2021年03月24日

高止まりするドル円、1ドル110円突破はなるか?~マーケット・カルテ4月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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金利・為替 3ヶ月後の見通し ドル円は今月入り後も円安ドル高の流れが続き、一時1ドル109円台に達した。米国でワクチン接種が進むなか、1.9兆ドルの追加経済対策が成立に向かい、米景気回復と物価上昇の加速、その先の金融緩和縮小を織り込んだ米長期金利の急上昇がドルの追い風となった。直近では、欧州でのコロナ感染拡大などを受けて米金利上昇が止まり、ドル円の上昇も一服しているが、108円台半ばで高止まりしている。

今後もドル円は堅調な推移が予想される。米国ではこの先追加経済対策の効果が発現し、物価上昇観測が高まりやすい。米長期金利が上昇余地を試し、ドル円が追随する場面がたびたび発生しそうだ。ただし、FRBはしばらく大規模緩和を継続する方針であり、市場の早期縮小観測の沈静化に努めると考えられる。また、これまで円安圧力となってきた投機筋の円買いポジション解消もかなり進んだことから、当面のメインシナリオとしてはドル高トレンドの形成までには至らず、3カ月後の水準も現状程度に留まると予想している。

ただし、もし米国で大規模なインフラ投資計画(追加財政出動)の早期成立が見込まれる事態となれば、米長期金利が2%を目指し、ドル円も110円の節目を超えると見ている。逆に米国で再びコロナの感染が拡大すれば、米金利の低下を受けてドルは弱含むだろう。

ユーロ円は、米追加経済対策などを受けたリスク選好の円売りなどから、今月半ばに130円台に乗せたが、その後ユーロ圏でのコロナ変異株の感染拡大を受けてユーロが売られ、足元では128円台半ばにある。コロナの動向は読みづらいが、ユーロ圏主要国のワクチン接種率は米国の1/3程度と遅れていることから市場の懸念は燻り、対円でもユーロの重荷になる可能性が高い。3か月後の水準は現状比でややユーロ安と見ている。

長期金利は、今月上旬に黒田日銀総裁が変動幅拡大を否定する発言をしたことを受けて低下。日銀決定会合での政策修正についても「金利上昇を容認した」とは受け止められず、足元では0.0%台後半に低下している。今後も米長期金利が上昇余地を試し、上昇圧力が波及する場面が想定されるものの、影響は限られ、3か月後の水準は現状と大差ない水準に留まると見ている。
 
(執筆時点:2021/3/24)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2021年03月24日「基礎研マンスリー」)

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