2021年02月17日

円安ドル高・金利上昇の流れは続くのか?~マーケット・カルテ3月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し ドル円は、円安ドル高基調が続き、本日には一時4カ月ぶりのドル高水準となる1ドル106円台に乗せた後、足元でも105円台後半にある。米国でコロナワクチンの普及と追加経済対策の早期成立への期待が高まり、先々の景気回復を織り込む形で米長期金利が上昇基調を辿ったためだ。日米金利差が拡大し、円安ドル高が促された。

今後のドル円の行方も米金利の動向によって大きく左右される。米国で手続きが進められている大規模な追加経済対策は早期の成立が予想される。また、ワクチンの接種も着実に進行すると見込まれるため、米金利の上昇自体は正当化されるだろう。ただし、足元の米金利はこれらの材料を大方織り込み済みとみられる。また、FRBは景気回復を阻害しかねない急速な金利上昇を望んでいないため、けん制する意味でのハト派的な発言が増えることも想定される。米金利上昇とそれを背景とするドル高の動きはしばらく一服し、3か月後の水準は現状程度に留まると予想している。

なお、3月中旬には日銀による政策点検の結果公表が予定されている。大幅な政策変更はないものの、副作用対策として国債やETFの買入れ柔軟化が決まる可能性が高い。市場との対話がうまくいかず、「緩和姿勢の後退」と受け止められれば、一時的に円高が進むリスクがある。

ユーロ円は、ワクチン普及期待等に伴う世界的な株高を受けてリスク選好的な円売りユーロ買いが入ったほか、イタリアでのドラギ政権発足の動きもユーロの追い風となり、足元では128円台と約2年ぶりのユーロ高水準にある。ただし、積極的なユーロ買い材料が見当たらないなかで、今後は過熱感の漂う内外株価に調整が入る可能性が高い。従って、ユーロ円は弱含み、3か月後には126円台になると予想している。

長期金利は、米金利上昇や日銀による国債買入れ柔軟化への警戒を受けて上昇し、足元では0.1%に肉薄している。今後は既述の通り、米金利の上昇が一服することで、日本の金利上昇も一服し、3か月後も現状程度の水準に留まると見ている。ただし、3月には日銀による政策点検の結果公表を受けて、一時的に金利が上昇したり、不安定化したりするリスクがある。
 
(執筆時点:2021/2/17)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2021年02月17日「基礎研マンスリー」)

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