2021年04月05日

急ピッチで進んだ円安ドル高、持続性をどう見るか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 長らく円高基調が続いてきたドル円レートは年初に反転し、以降は急ピッチで円安ドル高が進行してきた。米国で追加経済対策の成立期待が高まったほか、コロナワクチンの接種が順調に進み、景気回復・物価上昇期待が高まった。この結果、米長期金利の上昇が加速し、予想物価上昇率の上昇ペースを上回ったことで米実質金利も上昇に転じたことがドル高を促した。また、年初以降、コロナ感染拡大などからユーロの弱さが目立ち、世界で最も取引量の多いユーロドルでユーロ安ドル高が進んだことがドル高の色彩を際立たせたことも、円安ドル高の進行に寄与した。
     
  2. 先行きについても、中期的には円安ドル高基調が続く可能性が高い。目先は3月に成立した1.9兆ドルの経済対策の効果が顕在化することにより、年後半にはFRBが量的緩和縮小の地ならしを開始することによって米金利がさらに上昇し、ドル高圧力になると考えられるためだ。ただし、順調に円安ドル高が進むとは見ていない。まず、現在の市場は米経済に関する明るい部分に焦点を当て過ぎている。今後は増税や規制強化、米中対立激化などへの懸念が台頭することで、たびたびドルの上値が抑えられるとみている。また、現在ユーロの重荷となっているコロナの感染拡大はいずれ縮小に転じ、ユーロの下落基調に歯止めが掛かることが予想される。加えて、ワクチンについても米国以外の国々での接種が次第に進むことで、主要先進国における「米国経済の一人勝ち感」は色褪せていくと考えられ、ドル高圧力を緩和させる要因になると見ている。従って、ドル円は当面こそ堅調ながら、遅くとも夏場には一旦調整入りし、110円を割り込む可能性が高い。その後は、FRBによる量的緩和縮小の地ならしを受けて円安ドル高基調に回帰し、再び110円台を回復するが、ドル高の進行は緩やかなペースに留まると見ている。
ドル円レートと米実質金利(2020年~)
■目次

1.トピック:急ピッチで進んだ円安ドル高、持続性をどう見るか?
  ・追加経済対策とワクチンがドル高の要因に
  ・ユーロの弱さもドル高の色彩を際立たせる
  ・今後の見通し・・・ドル高の持続性
2.日銀金融政策(3月):「点検」を踏まえ、政策を小幅に修正
  ・(日銀)政策の小幅な修正を決定
  ・評価と今後の予想
3.金融市場(3月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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