2020年12月07日

年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~移動手段編~公共交通機関の回避傾向が強い60歳代、パーソナルな移動手段へのシフトも少なく~

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任   坊 美生子

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1――はじめに

新型コロナウイルス感染症によって、様々な制約や不安から、人々の行動は変化している。ニッセイ基礎研究所がインターネット上で実施した「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」からは、人々の移動についても、各交通手段によって増減があることが分かった1。他の機関が実施している調査でも、公共交通機関の利用が落ち込んでいることや、マイカーへのシフトが起きていることなどが報告されているが2、年代別にみた状況は明らかになっていない。

そこで本稿では、アフター・コロナの公共交通政策や移動サービスについて考えていくために、2020年9月に実施した上記の第2回調査結果を用いて、各年代と、各移動手段の利用状況についてのクロス分析を行った3。各移動手段を選好したり、回避したりする行動は、どの年代に特徴的に起きているのかを明らかにしたい4
 
1 ニッセイ基礎研究所「2020年度特別調査『第2回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査』調査結果概要
2 国土交通省「新型コロナウイルス感染症による関係業界への影響について」等。
3 第2回調査は、2020年9月25~29日、全国の20~69歳の男女を対象に実施した。有効回答は2,066人。年代別内訳は20代310人、30代408人、40代472人、50代402人、60代474人。同月時点の消費行動や働き方等について、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月頃に比べた利用状況を、「増加」「やや増加」「変化なし」「やや減少」「減少」「該当なし」の6段階で尋ねた。本稿では、各年代の傾向を比較しやすくするため、「増加」と「やや増加」を合わせて「増加」、「減少」と「やや減少」を合わせて「減少」として4段階でまとめた­­。
4 厚生労働省によると、第2回調査が実施された2020年9月下旬は、7~8月に1日に最大1,000人を超えていた新規感染者数が300~600人程度で推移し、8月に最大200人を超えていた重傷者数は160人前後となっていた。

 

2――新型コロナ感染症による各移動手段の利用状況の変化

2――新型コロナ感染症による各移動手段の利用状況の変化

1電車やバス
まず、都市内交通の代表手段である電車やバスでの移動についてみていきたい(図表1)。

全体では「増加」5.7%、「変化なし」26.9%、「減少」36.2%、「該当なし」31.2%で、「減少」が「増加」を30ポイント以上、上回っている。

年代別にみると、「減少」はすべての年代で3割を超えた。最も大きかったのが60歳代の44.3%で、全体より8.1ポイント高かった。「増加」は、20歳代で19.0%となり、全体平均よりも13.3ポイント高かったが、30歳代以上はいずれも一桁台にとどまっていた。

感染リスクを下げるために、不特定多数の乗客が乗り合わせる公共交通機関を避ける傾向は、全ての年代に強く表れているが、特に、重症化リスクの高い60歳代で顕著にみられることが示された。本調査では対象としていない70歳代以上では、さらに重症化リスクが上がるため、一層回避傾向が強まる可能性がある。
図表1 電車やバスでの移動
2タクシー
次に、タクシーでの移動についてみていきたい(図表2)。

全体では「増加」3.0%、「変化なし」20.5%、「減少」15.4%、「該当なし」61.0%だった。タクシーは、電車やバスのように不特定多数の乗客と乗り合わせることがないため、電車やバスに比べれば落ち込みは小さかったものの、「減少」が「増加」を上回っている。ドライバーとの接近や、他の乗客との車両の共有を避けるために、利用を避ける傾向があると考えられる。

年代別にみると、すべての年代で「減少」が「増加」を上回った。「増加」は、20歳代は9.7%で、全体よりも6.7ポイント高い。30歳代以上ではいずれも一桁台にとどまっていた。20歳代の回答を、さらに職業別にみると、「学生」の増加幅が目立っていた。学生の中には、もともとタクシーを利用していなかった人が多かったため、コロナ後に増加の値が大きくなった可能性がある。
図表2 タクシーでの移動
3飛行機
次に、都市間交通の代表手段である飛行機の利用についてみていきたい(図表3)。

全体では、「増加」2.1%、「変化なし」12.0%、「減少」21.0%、「該当なし」64.9%。都市内交通と同様に、不特定多数の乗客が乗り合う飛行機の利用が大きく減少している。海外旅行や国内旅行、出張の落ち込みが影響していると考えられる。政府が7月下旬から観光へのテコ入れ策として実施した「Go To トラベル」の利用も、別の設問で、調査時点では約2割にとどまったことが分かっており、飛行機の利用回復には至っていない。

年代別にみると、いずれの年代でも「減少」が「増加」を10ポイント以上上回った。「増加」は、20代で8.1%となり、全体よりも6.0ポイント高かった。「変化なし」も17.7%で、全体平均より5.7ポイント高かった。
図表3 飛行機での移動
4|自家用車
次に、パーソナルな移動手段の代表である自家用車についてみていきたい(図表4)。

全体では「増加」17.4%、「変化なし」47.0%、「減少」11.9%、「該当なし」23.8%で、増加が減少を上回った。これまでみてきた事業用の輸送手段とは対照的な結果となった。不特定多数の乗客との乗合や、モビリティの共有を避けられる、パーソナルでコンパクトな移動手段として選好されていることが分かる。

年代別でみると、いずれの年代でも、「増加」が「減少」を上回っており、年代別で顕著な違いは見られなかったが、「増加」の値は年代が上がるにつれて小さくなる傾向があった。「減少」は、いずれの年代も近似していた。

ここで、「自動車」というコンパクトなモビリティが選好されるようになったのか、または自走手段としての自家用自動車が選好されるようになったのかを確認するため、本調査の別の設問「カーシェアリングサービスの利用」の回答結果についても参照した。カーシェアリングについては、全体では「増加」2.7%、「変化なし」8.6%、「減少」4.4%、「該当なし」84.4%だった。カーシェアリングを全く利用していない「該当なし」が大多数を占めるものの、利用層についてみると、「減少」が「増加」をやや上回っていた。同じ自動車というモビリティであっても、シェア形式では選好されていないことが分かった。感染リスクを下げるために、他人とモノを「シェア」するスタイル自体が敬遠されているとみられる。
図表4 自家用車での移動
5自転車
最後に、同じくパーソナルでコンパクトな移動手段である自転車についてみていきたい(図表5)。

全体では「増加」10.2%、「変化なし」35.2、「減少」8.3%、「該当なし」46.2で、「増加」がやや「減少」を上回っている。自動車と同様に、不特定多数の乗客との乗合や、モビリティの共有を避けられる交通モードとして、利用する人が増えたことが分かる。

年代別では、20歳代~30歳代の若い年代の方が増加幅が大きく、20歳代では全体を5ポイント上回る15.2%だった。50歳代では「増加」と「減少」が拮抗し、60歳代では「増加」が「減少」をわずかに上回っていた。

4|と同様に、「自転車」というモビリティが全般的に選好されるようになったのか、または自走手段としての自転車が選好されるようになったのかを確認するため、本調査の別の設問「シェアサイクルサービスの利用」回答結果についても参照した。シェアサイクルについては、全体では「増加」2.4%、「変化なし」7.5%、「減少層」4.0%、「該当なし」86.2%だった。シェアサイクルを全く利用していない「該当なし」が大多数を占めるものの、利用層についてみると、「減少」が「増加」をやや上回っていた。ここでも、同じ自転車というモビリティであっても、シェア形式では選好されていないことが分かった。他人とモノを「シェア」するスタイルが敬遠されている可能性が再び示された。
図表5 自転車での移動

3――おわりに

3――おわりに

本稿で行った年代別クロス分析の結果、新型コロナウイルス感染症の影響によって、電車やバスといった公共交通機関を避ける傾向は、特に60歳代で顕著にみられることが分かった。一方で、この年代では、自家用車や自転車の増加幅は、若い年代に比べるとやや小さいことが分かった。従って、新型コロナによって、60歳代の人は若い年代に比べて、移動手段が「公共交通機関からパーソナルな移動手段へシフトした」というよりは、単に、通勤を含む移動、すなわち外出機会そのものが減少している可能性が大きい。

ただし、本調査では「徒歩」に関する設問が無いため、公共交通機関による移動から徒歩による移動へとシフトした人については捉えられていない。また、70歳以上の高齢者への影響も捉えられていない。この点については、他機関の調査結果も合わせて分析していく必要があるだろう。

また、20歳代については、「電車やバス」「タクシー」「飛行機」のいずれにおいても「減少」が「増加」を上回り、全般的には他人と乗り合う輸送手段の利用が控えられていると言えるが、全体に比べればその幅は小さく、他の年代とは特異な動きも見られた。

さらに、2-4|、2-5|でも示したように、パーソナルでコンパクトな移動手段である「自家用車」「自転車」の利用は、ほぼ全ての年代において「増加」が「減少」を上回っていたが、同じモビリティを所有ではなくシェアする「カーシェアリングサービス」「シェアサイクルサービス」では、全体で「減少」が「増加」を上回っていた。このことから、新型コロナウイルス感染症によって選好される移動手段は、パーソナルでコンパクトであるだけではなく、見知らぬ他人とのモビリティのシェアを避けた所有形式のものであることが分かった。自分より先に利用した人との、モビリティを通じた接触を避けていると言える。この傾向は、移動に限らず、洋服やバッグ等のシェアリングサービスについても見受けられる5

今後は、年代別の行動の違いがなぜ生じてくるのかをより詳しく考察するため、本調査中の「新型コロナによる生活不安」に関するクロス分析を行っていきたい­­­。
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
ジェロントロジー、モビリティ、まちづくり、労働

(2020年12月07日「基礎研レター」)

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