2020年12月08日

日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は13ポイント上昇の▲14と予想、設備投資は下方修正へ

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 12月短観では、前回に続いて景況感の回復が示されると予想。大企業製造業では、中国をはじめとする海外経済の回復に伴う輸出の持ち直しや世界的な自動車需要の回復、好調な巣ごもり需要等を受けて景況感が改善するだろう。非製造業も、「Go To キャンペーン」拡充などを受けて景況感が改善すると見込まれるが、「コロナ感染第3波」が重荷になる。ただし、現段階では、「Go To」の全面停止や緊急事態宣言の再発令といった強い行動規制は回避されているため、景況感の改善が妨げられるまでの状況には至っていないとみている。
     
  2. 先行きの景況感については、製造業と非製造業で方向感が分かれると予想。製造業では、コロナ感染が抑制されている中国を中心とする海外経済回復への期待から景況感のさらなる改善が示される可能性が高い。一方、非製造業では、国内で感染拡大を続けている新型コロナへの懸念から、横ばいまたは悪化が示されると予想している。
     
  3. 2020年度の設備投資計画(全産業)は、前年度比3.4%減へ下方修正されると予想。例年、12月調査では上方修正される傾向が強いものの、新型コロナの感染拡大に伴って収益が大幅に悪化したうえ、事業環境の先行き不透明感も強い。企業の間で設備投資の見合わせや先送りの動きが広がり、前回調査に続いて下方修正されると予想している。
     
  4. 今回の短観では景況感や設備投資計画以外にも注目点が多い。今後の失業動向を占う意味で雇用人員判断DIが注目されるほか、コロナ禍が長期化するなか、再び資金繰り懸念が高まる兆しが出ていないかを確認するうえで、資金繰り判断DIもフォローが必要になる。さらに、コロナ禍を受けた企業の構造転換の動きを見るうえではソフトウェア投資計画が注目される。コロナ禍でも上方修正されてきたが、テレワークの進展や遠隔サービス化の流れ、DXに向けた動きの顕在化を受けて、さらに上方修正されるかがポイントになる。
(図表1)日銀短観業況判断D.I.の予測表
■目次

12月短観予測:中国とGoToの牽引で景況感は改善、設備投資計画は下方修正へ
  ・景況感は2期連続の改善に
  ・設備投資計画はさらに下方修正へ
  ・注目ポイント:雇用人員判断・資金繰り判断、ソフトウェア投資計画
  ・日銀金融政策への影響
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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