2021年01月12日

コロナ禍の家計消費の推移ー増えた巣ごもり消費と激減した外出型消費の現状は?

基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.286]

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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1―巣ごもり消費は6月がピーク、外出型消費は低水準ながら回復基調

新型コロナウイルスの感染拡大により外出行動が控えられることで、旅行やレジャー、外食、ファッションなどの外出型消費の需要が大幅に減る一方、食料やゲーム、パソコンなどの巣ごもり消費の需要が増している。
 
3月以降の推移を見ると、おおむね4・5月をピークに、6月以降は傾向が転じ、需要が増したものは増加率が下がり、需要が減ったものは回復基調を示すようになっている。

2―外食需要の中食シフト

新型コロナで変化した主な支出項目として、まず、食費について見ると、需要の減った外食の食事代や飲酒代は、4月を底に回復基調にある[図表1]。
食費の動向
ただし、食事代と比べて飲酒代の減少率は大きく、昼間と比べて夜間の外食の戻りは鈍いようだ。
 
なお、10月の食事代は前年同月と同水準まで戻っているようだが、昨年の10月は消費税率が10%へ引き上げられ、外食が控えられた月であった。
 
一方、巣ごもり生活で需要の増した出前やパスタ、即席麺、生鮮肉、チューハイ・カクテルなどはピーク時ほどではないが、高水準で推移している。
 
なお、図表1の出前は二人以上世帯のインターネットからの注文のみを見たものだが、ニッセイ基礎研究所の20~60歳代を対象にした調査によると、コロナ前よりテイクアウトやデリバリーの利用が増えているが、コロナ禍において一層伸びている[図表2]。
中食シフト
つまり、外食需要が中々回復しない中で、外食需要の一部が中食需要へシフトするとともに、中食需要自体も一層増しているようだ。
 
これは、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーに対応する飲食店が増え、消費者にとって選択肢が増え、サービスとしての魅力が増したことのほか、ビフォーコロナから共働き世帯や単身世帯といった利便性を重視する世帯が増加傾向にあることなどがあげられる。

3―移動手段のセルフシフト

次に交通費について見ると、いずれも回復基調にあるが利用控えの状況が続いており、回復にも温度差がある[図表3]。
 
タクシーなど短距離移動で、空間を共有する人数が少ない交通機関の回復基調が強い。
 
一方、自動車や自転車などのセルフ手段の購入は3月以降、前年より増えた月の方が多い(図表略)。また、先のニッセイ基礎研究所の調査によると、コロナ禍で公共交通機関の利用は減少する一方、セルフ手段の利用は増えており、公共交通機関の利用控えの一部がセルフ手段の利用へとシフトしているようだ。

4―マイクロツーリズムに回復基調、ゲームやパソコン等の巣ごもり需要増

教養娯楽費のうち、コロナ禍で需要の減った旅行について見ると、GoToトラベルキャンペーンの影響もあり回復基調にある[図表4]。
 
旅費
ただし、温度差があり、交通費を含むパック旅行費と比べて宿泊料単体の回復基調が強い。コロナ禍では、自家用車などを利用して近場へ出かけて宿泊施設のみを利用する「マイクロツーリズム」の回復に勢いがあるようだ。

一方、教養娯楽面で需要の増したパソコンやゲーム機の支出額の推移を見ると、複数のピークがある[図表5]。
 
パソコン・ゲーム機への支出
パソコンは、緊急事態宣言が発出された4・5月と7月にピークがある。在宅勤務によるテレワークの定着化が一層進む中で、国民1人当たり一律10万円の「特別定額給付金」の給付や夏の賞与もあり、比較的値の張る耐久消費財への需要が増したのだろう。なお、この時期は家具の支出額も増しており(一般家具は6月+82.1%、7月+130.7%)、在宅勤務環境を整えた消費者も増えたようだ。
 
ゲーム機は、全国一斉休校が要請された3月や学校等の夏休みのある8月にピークがあり、子どもの生活と連動している。この夏は感染が再拡大したため、帰省や旅行を自粛したことで、家の中で時間を持て余す子どもへゲームを買い与えた親も多かったのだろう。

5―テレワークの定着化やマスク着用でスーツや化粧品需要減

経済活動が再開され、徐々に消費者が外へ向かい始めたとはいえ、在宅勤務によるテレワークの定着化が進み、マスク着用が常態化することで、スーツやメイクアップ用品は夏頃に二番底を示している[図表6]。
スーツやメイクアップ用品への支出
ワクチンや特効薬が開発されたポストコロナにおいては、外出行動の再開によって、メイクアップ用品は回復していくだろうが、スーツは依然として厳しい状況が続くだろう。それは働き方が変わるためだ。在宅勤務等による柔軟な就労環境の整備は、そもそも「働き方改革」として進められてきたため、ポストコロナでも一層の定着化が見込まれる。

6―今後の個人消費~雇用環境の悪化による収入減少で消費控えの懸念、生活支援策の更なる拡充を

12月に海外で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まった。ワクチン接種が効果を発揮し、行動制限が緩和される日が、少しでも早く近づくことを期待したい。しかし、実際に日本でワクチン接種が普及するまでには、まだしばらくの時間がかかるだろう。よって、少なくとも2021年の上期までは現在のウィズコロナにおける行動変容の状況が続くと見られる。
 
引き続き企業活動が制限される中で、今後の個人消費で懸念されることは、雇用環境が一層悪化することで、収入が減少し、消費が控えられることだ。
 
家計の収入を見ると、2020年5月以降、二人以上勤労者世帯の実収入は給付金の影響で大幅に増えているが、6月以降、勤め先収入のおよそ8割を占める世帯主収入は前年同月と比べて減少している(総務省「家計調査」)。
 
また、雇用の状況を見ると、3月以降、正規雇用者数はおおむね変わらないが、非正規雇用者数は3月から4月の年度の切り替わりにかけて100万人以上減少している(総務省「労働力調査」)。減少した非正規雇用者の多くは飲食や旅行、小売業などのパート・アルバイトであり、コロナ禍で業績が悪化した業種における立場の弱い労働者から、雇い止めなどの深刻な影響が出ている。
 
この変化を受けて、完全失業率は上昇傾向にあり、ビフォーコロナは2%台前半で推移していたが、8月以降は3%台に乗るようになっている。
 
平常時より、非正規雇用者は女性や高齢者で多く、シングルマザー世帯や高齢単身世帯の貧困は社会課題となっている。コロナ禍において、これらの世帯はより厳しい状況におかれている。
 
政府は、すでに低所得のひとり親世帯に向けた「臨時特別給付金」を支給しているが、12月に再支給の方針を打ち出した。
 
今後、一層の雇用環境の悪化が懸念される中では、生活困窮世帯に対して、就業状況や家族構成など、各自の事情に合わせた手厚い支援策が継続的に求められる。
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

(2021年01月12日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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