2021年04月15日

さくらレポート(2021年4月)~多くの地域で持ち直しているとの認識が維持されるも、一部地域は景気判断を引き下げ

経済研究部 研究員   藤原 光汰

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1.全9地域中2地域で景気判断を引き下げ、7地域で横ばい

4月15日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域のうち、北海道と東北の2地域で景気の総括判断を引き下げ、7地域で判断を据え置いた。判断が据え置かれた地域では、サービス消費を中心に「厳しい状態にある」としつつも、持ち直しつつあることが示されている。関東甲信越や近畿などでは緊急事態宣言が再発令されていたものの、前回の緊急事態宣言時と比較すると経済の落ち込みは限定的にとどまったため、持ち直しているとの認識を維持した。一方で、北海道は「持ち直している」の文言が削除され、前回の総括判断に引き続き、2期連続での判断引き下げとなった。東北は、宮城県でいち早くまん延防止等重点措置が適用されたこともあり、新型コロナウイルス感染症再拡大の影響が強まっているとして景気判断を引き下げた。
地域経済報告(さくらレポート)

2.業況判断の改善ペースは鈍化

「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中8地域で前回調査(2020年12月)から改善した一方、北海道は小幅に悪化した。北海道を除く8地域における改善幅(前回→今回)は、前回調査の改善幅(前々回→前回)を下回っており、緊急事態宣言の再発令などを受けて景況感の回復ペースは鈍化した。

前回調査からの改善幅をみると、近畿が+11ポイントと最も大きく、次いで関東甲信越が+10ポイント、北陸、東海が+9ポイントとなっている。これらの地域は前回調査におけるDIの水準が低かったため、改善幅が相対的に大きくなったと考えられる。一方、北海道は▲1ポイントの低下となっており、北海道はさくらレポートでも景気の総括判断が引き下げられている。さくらレポートの需要項目別等の判断をみると、多くの地域で個人消費や設備投資に持ち直しの動きがみられる中で、北海道では弱い動きとなっていることが指摘されている。

先行き(2021年6月)については、北陸で横ばいを見込んでいる一方、その他の8地域では悪化を見込んでいる。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、感染力の強い変異株の流行が懸念されており、先行きへの警戒感は強い。また、足もとでは新規感染者数の増加などに伴いまん延防止等重点措置が適用されている。対象地域は一部に限定されているが、経済活動は停滞を余儀なくされるため、悪化幅はさらに下振れる公算が大きい。今後、新型コロナウイルスの感染者が再び拡大し、まん延防止等重点措置の対象地域がさらに増えれば、次回の地域経済報告(さくらレポート、2021年7月)では景気判断が下方修正される地域が増える可能性もあるだろう。
地域別の業況判断DI(全産業)/業況判断DIの変化幅(全産業)

3.製造業の業況判断は全地域で改善、コロナ前の水準を回復する地域も

製造業の業況判断DIは、9地域全てで改善した。東北、東海はコロナ前(2019年12月)の水準を上回り、近畿はコロナ前の水準を取り戻した。

世界的な経済活動の持ち直しに伴う輸出の回復や、財の消費の底堅さを背景に大幅に改善した。また、半導体不足等による自動車減産の影響は軽微にとどまっており、輸送用機械や自動車産業と関連の深い鉄鋼や非鉄金属では改善している地域が目立った。また、電気機械は多くの地域で改善した。

前回調査からの改善幅は、近畿(+18ポイント)が最大となり、次いで北陸(+17ポイント)、関東甲信越(+16ポイント)が高い。近畿では、全ての業種で前回調査からの改善がみられており、特に非鉄金属(+46ポイント)や鉄鋼(+39ポイント)が大きく改善した。一方、中国は食料品(▲10ポイント)の悪化などが下押し材料となり、改善幅は+3ポイントと相対的に小さくなった。

先行きについては、4地域で改善、3地域で悪化を見込んでいる。北陸は改善を見込んでいるが、鉄鋼や石油・石炭製品が大幅な改善となる一方、木材・木製品などは大幅な悪化を見込んでおり、地域内でも業種間で回復が二極化している。また、今回の調査では3月下旬に発生した車載用半導体の工場火災の影響が完全には織り込まれていないため、実際はさらに下振れる可能性が高いことには注意が必要である。半導体不足が深刻化することで自動車は減産を余儀なくされるほか、関係の深い鉄鋼、非鉄金属などにも影響が及ぶだろう。

一方、日銀短観3月調査では、2021年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が105.93円と、足元の為替相場(108円台)よりもかなりの円高水準を見込んでいるため、今後大きく円高が進行しなければ、製造業の景況感が上振れる要因となるだろう。
地域別の業況判断DI(製造業)/業況判断DI(製造業)の変化幅
改善・悪化幅(前回→今回)/改善・悪化幅(今回→先行き)

4.非製造業の業況判断は緊急事態宣言の再発令を受けて伸び悩み

非製造業の業況判断DIは、5地域で改善、2地域で悪化した(2地域は横ばい)。「Go To トラベル」が全国で一斉停止されたうえ、緊急事態宣言の再発令に伴い飲食店に営業時間短縮要請が出されたことなどにより、非製造業は低迷を余儀なくされた。DIの水準はコロナ前を大きく下回っており、製造業と非製造業とで改善ペースに大きな差が生じている。

業種別では、「Go To トラベル」の一時停止、営業時間短縮要請により宿泊・飲食サービス業が前回調査から大幅に落ち込んだ。DIの水準は▲60~▲90ポイント台となっており、非常に厳しい状況に追い込まれていることが確認される。一方、テレワーク需要などで情報通信は多くの地域で改善したほか、対事業所サービス等も改善し、全体の景況感を押し上げた。

前回調査からの改善幅は、関東が+3ポイントと最大となり、近畿と中国が+2ポイントと続いている。近畿では宿泊・飲食サービスが▲30ポイントの低下と相対的に落ち込み幅が小さかった。一方、北海道や九州・沖縄は▲2ポイントと前回調査から悪化した。北海道では物品賃貸(▲17ポイント)や運輸・郵便(▲12ポイント)など多くの業種が低下しており、九州・沖縄では対個人サービス(▲17ポイント)が大きく低下した。

先行きについては、2地域で改善、7地域で悪化を見込んでいる。非製造業の中でも比較的堅調であった建設や小売は、全地域で悪化を見込んでいる一方で、宿泊・飲食サービスは、緊急事態宣言の解除を受けて全地域で改善を見込んでいる。ただし、今回の予測ではまん延防止等重点措置の影響が織り込まれていない。一部の地域でまん延防止等重点措置が適用され、飲食店は再び営業時間を短縮せざるを得なくなった。人の移動も制限されることから、宿泊・飲食サービスの悪化に伴い、先行きの非製造業はさらに下振れる可能性が高いだろう。
地域別の業況判断DI(非製造業)/業況判断DI(非製造業)の変化幅
改善・悪化幅(前回→今回)/改善・悪化幅(今回→先行き)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   研究員

藤原 光汰 (ふじわら こうた)

研究・専門分野
日本経済

(2021年04月15日「経済・金融フラッシュ」)

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