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- コロナ禍1年の仕事の変化-約4分の1で収入減少、収入補填と自由時間の増加で副業・兼業も
2021年04月20日
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1――はじめに~コロナ禍1年で就業者48万人減少、失業者29万人増加、職業や収入などの変化は?

労働市場に目を向けると、近年は人手不足を背景に労働力人口や就業者数は増加傾向を、非労働力人口や失業者数は減少傾向を示していたが、コロナ禍が直撃した2020年は、いずれの変化も逆の方向へ転じている(図表1)。
就業者数の減少は、産業別には宿泊・飲食、娯楽などのサービス業で、雇用形態別にはパート・アルバイトなどの非正規雇用者で目立つ2。つまり、コロナ禍で苦境に立たされた業種や立場の弱い労働者で雇い止めなどの影響が生じている。
本稿では、コロナ前との職業や勤め先、収入の変化、副業・兼業の状況など、より具体的な状況について、ニッセイ基礎研究所の「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査3」を用いて捉えていく。
1 久我尚子「コロナ禍の家計消費の推移」ニッセイ基礎研究所、基礎研REPORT(冊子版)2021年1月号[など
2 15歳以上の労働力人口について2020年と2019年を比べると、宿泊・飲食サービス業は420万人→391万人(▲29万人:減少率は▲6.9%)、生活関係サービス・娯楽業は242万人→235万人(▲7万人:▲2.9%)、複合サービス事業は54万人→51万人(▲3万人:▲5.6%)。雇用形態別には正規雇用者は3,494万人→3,529万人(+35万人:+1.0%)の一方、非正規雇用者は2,165万人→2,090万人(▲75万人:▲3.5%)、うちパート・アルバイトは1,519万人→1,473万人(▲46万人:▲3.5%)。
3 調査時期は2021年3月26~29日、調査対象は全国に住む20~69歳の男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,070。
2――コロナ禍1年の職業や勤め先の変化~約1割で変化、非正規や自営業、飲食業などで転職・失業も

20~60歳代の男女社会人に対して、新型コロナウイルスの感染が拡大する前(2020年1月頃)と比べた現在(2021年3月)の職業や勤め先の状況について尋ねたところ、全体では「変わっていない」(90.5%)が圧倒的に多い(図表2)。
一方で変化のあった9.5%のうち、最も多いのは「コロナ禍の影響ではないが、転職した」(3.2%)、次いで「コロナ禍の影響ではないが、退職・失業した」(2.4%)、「コロナ禍の影響で、転職した」(2.3%)、「コロナ禍の影響で、退職・失業した」(1.6%)と続く。つまり、コロナ禍の影響で仕事が変わったのは3.9%である。
2|属性別の状況~経営者・管理職や高年収層は変わらず、非正規や低年収層、飲食業などでやや変化
属性別に見ると、「変わっていない」との回答は、(現在の)職業別には経営者・役員(全体より+9.5%pt)や正社員・正職員(管理職以上)(+8.4%pt)で、業種別には運輸業・郵便業(+6.3%pt)で、個人年収別には1,000万円以上で(+9.5%pt)で、世帯年収別には1,000万円~1,200万円未満(+9.5%pt)や1500万円以上(+9.5%pt)で多い(図表3)。なお、個人年収や世帯年収は高いほど多い。つまり、就業上の地位が高い層や高年収層のほか、ネット通販の利用が増えるなどコロナ禍で需要の増した運輸業従事者では、コロナ前と仕事はほぼ変わっていない。
一方、「コロナ禍の影響ではないが、転職した」は、職業別には嘱託・派遣・契約社員(+8.5%pt)で、業種別には複合サービス事業(+9.3%pt)で、「コロナ禍の影響ではないが、退職・失業した」は、職業別には無職(+8.4%pt)で多い。
また、「コロナ禍の影響で、転職した」は、性年代別には女性20代(+5.0%pt)で、「コロナ禍の影響で、退職・失業した」は、地域別には四国地方(+5.2%pt)で多い4。なお、より細かく見ると、「コロナ禍の影響で、転職した」は、職業別にはパート・アルバイト(+3.7%pt)で、業種別には飲食サービス業(+3.5%pt)や教育・学習支援業(+4.9%pt)で、「コロナ禍の影響で、退職・失業した」は、職業別には自営業・自由業(+3.1%pt)や無職(+4.4%pt)で、世帯年収別には世帯年収200万円未満(+4.0%pt)でやや多い。つまり、パート・アルバイトや自営業など不安定な労働環境にある層や、飲食業などコロナ禍で苦境に立たされた業種の従事者では、1年前と仕事が変わった者が比較的多い。ただし、これらの層でも8割以上はコロナ前と仕事は変わっていない。
属性別に見ると、「変わっていない」との回答は、(現在の)職業別には経営者・役員(全体より+9.5%pt)や正社員・正職員(管理職以上)(+8.4%pt)で、業種別には運輸業・郵便業(+6.3%pt)で、個人年収別には1,000万円以上で(+9.5%pt)で、世帯年収別には1,000万円~1,200万円未満(+9.5%pt)や1500万円以上(+9.5%pt)で多い(図表3)。なお、個人年収や世帯年収は高いほど多い。つまり、就業上の地位が高い層や高年収層のほか、ネット通販の利用が増えるなどコロナ禍で需要の増した運輸業従事者では、コロナ前と仕事はほぼ変わっていない。
一方、「コロナ禍の影響ではないが、転職した」は、職業別には嘱託・派遣・契約社員(+8.5%pt)で、業種別には複合サービス事業(+9.3%pt)で、「コロナ禍の影響ではないが、退職・失業した」は、職業別には無職(+8.4%pt)で多い。
また、「コロナ禍の影響で、転職した」は、性年代別には女性20代(+5.0%pt)で、「コロナ禍の影響で、退職・失業した」は、地域別には四国地方(+5.2%pt)で多い4。なお、より細かく見ると、「コロナ禍の影響で、転職した」は、職業別にはパート・アルバイト(+3.7%pt)で、業種別には飲食サービス業(+3.5%pt)や教育・学習支援業(+4.9%pt)で、「コロナ禍の影響で、退職・失業した」は、職業別には自営業・自由業(+3.1%pt)や無職(+4.4%pt)で、世帯年収別には世帯年収200万円未満(+4.0%pt)でやや多い。つまり、パート・アルバイトや自営業など不安定な労働環境にある層や、飲食業などコロナ禍で苦境に立たされた業種の従事者では、1年前と仕事が変わった者が比較的多い。ただし、これらの層でも8割以上はコロナ前と仕事は変わっていない。
4 女性20代で「コロナ禍の影響で、転職した」者にはパート・アルバイトが多い傾向がある。また、四国地方で「コロナ禍の影響で、退職・失業した」者は無職、専業主婦・主夫から成る。ただし、いずれも参考値。
3――コロナ禍1年の収入の変化~約4分の1が収入減少、自営業や非正規、サービス業で多い
2|属性別の状況~自営業の約半数や非正規の約3割、サービス業の4割前後で収入減少
属性別に見ると、「変わらない」は、性年代別には女性60歳代(+11.6%pt)で、職業別には公務員(一般)(+5.2%pt)や専業主婦・主夫(+15.8%pt)で、業種別には医療・福祉(+8.5%pt)で、世帯年収別には1,000万円~1,200万円未満(+7.3%pt)で多い(図表5)。なお、女性60歳代で就労収入が「変わらない」者には専業主婦が多い5。
つまり、専業主婦層や雇用の安定している公務員、コロナ禍で需要の増した(あるいは需要が変わらない)医療や福祉関連の従事者では、コロナ前と就労収入が変わらない者が比較的多い。
減少層は、性年代別には男性40歳代・50歳代(+6.3%pt、+8.7%pt)、職業別には嘱託・派遣・契約社員(+6.5%pt)やパート・アルバイト(+5.4%pt)、自営業・自由業(+24.1%pt)で、業種別には運輸・郵便業(+14.3%pt)や飲食サービス業(+15.6%pt)、生活関連サービス業(+17.4%pt)、複合サービス事業(+5.2%pt)で多い。なお、男性40~50歳代で就労収入が減少した者には自営業・自由業が多い6。また、運輸・郵便業従事者で就労収入が減少した者にはパート・アルバイトが多い7。
つまり、自営業や非正規雇用者など不安定な労働環境にある層や、飲食をはじめとした対面型サービス業などコロナ禍で苦境に立たされた業種の従事者では、1年前より就労収入が減少した者が比較的多い。なお、自営業では実に約半数(1割以上減少は約4分の1)が、非正規雇用者では約3割が、サービス業従事者では4割前後がコロナ禍で就労収入が減少しており、深刻な状況がうかがえる。
一方、増加層は、性年代別には男性20歳代・30歳代(+8.2%pt、+5.8%pt)で、職業別には公務員(一般)(+5.3%pt)で、世帯年収1,500万円以上(+6.5%pt)8で多い。なお、男性20~30歳代で就労収入が増加した者には公務員(一般)が多い9。なお、公務員の給与等は前年の民間企業の水準をもとに決まるため、コロナ前の民間企業の水準が反映されている。
属性別に見ると、「変わらない」は、性年代別には女性60歳代(+11.6%pt)で、職業別には公務員(一般)(+5.2%pt)や専業主婦・主夫(+15.8%pt)で、業種別には医療・福祉(+8.5%pt)で、世帯年収別には1,000万円~1,200万円未満(+7.3%pt)で多い(図表5)。なお、女性60歳代で就労収入が「変わらない」者には専業主婦が多い5。
つまり、専業主婦層や雇用の安定している公務員、コロナ禍で需要の増した(あるいは需要が変わらない)医療や福祉関連の従事者では、コロナ前と就労収入が変わらない者が比較的多い。
減少層は、性年代別には男性40歳代・50歳代(+6.3%pt、+8.7%pt)、職業別には嘱託・派遣・契約社員(+6.5%pt)やパート・アルバイト(+5.4%pt)、自営業・自由業(+24.1%pt)で、業種別には運輸・郵便業(+14.3%pt)や飲食サービス業(+15.6%pt)、生活関連サービス業(+17.4%pt)、複合サービス事業(+5.2%pt)で多い。なお、男性40~50歳代で就労収入が減少した者には自営業・自由業が多い6。また、運輸・郵便業従事者で就労収入が減少した者にはパート・アルバイトが多い7。
つまり、自営業や非正規雇用者など不安定な労働環境にある層や、飲食をはじめとした対面型サービス業などコロナ禍で苦境に立たされた業種の従事者では、1年前より就労収入が減少した者が比較的多い。なお、自営業では実に約半数(1割以上減少は約4分の1)が、非正規雇用者では約3割が、サービス業従事者では4割前後がコロナ禍で就労収入が減少しており、深刻な状況がうかがえる。
一方、増加層は、性年代別には男性20歳代・30歳代(+8.2%pt、+5.8%pt)で、職業別には公務員(一般)(+5.3%pt)で、世帯年収1,500万円以上(+6.5%pt)8で多い。なお、男性20~30歳代で就労収入が増加した者には公務員(一般)が多い9。なお、公務員の給与等は前年の民間企業の水準をもとに決まるため、コロナ前の民間企業の水準が反映されている。
5 女性60歳代全体で専業主婦は55.6%に対して62.3%(+6.7%pt)
6 男性40~50歳代全体で自営業・自由業は15.2%に対して24.3%(+9.1%pt)
7 運輸・郵便業従事者全体でパート・アルバイトは29.7%に対して36.0%(+6.3%pt)
8 なお、世帯年収1,500万円以上で就労収入が増加した者には正社員・正職員(管理職)や正社員・正職員(一般)、公務員(一般)から成る(参考値)。
9 男性20~30歳代全体で公務員(一般)は8.5%に対して19.1%(+10.6%pt)
(2021年04月20日「基礎研レポート」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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