2021年04月07日

2019年における65歳時点での“健康余命”は延伸-65歳以上の不健康期間は改善傾向

基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.289]

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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2019 年の平均寿命は、男性81.41年、女性87.45 年と、過去最高を更新した。65歳の平均余命も男性19.83年、女性24.63年と、前年と比べて、男性は0.13年、女性は0.12年延びており、引き続き過去最高を更新している。しかし、「健康」で長生きすることが多くの人の願いであり、最近では、寿命そのものよりも「健康寿命」への関心が高い。

現在、一般的に使われている「健康寿命」は国の定義によるもので、0歳児が今後、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる*1期間を示している。しかし、「健康寿命」が気になりだすのは、中高年以上であることから、本稿では、2019年時点の65歳時点の「健康余命」を概算した。
 
*1 計算には、3年に1回実施される「国民生活基礎調 査(大規模調査)」の「健康上の問題で日常生活に何か 影響がありますか」という問に対する回答が使われる。

1―65歳時点の健康余命は延伸

1|65歳の男性/女性の健康余命は
14.43/16.71年 2019年の健康寿命(0歳時の健康余命)は、男性/女性それぞれ72.68/75.38年だった(筆者による概算)*2

また、65歳の健康余命は14.43/16.71年だった[図表1]。平均余命は、65歳時点で19.83/24.63年なので、余命から健康余命を差し引いて、65歳以降の不健康な期間は男女それぞれ5.40/7.92年となる計算だ。
[図表1]年齢ごとの平均余命と健康余命(2019年)
2|65歳の健康余命は延伸。不健康期間は改善傾向
2001年以降の65歳時点の平均余命と健康余命は図表2のとおり、いずれも延伸している。2019年は、2004年(15年前)と比べると、男女それぞれ平均余命は1.62年/1.35年、健康余命は1.96年/2.13年延びており、余命と健康余命の差(不健康期間)は、それぞれ0.34年/0.78年改善していた。
[図表2]65歳時点の平均余命と健康余命

2―健康上の問題で日常生活に影響がある割合は改善

不健康期間が短縮できた背景に、高齢期における健康状態の改善がある。

健康上の問題で日常生活に影響がある割合は、男女とも年齢が高いほど高い[図表3]。時系列でみると、すべての年齢層で改善しており、2007年と2019年を比較すると、70~84歳で男女ともそれぞれ日常生活に影響がある割合は5ポイント程度低下している。
[図表3]健康上の問題で日常生活に何らかの影響がある場合

3―加齢や健康上の問題があっても、制限なく日常生活を送ることができる社会の構築も重要

高齢期においても健康上の問題で日常生活に影響がある割合が低下していることから、65歳以上では余命の延伸を上回って健康余命が延伸している。しかし、不健康期間の改善は、非常にゆっくりとしたペースである。

概算結果を、個人の生涯設計に応用するとすれば、寿命も健康寿命も「寿命‐年齢」よりも「ある年齢における余命」の方が長い傾向があること、および、今後、健康寿命が延伸しても、日常生活に影響がある期間は一定期間生じるということだろう。

65歳まで生きている人は、平均寿命より長生きすることが予想されるため、平均寿命を目安に老後の生活のための資産形成をするのでは不十分である可能性がある。また、健康上の問題で日常生活に影響がない期間も、健康寿命より長いことが予想される。

国の政策としては、健康状態の改善と同時に、加齢や健康上の問題があっても、なるべく自立して日常生活を送ることができる社会を構築することも、重要となるだろう。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2021年04月07日「基礎研マンスリー」)

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