2021年01月12日

年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~不安・心理編~偏見への不安は高年齢で強い傾向。従来の消費行動への欲求は全年代に広がる~

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任   坊 美生子

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1――はじめに

ニッセイ基礎研究所は、全国の20~69歳の男女約二千人を対象に継続実施している「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」結果を基に、主だった行動・意識の変化について、数回に分けて年代別の分析を行っている。本稿では、コロナに関して人々が抱いている不安について年代別クロス分析を実施し、行動変化の要因と今後の見通しを探る。

新型コロナウイルス感染拡大後の消費行動の変化は、感染等への不安から行動を自粛する「行動抑制」と、オンラインサービスなど別の行動に置き換える「行動変容」の2パターンに整理することができる1。アフターコロナにおいては、一つ目の行動抑制にあたるものは、今後のワクチン開発の動向や投与態勢の確立によって回復する可能性が大きいと筆者は予測している。一方で、二つ目の行動変容にあたるものは、いったん個人のライフスタイルや企業風土として定着すれば、元に戻る可能性は小さいと予測している。

これらの点について検証するため、本稿では、まず行動変化の要因となる不安の中身について、年齢別分析を加味して考察したい。次に、主な行動変化の状況について、ニッセイ基礎研究所がこれまでに公表しているレポート等から引用して説明したい。最後に、今後の見通しを検討するため、コロナによってどのような消費行動がしづらいことに不安を感じているかを分析したい。この不安は、実際にはそのような消費行動をとりたいという欲求の裏返しである。これらを手掛かりに、新型コロナ収束後の消費行動の見通しについて検討したい。
 
1 博報堂が2020年4月から実施している「新型コロナウイルスに関する生活者調査」では、行動変化を「行動抑制度」と「行動変化度」に分けて集計している。
 

2――行動抑制の要因~感染の何が怖いか~

2――行動抑制の要因~感染の何が怖いか~

1|感染による健康面への不安
始めに、2020年9月に実施した第2回調査の結果を基に、行動変化の要因となる不安の中身についてみていきたい2

まず、「自分や家族の感染による、自分や家族の健康状態の悪化」にどれぐらいの人が不安を感じているかを示したのが図表1である。まず全体では「不安」と答えたのは60.8%、「どちらともいえない」23.0%、「不安ではない」13.0%、「該当なし」3.1%で、「不安」が「不安ではない」を47.8ポイント上回った。年代別では、いずれの年代でも「不安」が6割前後、「不安ではない」は1割強にとどまり、新型コロナに感染することへの不安が、年代を問わずに広がっていた。
図表1  自分や家族の感染による、自分や家族の健康状態の悪化に対する不安
次に、「感染しても適切な治療が受けられないこと」への不安をみていきたい(図表2)。これは、万が一、自身や家族が発症した場合に、適切な治療を受けられずに重症化することへの不安と言い換えることができる。全体では「不安」が55.6%に上り、過半数の人が不安を感じていた。「どちらともいえない」は25.2%、「不安ではない」16.3%、「該当なし」2.9%で、「不安」が「不安ではない」を39.3ポイント上回った。

年代別にみると、「不安」と回答したのは、いずれの年代でも5割前後に上ったが、その値は年代が上がるにつれて大きくなった。20歳代では全体平均を8.5ポイント下回る47.1%、逆に、60歳代は全体平均を10.2ポイント上回る65.8%となった。

厚生労働省によると、新型コロナを発症した後、重症化しやすいのは高齢者と基礎疾患のある人で、年代によって重症化率が異なる。30歳代の重症化率を1とした場合の各年代の重症化リスクは、20歳代で0.3倍、40歳代で4倍、50歳代で10倍、60歳代で25倍と、年代が上がるごとに格段に大きくなり3、本設問でもこれを反映した結果が示された。
図表2 感染しても適切な治療が受けられないことに対する不安
 
2 第2回調査は、2020年9月25~29日、全国の20~69歳の男女を対象に実施した。有効回答は2,066人。年代別内訳は20代310人、30代408人、40代472人、50代402人、60代474人。同月時点における、新型コロナ関連の様々な影響等について、「非常に不安」「やや不安」「どちらともいえない」「あまり不安ではない」「全く不安ではない」「該当なし」の6段階で尋ねた。本稿では、各年代の傾向を比較しやすくするため、「非常に不安」「やや不安」を合わせて「不安」、「あまり不安ではない」「全く不安ではない」を合わせて「不安ではない」として、4段階でまとめた­­。なお、厚生労働省によると、第2回調査が実施された年9月下旬は、7~8月に1日に最大1,000人を超えていた新規感染者数が300~600人程度で推移し、8月に最大200人を超えていた重傷者数は160人前後となっていた。
3 厚生労働省「(2020年11月時点)新型コロナウイルス感染症の“いま”についての10の知識」
2|感染による偏見・中傷への不安
次に、周囲からの偏見や中傷に対する不安についてみていきたい(図表3)。

「自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷」を受けることについて、全体では「不安」と答えたのは56.3%、「どちらともいえない」24.8%、「不安ではない」13.7%、「該当なし」5.1%で、「不安」が「不安ではない」を約43ポイント上回った。偏見や中傷に対する懸念は、1|でみた健康悪化や重症化への不安に匹敵する大きさとなっている。

そのような中でも、年代別で比べれば、20歳代では「不安」が50.0%で全体を6.3ポイント下回り、他の年代に比べれば、不安を抱える人が少なかった。傾向としては、年代が上がるにつれて「不安」がやや増加し、「不安ではない」がやや減少していた。
図表3 自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷に対する不安
ニッセイ基礎研究所のこれまでの分析では、20歳代は、コロナ感染拡大後でも、デパートやスーパー等での買い物、飲食店での食事など、リアルな消費行動の増加割合が他の年代に比べて大きいことが分かっており4、「周囲から偏見や中傷を受ける」という心理的圧力が相対的に小さいことが、その背景にあると考えられる。
3|感染による仕事面への影響に対する不安
次に、仕事面の不安についてみていきたい(図表4)。

「自分や家族の感染によって仕事を失うことに対する不安」について、全体では「不安」と答えたのは42.6%、「どちらともいえない」27.2%、「不安ではない」18.9%、「該当なし」11.3%で、「不安」が「不安ではない」を約24ポイント上回った。

年代によって差が出ており、「不安」との回答が最も多かったのは40歳代の48.5%、次いで30歳代の46.3%だった。30~40歳代の回答者のライフステージを見ると、「上の子どもが大学生以下」という割合が他の年代よりも大きい4割に達しており、子どもを養わなければならない世帯が、仕事を失うことへの不安を強く感じているとみられる。

一方、60歳代は、「上の子どもが大学生以下」という割合は約1%にとどまっており、仕事を失うことに対して「不安」と回答したのも、全体を6.5ポイント下回る48.5%だった。

20歳代は、独身割合が全年代で最多の7割に上っており、仕事を失うことに対して「不安ではない」との回答が、全体を13.1ポイント上回る28.1%だった。
図表4 自分や家族の感染によって仕事を失うことに対する不
次に、「自分や家族の感染によって収入が減ること」については、全体では「不安」51.3%、「どちらともいえない」24.9%、「不安ではない」15.9%、「該当なし」8.0%で、「不安」が「不安ではない」を約35ポイント上回った(図表5)。

年代別でみると、仕事を失うことに対する不安と同様の傾向が見られた。「不安」が最多となったのは40歳代の55.7%、次いで30歳代の54.7%だった。60歳代で「不安」としたのは、全体平均を6.8ポイント下回る44.5%だった。
図表5 自分や家族の感染によって収入が減ることに対する不安
4|小括
3|までに見てきた感染にまつわる不安は、「感染によって本当に怖いことは何か」「何が不安だから行動を抑制、または変えたか」を表している。

自身や家族が感染することによる健康悪化への不安は、いずれの年代にも幅広く広がっていたが、今後、国内でワクチン実用化が進み、接種態勢が確立すれば、ある程度は緩和され、消費行動が回復に向かう可能性がある。

一方、いったん発症した後に、適切な治療を受けられないという重症化に対する不安は、根本的な治療薬が無い限り、解消するのは難しい。厚生労働省によると、現状では発症者への診療としては対症療法が中心となっている。一定程度、治療方法が確立されてきたとは言え、重症化リスクの高い高年代の人たちにとっては、今後も不安が残るだろう。特に、本調査では対象外とした70歳以上の人たちには、より大きな不安が根付き、消費行動の抑制が長引く可能性がある。

さらに、消費回復の妨げになると考えられるのが、世間からの偏見や中傷への不安である。偏見や中傷といった行為は、事実とは無関係に発生、持続することが予想され、アフターコロナにおいて消費回復の足を引っ張る可能性がある。

また、「仕事を失う」「収入が減る」といった経済的な打撃に対する懸念は、30歳代、40歳代の子育て世代を中心に大きいことが改めて示された。「家族を養えなくなる」という結果の重大さから、特に小さな子どもがいる世帯で、行動抑制が続く可能性があるだろう。
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
ジェロントロジー、交通政策・移動サービス、労働

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