2020年12月09日

貸出・マネタリー統計(20年11月)~通貨量の伸びが7ヵ月連続で過去最高を更新、投資信託は前年割れに

経済研究部 上席エコノミスト   上野 剛志

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1.貸出動向:地銀貸出の伸びが3カ月連続で低下、中小企業でも資金需要が一服

(貸出残高)                                                                  
12月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、11月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比5.97%と前月(同5.86%)からやや上昇した。伸び率の上昇は3カ月ぶりとなる(図表1・2)。

業態別で見た場合には、都銀の伸び率が前年比6.92%(前月は6.62%)と上昇した。一部の大企業から大口のM&A資金などのまとまった資金需要があった模様。ただし、大企業の一部では、予備的に調達していた借入金を返済したり、短期の借入金を長期の社債に切り替えたりする動きが出ていることから、大企業向け割合の高い都銀の伸び率は6月をピークとして低下基調にある(図表3・4)。
(図表1) 銀行貸出残高の増減率/(図表2)リーマンショック・コロナショック後の銀行貸出/(図表3) 業態別の貸出残高増減率/(図表4)貸出先別貸出金
(図表5)信用保証実績 一方、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比5.16%(前月は5.21%)と、わずかながら3カ月連続で低下している(図表3)。

地銀が主に対象とする中小企業においては、政府が経済対策の一環で実施している「民間金融機関による無利子・無担保融資」の利用が続いているものの、その前提となる信用保証協会による保証承諾額(フロー)は6月をピークに減少を続けており、保証債務残高の伸びも鈍化してきている(図表5)。経済活動が緩やかながら回復に向かっていることで企業の資金繰りがやや改善したほか、予備的な資金調達が一服したことが背景にあるとみられる。

2.マネタリーベース:増勢が一旦鈍化

12月2日に発表された11月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの前年比伸び率(平残)は16.5%と、前月(同16.3%)をやや上回り、2017年6月以来の高水準となった(図表6)。

引き続き、日銀当座預金の減少要因となる政府による短期国債(国庫短期証券)が大規模に発行されたが、日銀が大規模な買入れ(日銀当座預金の増加要因)を続けたほか、金融機関向け貸出である新型コロナ対応金融支援特別オペの実施もあり、日銀当座預金残高が増加した。

なお、長短国債の買入れ額はコロナ拡大前と比べて高い水準が維持されているものの、長期国債の買入れ増は限定的であり、短期国債の買入れ増も夏場以降ペースダウンしている(図表7.8)。これに伴い、マネタリーベースの増勢も鈍化してきている。
 
11月末時点のマネタリーベース残高は606兆円と前月末比2.4兆円減少した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、11月は前月比3.5兆円増と引き続きプラスを維持しているが、10~20兆円のプラスが続いていた前月までと比べると、大きく鈍化している(図表9)。
(図表6) マネタリーベースと内訳(平残)/(図表7)日銀の国債買入れ額(月次フロー)
(図表8)日銀国債保有残高の前年比増減/(図表9)マネタリーベース残高と前月比の推移
増勢の鈍化は、金融市場の安定や企業の資金需要一服などを受けたものと考えられる。ただし、来年年初に政府の第3次補正予算が成立すれば、再び国債の増発が予想される。この場合、日銀が金利上昇抑制のために国債買入れを活発化し、マネタリーベースの増勢が再び強まる可能性がある。

3.マネーストック:通貨量の伸びが7ヵ月連続で過去最高を更新、投資信託は前年割れに

12月9日に発表された11月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比9.11%(前月は8.99%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同7.61%(前月は7.51%)とともに上昇した(図表10)。伸び率はともに7カ月連続で2004年4月の現行統計開始以降の最高を更新しているが、貸出の伸び一服などから、増勢は鈍化してきている。

M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月15.2%→当月15.2%)の伸び率が前月から横ばいとなったほか(図表11)、上昇が続いてきた現金通貨(前月6.0%→当月6.0%)の伸び率も横ばいとなったが、CD(譲渡性預金・前月1.8%→当月5.5%)の伸びがプラス幅を拡大したことが寄与した。なお、定期預金などの準通貨(前月▲2.0%→当月▲2.1%)の伸びは引き続きマイナス圏かつ小動きであった(図表12)。
(図表10) M2、M3、広義流動性の伸び率/M1 
現金通貨 
預金通貨 
(前年比、%)
(図表12)投資信託・金銭の信託・準通貨の伸び率 なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比5.43%(前月は5.46%)と2カ月連続の低下となった(図表10)。

内訳を見ると、既述の通り、M3の伸び率は上昇したものの、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース前月1.9%→当月▲0.1%)の伸びが14カ月ぶりの前年割れとなったことが響いた(図表12)。11月は内外株価が大幅に上昇したため、利益確定売りが優勢になったとみられる。また、外債(前月0.6%→当月▲0.7%)の伸びもマイナスに転じている。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融、日本経済

(2020年12月09日「経済・金融フラッシュ」)

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