2020年11月26日

米個人所得・消費支出(20年10月)-市場予想は上回ったものの、消費の伸びは一段と鈍化

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回った一方、消費支出は予想を上回る

11月25日、米商務省の経済分析局(BEA)は10月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比▲0.7%(前月改定値:+0.7%)と+0.9%から下方修正された前月からマイナスに転じたほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の▲0.1%も下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.5%(前月改定値:+1.2%)と+1.4%から下方修正された前月から伸びが鈍化、市場予想(+0.4%)は上回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.5%(前月改定値:+1.1%)と+1.2%から下方修正された前月から伸びが鈍化した一方、こちらも市場予想(+0.3%)は上回った(図表5)。貯蓄率1は13.6%(前月:14.6%)と、前月から▲1.0%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比横這い(前月:+0.2%)と前月を下回った一方、市場予想(横這い)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も横這い(前月:+0.2%)と前月を下回った一方、市場予想(横這い)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+1.2%(前月:+1.4%)と前月を下回った一方、市場予想(+1.2%)に一致した。コア指数も+1.4%(前月改定値:+1.6%)と+1.5%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+1.4%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:経済対策効果の剥落や新型コロナ感染拡大で消費が鈍化

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 10月の個人消費は前月から消費の伸びが鈍化し、新型コロナ流行後に消費が回復に転じた20年5月以降で最低の伸びとなった(図表1)。

後述するように政府からの移転所得は政策効果の剥落に伴って減少が続いているほか、足元で新型コロナの1日の新規感染者数が新型コロナ流行以来最多となるなど感染拡大に拍車が掛かっており、一部の州では再び経済活動を制限する動きがみられていることなどが影響したとみられる。実際に外食・宿泊サービス消費は前月比で20年4月以来のマイナスに転じた。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに6カ月ぶりに前月から伸びが鈍化した。両指数ともにFRBの物価目標(2%)を大幅に下回っており、9月に発表されたFRBの物価見通しでも23年末に漸く2%に到達するとの見方が示されるなど、物価目標の達成には相当時間を要するとみられる。

3.所得動向:賃金、自営業者所得は増加も、移転所得の減少から前月比で減少

10月の賃金・給与は前月比+0.7%(前月:+0.9%)となったほか、自営業者所得は+1.2%(前月:+5.0%)と前月から伸びは鈍化したものの、堅調な伸びを維持した。とくに自営業者所得は、非農業部門が前月比年率▲527億ドル減少したものの、連邦政府による新型コロナに関連した農家向けの所得補償プログラムで+852億ドル押上げられた結果、非農業部門の所得が+751億ドル増加して全体を押し上げた。

一方、政府からの移転所得は前月比年率▲2,526億ドルと前月の▲329億ドルからマイナス幅が拡大して個人所得全体を押し下げた。とくに、失業保険の追加給付の代替手段として災害対策予算を活用した所得補償策が財源の枯渇により▲2,097億ドル減少したことが大きい。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、10月の名目が▲0.8%(前月:+0.7%)、価格変動の影響を除いた実質ベースが▲0.8%(前月:+0.6%)となり、名目、実質ともに前月からマイナスに転じた(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:全般的に伸びが鈍化

10月の名目個人消費(前月比)は、財消費が横這い(前月:+1.3%)、サービス消費が+0.7%(前月:+1.2%)といずれも前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、耐久財が+0.7%(前月:+1.0%)と小幅な伸び鈍化に留まった一方、非耐久財が▲0.3%(前月:+1.5%)とマイナスに転じた。

耐久財では、家具・家電が+0.5%(前月:+0.4%)と前月から小幅に伸びが加速したほか、娯楽財・スポーツカーが+1.5%(前月:▲1.2%)とプラスに転じた。一方、自動車・自動車部品が+0.3%(前月:+3.5%)と前月から大幅に伸びが鈍化して全体の足を引っ張った。

非耐久財では、食料・飲料が+0.1%(前月:+0.1%)と前月並みの伸びを維持した一方、衣料・靴が▲2.0%(前月:+7.3%)、ガソリン・エネルギーが▲2.1%(前月:+4.7%)とマイナスに転じ全体を押し下げた。

サービス消費は住宅・公共料金が+0.6%(前月+0.1%)、輸送サービスが+2.3%(前月:+1.2%)と伸びが加速した一方、娯楽サービスが+2.9%(前月:+6.9%)、医療サービスが+0.6%(前月:+2.2%)と伸びが鈍化したほか、外食・宿泊が▲0.4%(前月:+1.9%)とマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前月比では5カ月連続で物価を押し上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.1%(前月:+0.7%)と伸びは鈍化したものの、5ヵ月連続プラスとなった(図表6)。また、食料品価格指数は+0.1%(前月:▲0.3%)とこちらは4ヵ月ぶりにプラスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲9.6%(前月:▲8.1%)と前月からマイナス幅が拡大したほか、8ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。一方、食料品価格指数は+3.9%(前月:+3.9%)とこちらは前月並みの伸びを維持し、17年7月以来40ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年11月26日「経済・金融フラッシュ」)

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