2021年02月08日

米雇用統計(21年1月)-雇用者数(前月比)は増加も、市場予想を下回る伸び。幅広い業種で雇用が減少

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数は前月比で増加も予想を下回る。失業率は前月、予想を下回る

2月5日、米国労働省(BLS)は1月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+4.9万人の増加1(前月改定値:▲22.7万人)と、▲14.0万人から大幅に下方修正された前月から増加に転じた一方、市場予想の+10.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は下回った(後掲図表2参照)。

失業率は6.3%(前月:6.7%、市場予想:6.7%)と前月から▲0.4%ポイント低下、横ばいを見込んだ市場予想も下回った(後継図表6参照)。労働参加率2は61.4%(前月:61.5%、市場予想:61.5%)と前月から▲0.1%ポイント低下、市場予想も下回った(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:雇用者数は増加に転じたものの、幅広い業種で雇用が減少、回復力は鈍い

1月の非農業部門雇用者数は前月比で増加に転じたものの、増加幅は前月の下落幅を大幅に下回った。また、1月の雇用増減を業種別にみると、後述するように専門・ビジネスサービスなどで雇用が増加したものの、12月に前月比で▲54万人の大幅な減少となった娯楽・宿泊が引き続き▲6万人減少したほか、小売業、医療・社会扶助サービス、運輸・倉庫で雇用が減少したほか、これまで雇用回復が持続していた財生産部門でも減少に転じるなど幅広い業種で雇用が減少しており、雇用の回復力は鈍い。なお、1月の非農業部門雇用者数の水準は新型コロナ流行前(20年2月)を依然として▲989万人下回っている。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.2%(前月改定値:+1.0%、市場予想:+0.3%)と+0.8%から上方修正された前月から大幅に低下したほか、市場予想も下回った。前年同月比は+5.4%(前月改定値:+5.4%、市場予想:+5.0%)と、こちらは+5.1%から上方修正された前月に一致したほか、市場予想を上回った(図表1)。

このようにみると、1月は前月の悪化から労働市場が再び持ち直したことを示したものの、雇用増加幅が限定的に留まったほか、幅広い業種で雇用減少となるなど、雇用回復力が鈍いことを示す結果となった。

3.事業所調査の詳細:幅広い業種で雇用減少

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+1.0万人(前月:▲28.0万人)と増加に転じたものの、前月の減少幅に比べて小幅な増加に留まった(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+8.1万人(前月:+6.4万人)と前月から伸びが加速したこともあり、専門・ビジネスサービスが+9.7万人(前月:+15.6万人)と雇用が増加した。

一方、小売業が▲3.8万人(前月:+13.5万人)、医療・社会扶助サービスが▲4.1万人(前月:+3.9万人)と減少に転じたほか、運輸・倉庫が▲2.8万人(前月:▲2.4万人)、娯楽・宿泊が▲6.1万人(前月:▲53.6万人)と前月に続き雇用が減少するなど、サービス部門の幅広い業種で雇用が減少した。

財生産部門は前月比▲0.4万人(前月:+7.6万人)とこちらも小幅ながら前月から減少に転じた。製造業が▲1.0万人(前月:+3.1万人)、建設業が▲0.3万人(前月:+4.2万人)といずれも減少に転じた。

一方、政府部門は前月比+4.3万人(前月:▲2.3万人)と5カ月ぶりに増加に転じた。内訳をみると、連邦政府が▲2.4万人(前月:+0.1万人)と減少に転じたものの、州・地方政府が+6.7万人(前月:▲2.4万人)と増加に転じて全体を押し上げた。
前月(12月)と前々月(11月)の雇用増加数(改定値)は前月が▲22.7万人(改定前:▲14.0万人)と▲8.7万人下方修正されたほか、前々月は+26.4万人(改定前:+33.6万人)と、こちらも▲7.2万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲15.9万人の下方修正となった(図表3)。なお、今月は昨年の年次改訂も発表され、3月と4月の雇用者数がそれぞれ▲25.0万人、▲14.2万人下方修正された一方、10月が+11.7万人上方修正されるなどの改訂が行われた。この結果、修正幅は月平均で+0.3万人の上方修正となった。
 
BLSの公表に先立って2月3日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+17.4万人(前月改定値:▲7.8万人、市場予想:+7.0万人)と▲12.3万人から上方修正された前月から増加に転じたほか、市場予想も上回った。この結果、ADP統計は雇用統計同様に雇用が増加に転じたものの、雇用統計とは異なり、前月の減少幅を上回る上昇となった。
 
1月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が29.96ドル(前月:29.90ドル)となり、前月から+6セント増加した。一方、週当たり労働時間は35.0時間(前月:34.7時間)と前月から+0.3時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,048.60ドル(前月:1,037.53ドル)と前月から増加した(図表4)。
(図表3)2020年改定の結果/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働力人口が減少、労働参加率が低下

家計調査のうち、1月の労働力人口は前月対比で▲20.6万人(前月:+3.1万人)と前月から減少に転じた3。内訳を見ると、就業者数が+38.1万人(前月:+2.1万人)と前月から伸びが大幅に加速した一方、失業者数が▲58.6万人(前月:+0.8万人)と就業者数の増加を上回る減少となった。一方、非労働力人口は+30.4万人(前月:+11.5万人)と前月から伸びが加速したほか、3ヵ月連続の増加となった。

これらの結果、労働参加率は61.4%と前月から小幅ながら低下した(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は1月が81.1%(前月:81.0%)とこちらは前月から+0.1%ポイント上昇した。男女の内訳は、男性が87.7%(前月:87.3%)と+0.4%ポイント上昇した一方、女性が74.8%(前月:74.8%)と前月から横ばいとなった。

一方、失業率は6.4%と前月から▲0.4%ポイント低下したが、1月は労働参加率の低下にもみられるように職探しを諦めて労働市場から退出した人数の増加を反映している面もあり、その点は割り引いて考える必要がある(図表6)。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
1月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は402.3万人(前月:395.6万人)となったほか、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは39.5%(前月:37.1%)と前月から+2.4%ポイント増加した(図表7)。平均失業期間は26.0週(前月:23.4週)と前月から+2.6週長期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(191.7万人)4や、経済的理由によるパートタイマー(595.4万人)も考慮した広義の失業率(U-6)5は、1月が11.1%(前月:11.7%)と前月から▲0.6%ポイント低下した(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+4.8%ポイント(前月:+5.0%ポイント)と前月から▲0.2%ポイント縮小した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 2021年から人口推計を変更しているため、2020年と断層が生じている。ここで記載している労働力人口、就業者数、失業者数、非労働力人口はこの断層を調整した後のもの
4 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
5 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2021年02月08日「経済・金融フラッシュ」)

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