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IMF世界経済見通し-全体は上方修正、回復力は国により差
経済研究部 主任研究員 高山 武士
1.内容の概要:21年、22年ともに上方修正
2.内容の詳細:国によって回復力に差
世界経済成長率は、21年の見通しを0.5%ポイント、22年の見通しを0.2%ポイント上方修正している。その理由としては、米国をはじめとした一部大国での追加財政出動と年後半以降のワクチン普及による景気回復への期待がある。また、その後は恒久的な供給力低下の影響や、高齢化に伴う労働力伸び率の低下、中国の安定成長への移行などにより、中期的な成長率は3.3%程度になるとしている。その結果、2024年時点の世界GDPの水準は、コロナ禍前の20年1月時点で想定されていたよりも3%弱小さくなるとしている。
実際、実質GDPの水準がコロナ禍前(2019年)を超える年は、データが公表されている195か国でばらつきが見られる(図表3)。主要国では、中国がすでに20年にコロナ禍前を回復、米国やインド・ロシアは今年のコロナ禍前回復が見込まれており相対的に回復が早いと言える。一方で、英国やイタリアはコロナ禍前の水準を回復する時期は2023年以降と予想されており、回復は遅い。総じて、欧州地域では20年の落ち込みが深く回復力も弱い予想となっている(図表4)。
全般的な不確実性は「感染の動向」であるとして、ワクチン接種が進めば経済も回復すると見られるが、変異株に対するワクチンの有効性には不確実性があり、接種の遅れがワクチン耐性の変異株を発生させる可能性もあると指摘する。
具体的な下振れリスクとしては、「感染の再拡大(ワクチン耐性の変異株、ワクチン生産の遅れを含む)」「金融市場の不安定化(長期金利上昇やインフレ圧力の要因含む)」「後遺症(scarring)の長期化」「社会不安の高まり」「自然災害の頻発」「地政学・貿易・技術的リスク(米中対立など)」を挙げている。
一方、上振れリスクとしては、「ワクチン生産・普及の加速」「想定以上の財政出動効果」「国際協調政策(ワクチン接種の協調など)」を挙げている。
金属価格は米国の財政政策を背景に、中国やその他先進国で製造業が急回復したことで上昇しており、一部金属では電気自動車の需要増といった上昇要因が指摘されている。
食料品価格も、大豆において米国や南米の収穫量が少なく、中国で需要が増加したこと(アフリカ豚熱後の需要増など)、小麦において米国冬小麦地帯での寒波やEUの収穫量が少なかったことや備蓄需要の高まったことを受けて上昇したと指摘する。
この他、IMFでは食料安全保障の観点からの分析がされており、特に低所得国では所得の減少や食料価格の上昇が栄養不足人口を増加させる点に触れ、政府が食料価格上昇への安全網の強化することへの重要性などを指摘している。
1 同日に同じ題名でブログを公表している。ワクチン接種や新しい働き方への適応、米国などでの追加財政支援によって見通しが改善している一方、ワクチン普及の遅さ、政策支援の小ささ、観光依存度の大きさなどで回復が順調に進まず、各国間や国内での回復の差が開きつつあることに言及している。また生活水準格差として、先進国と新興国、低所得国の間に所得格差が生じていることや、国内における若年労働者や低技能労働者、女性への被害の大きさにも触れている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年04月07日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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