2021年04月09日

景気ウォッチャー調査(21年3月)~緊急事態宣言解除により景況感改善も、感染再拡大に強い警戒感

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは2か月連続で上昇、先行き判断DIは20年11月以来の低下

4月8日に内閣府が公表した2021年3月の景気ウォッチャー調査(調査期間:3月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は49.0と前月から7.7ポイント上昇した。また、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は49.8と前月から1.5ポイント低下した。先行き判断DIは再び50を割った。
現状判断DI・先行き判断DIの推移 地域別でみても、現状判断DI(季節調整値)は、全国12地域の全てで前月よりも上昇した。現状判断DIの前月からの上昇幅が最も大きかったのは沖縄(前月差+20.5ポイント)であった。他方、先行き判断DIは全国12地域中3地域で上昇し、9地域で低下した。調査期間中に感染者数の顕著な増加傾向がみられた府県を含む地域で下落幅が大きかった(東北(前月差▲5.2ポイント)、近畿(同▲4.7ポイント)、沖縄(同▲8.4ポイント))。
今回の結果からは、3月21日に1都3県の緊急事態宣言が解除されたことによる景況感悪化の緩和や一部地域での感染者数の顕著な増加傾向による先行きへの警戒感が示されたといえる。ただし、現状判断DIが2か月連続で上昇したとはいえ、景況感が悪化する程度が弱まったに過ぎない。現状判断DIは依然として50をやや下回っており、平均的には、3か月前との比較で景気の方向性はやや悪くなっているか横ばいである。また、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DI(季節調整値)(36.2(前月差+3.6ポイント))は2か月連続で上昇したが、依然として新型コロナウイルス感染症の感染拡大前を下回っていることに留意が必要だ。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2.景気の現状判断DI(季節調整値):全ての内訳で上昇

現状判断DI・回答者構成比 現状判断DI(季節調整値)は、4月に9.4(当時の季節調整値では7.9)まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じ、21年1月には31.2まで落ち込んだが、2月から大幅に上昇した。景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)が減少し(2月:38.2%→3月:25.2%)、その分だけ、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(2月:16.5%→2月:29.5%)が増加する姿となった。現状維持(「変わらない」)と回答した割合は前月とほぼ同じであるが(2月:45.3%→3月:45.4%)、3か月前と比較して景況感が改善していることを示している。
現状判断DIの内訳の推移 現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は47.3(前月差+8.4ポイント)、企業動向関連は50.8(同+5.0ポイント)、雇用関連は56.9(同+9.6ポイント)であり、内訳の全てで2か月連続の上昇となった。企業動向関連や雇用関連は50を超えた。雇用関連で50を超えるのは2019年4月(50.1)以来、2018年5月(56.7)以来の高水準となった。また、家計動向関連や企業動向関連の内訳全てで上昇したが、家計動向関連の内訳では、特に小売関連は49.7(前月差+8.9ポイント)と50に近づくとともに、飲食関連は特に大幅に上昇した(同+12.2ポイント)。企業動向関連の内訳である製造業は51.4(前月差+2.9ポイント)、非製造業は50.6(同+7.0ポイント)であり、ともに50を超えたが、特に、非製造業が50を超えるのは2018年8月(50.9)以来であった。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移/現状水準判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントでは、緊急事態宣言解除やGo Toキャンペーン(Go To トラベルの一時停止含む)の影響に関する言及が多々みられた。

<緊急事態宣言解除の影響に関する主なコメント>
  • 緊急事態宣言が解除されてから5~6名での飲み会の予約がちらほら入るようになっている。ただし、よくしゃべっている客を見ていると、また新型コロナウイルスの感染者数が増えるのではないかという心配もある。(南関東(東京都)・一般レストラン)
  • 関西3府県の緊急事態宣言が解除され、気候も良くなってきたことで、行楽地への人出が増加しており、来客数も増加傾向にある。(中国・観光名所)
  • 緊急事態宣言が解除されているが、巣籠り消費、ステイホーム、学校の休校等新型コロナウイルスの感染状況に慣れも出てきて、前年のような大型スーパーマーケットでの買物需要はない。(九州・スーパー)
  • 沖縄県独自の緊急事態宣言が前月末で解除され、人通りも前月と比べものにならないくらいにぎわっている。また来客数も2倍近く増加している。(沖縄・コンビニ)

<Go Toキャンペーン(Go To トラベルの一時停止含む)の影響に関する主なコメント>
  • 首都圏の緊急事態宣言が解除されたとはいえ、Go To Travelキャンペーンが再開するめども立っていないことから、旅行需要は以前と変わらずほとんどみられない。また、ワクチン接種がいつまでに一般市民まで行き渡るのかも未定なことから、客の旅行意欲が湧かない状況にある。(北海道・旅行代理店)
  • 観光地では人出が増えているという報道があるが、旅行会社の利用にはつながっていない。Go Toキャンペーンのインパクトが強すぎて、Go Toキャンペーン停止期間の割引のない商品には魅力を感じてもらえない。(東海・旅行代理店)
  • 卒業、入学などの祝いで外食利用の機会が増加する時期とGo To Eatキャンペーンの利用期間が重なり、売上が大幅に増加している。(中国・一般レストラン)

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):雇用関連を除いて低下

先行き判断DI・回答者構成比 2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、20年7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、11月を除いて上昇を続けていたが、21年3月は再び低下する結果となった。

景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化と回答した割合(「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答の合計)(2月:20.4%→3月:26.4%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合(2月:43.3%→3月:46.9%)は増加する一方で、改善と回答した割合(「良くなる」と「やや良くなる」の回答の合計)(2月:36.3%→3月:26.7%)は減少した。
先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は49.0(前月差▲1.5ポイント)と50を再び割り込んだが、企業動向関連は50.9(同▲0.5ポイント)、雇用関連は53.0(同+2.0ポイント)であり、50超えを継続している。家計動向関連の内訳では、住宅関連(前月差+2.4ポイント)以外について前月より悪化した。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントからは、緊急事態宣言解除やワクチン接種による経済活動の再活性化やGo To トラベル再開に期待するものもあったが、感染者数が再び増加傾向にある地域では特に感染再拡大への警戒感が多々言及された。その他、東京オリンピック・パラリンピック、半導体不足に言及したコメントが散見された。

<緊急事態宣言解除やワクチン接種による経済活動の再活性化やGo To トラベル再開への期待に関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルスの影響の外出自粛などにより客の買物需要が高まっており、緊急事態宣言の解除をきっかけに少しずつ外出や買物が増えてくると予想される。(東海・百貨店)
  • 緊急事態宣言の解除や、東京オリンピックの開催と、景気回復のチャンスは続くため、それらを活かして消費者がお金を使いたくなる状況を早く整えてほしい。1日も早いGo Toキャンペーンの復活を望む。(近畿・テーマパーク)
  • 新型コロナウイルス、特に変異種の感染状況とワクチン接種の実施状況によって変わってくるが、現状では首都圏の緊急事態宣言解除に伴って、春から初夏に掛けての旅行需要の回復が大いに期待できる。特に北海道は国内旅行の目的地として注目されている様子がうかがえる。(北海道・旅行代理店)
  • 新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、東京オリンピック開催が確定すれば、客の動きが活発になり、安近短ではあるが、消費も上向いてくる。(中国・その他小売店)
  • 新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念もあるが、ゴールデンウィークや夏休み、秋の行楽シーズンと、12月頃まではこのまま経済活動も少しずつ上がっていく。ワクチン接種が早く実施されるようになれば、経済の回復もその分早まる。(南関東(東京都)・一般レストラン)

<感染再拡大の懸念に言及した主なコメント>
  • 最近の新型コロナウイルス感染者の急増と変異種の増加による不安に加え、沖縄県の緊急事態宣言再発出による自粛がありうるのではないだろうか。(沖縄・食料品製造業)
  • 首都圏で緊急事態宣言が解除されたが、当県での感染者数激増により県独自の緊急事態宣言が発出され、飲食店に向け営業時間短縮の協力要請がなされており、先がみえない。(東北・タクシー運転手)
  • 緊急事態宣言の解除により、少しは明るい兆しが見え始めたが、新型コロナウイルスの感染のリバウンドによる悪化の懸念が出てきた。各地で感染第4波の動きが見られるようになり、今後の見通しが立たない状況である。(近畿・都市型ホテル)

<東京オリンピック・パラリンピックに関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルスの影響が収まることを前提に考えた場合、東京オリンピック効果で、一定の需要や消費喚起は見込めるが、悪化した場合は逆に働く。(北関東・通信会社)
  • 東京オリンピックが開催されても、客は世界中どころか日本中からも来ないと思うので、東京近県でそれを当てにしていたところは、ホテルも飲食業もかなり厳しくなるのではないか。その後も何かきっかけがない限り、経済復興はまず無理ではないかと思うので、今後も飲食業は厳しい。(南関東・一般レストラン)
  • 新型コロナウイルスの影響で大きな変動があったが、少しでも収束し東京オリンピックが行われるという期待感もあり、今後人の動向が多くなる。(九州・商店街)

<半導体不足に言及した主なコメント>
  • 半導体不足の問題がいつ収束するか分からないため、自動車業界では当分景気は良くなることはないと考えている。(東海・輸送用機械器具製造業)
  • 自動車用半導体の不足による減産の影響で、新車販売台数の減少が長引く可能性が高い。(東海・乗用車販売店)
 
3月調査の結果は、緊急事態宣言解除などによる現状の景況感改善と感染再拡大への強い警戒感を示すものであった。調査期間以降も一部の地域では感染者数の顕著な増加がみられており、大阪府などに対して「まん延防止等重点措置」が適用された。感染再拡大が続くようであれば、景況感が再び悪化することも考えられる。今後も、感染動向やそれへの対応策に景況感が左右される状況は続くだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年04月09日「経済・金融フラッシュ」)

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