すべての情報が3月の評価と整合的であるということは、4-6月期の成長率が1.3%となるという見通しを支持しているということか
- 特定の四半期については具体的な数値を述べるつもりはなく、次回6月の見通しで提供されるだろう
- 全体として、ECBスタッフは現在の経済状況と今後の見通しが3月時点での見通しの方向性と一致している、との見解である
- それは、1-3月期の成長率がマイナスになるかもしれない一方で、4-6月期はプラスの結果となるだろう点の確認でもある
- 次の経済見通しがどうなればECBの6月に決定する7-9月期の購入ペースが通常に戻るのか
- 12月に購入量を、一定ペースではなく良好な資金調達環境を維持することを目標に行うことを決定している
- 通常の購入ペースというものはない
- カナダ銀行は楽観的で22年の後半までには弛み(slack)が解消されると見ていると聞いている。ユーロ圏にも見通しがあるか
- 現時点での評価では、ユーロ圏経済は22年後半には平均的に見てコロナ禍前の水準に戻ると見られている
- 平均的にと言っている点で注意しているのは、乖離があるためで不均一であると見られる
- また、コロナ禍前でも多少の弛み(slack)があり、コロナ禍前に戻ることがすべての弛みが解消されることを意味しない
- ドイツではマイナス金利の費用を個人顧客に転嫁する銀行が増加している。特に2.5万ユーロ以下の預金でさえそうなっており、人々を動揺させていることを理解しているか。マイナス金利の必要性を再度説明して欲しい
- 経験に基づけばマイナス金利は金融緩和として効果的な道具であり続けている。
- 貯蓄をしている人々がマイナス金利の結果、手数料を徴収されることを好ましく思っていないことは完全に認める
- 我々は経済全体を見なければならず、マイナス金利は企業・家族・家計・若い夫婦が投資やアパート購入や、設備の購入のために低金利で借入することを促進している
- 家計には、貯蓄者と借り手がおり、トレードオフがある。我々はユーロ圏経済の全体を見て責務の達成をする必要がある
- 戦略見直しの結果が共有される時期はいつか。理事会は、より対称的な目標の導入や通貨分析の柱を撤廃する選択肢などについて議論したか。
- 21年の秋に戦略を伝えることができると思う
- これは我々が設定した日程で、これより前に新しい戦略についての結論が下せれば、あなたや欧州議会やその他の責務を負うすべての人々に提示されるだろう
- 我々は複数の選択肢、提案、見解、推奨を検討しているが、すべての選択肢を残しておくために最終的な結論となる所には達していない
- すべてが検討され、最終結論に達するまでは公表しないことを約束したい
- 明示的なイールドカーブコントロールについて、完全に取り上げる余地はないのか、スペイン中銀総裁が提案したように議論する価値はないのか。
- 戦略見直しという点では、複数の選択肢や提案を検討している
- 6週間ごとの定例の金融政策の決定という点では、12月に決定されたイールドカーブコントロールではなく、良好な資金調達環境を維持するというコミットメントに沿っている
- 南欧の観光について、今年はどれだけ守られるのか。南欧の観光の状況が悪い場合、ユーロ圏の見通しにはどの程度影響があるのか。
- ワクチン普及に依存すると見られる。ワクチン普及が加速することを期待しており、人口の高い割合がワクチン接種を受けることができれば、それは好材料であり、20年のように夏が完全に失われることはないかもしれない
- ワクチン普及に依存すると見られる。ワクチン普及が加速することを期待しており、人口の高い割合がワクチン接種を受けることができれば、それは好材料であり、20年のように夏が完全に失われることはないかもしれない
- 政府債務に関連して、政府が負債を安全にどれだけ保有できるのか、には議論がある。例えば、マーストリヒト条約の目標である60%を大幅に上回るような多額の債務を将来にわたって安全に保有することができると考えているか
- 第二次世界大戦後の最悪の危機に対応するためには、債務を増やさなければならず、60%の閾値を超えるべきかについて疑問をはさむ余地はなかった
- 本当の問題は、債務がこれからどのように使われるかである
- 冒頭述べた通り、財政支出は対象を絞り一時的で、コロナ禍からの架け橋になっているか、また潜在成長率を改善させるような生産性の向上改革に使われているかを問う必要がある
- 対象を絞り一時的かつ生産性向上の結果として生まれる成長に対して、資金調達環境が魅力的であれば有効に利用される負債と言えるが、明らかにこれらは財政当局と政府により記述されるべきで、安定成長協定の条件を再定義することは、欧州委員会や欧州理事会により検討される問題であり、ECBが決めるものではない
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年04月23日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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